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プリンとキス  作者: 雲母あお


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25/43

25.一発芸披露!いざっ!かのこさん見ていてください!やり遂げてみせます!!

俺は、感心してしまった。


みんなすごいな。

一発芸は、幅広い!


モノマネをする人、手品を披露する人、占いをする人・・・


なんなんだ。バリエーションが豊富すぎる!

俺を含めて11人しかいないんだぞ。

こんな芸達者な同期って、世の中どうなっているんだ!?


みんな堂々と披露している。


何か言われるとか、受け入れられないなんて、全然考えないのだろうか。

俺は、もう、俺なんか見てももらえないし、うけることもないし、今日俺が準備して来たものも、受け取ってくれない、もしくは、受け取っても捨てられる可能性だってある。そんなに知らないやつからもらったら気持ち悪いと思われるかな。


左側においたトートバッグの持ち手を握る手に、力が入る。

どうしよう。

心臓がドクドクして、息が苦しくなってきた。


座った場所が1番奥の俺は、どうやらトリになりそうだ。

最初にさっとやって終わらせたかった。

隠れようとした魂胆が裏目にでた。


最後は、嫌だ。

締めで、滑ったら、この雰囲気をぶち壊してしまいそうだ。



『大丈夫。』

ふと、かのこさんの声が聞こえた気がした。


そうだ。

あのベンチで、俺はかのこさんに『頑張る』と約束した。

かのこさんは、俺の話を最後まで聞いて、一生懸命考えてくれたんだ。


俺のために……



ふと、横をみると、

相変わらず、倉島は、船を漕ぎながらも、なんかつまんで食べている。

なんて器用な。


一発芸が終わるたびに、「よっ!」とかいって、拍手しているし。


そして、トリから2番目に位置する倉島の名前が呼ばれた。


すると、スックと立ち上がり、


「倉島です。誕生日は、6月です。21歳です。野球サークルに所属し、内野をまもっています。それでは、俺は、だれの真似をしているでしょうか?」


そういうと、バッターボックスに立つ、あるプロ野球選手の真似を始めた。


「誰だ?あのポーズ。テレビで見たような。」

「えっと、名前が出てこない。あれだよ、あの人!!えーっと。」

「野球好きなんだね!」

と、女子も倉島の大げさにバットを振る様子を見て、楽しんでいるようだ。


倉島、なかなかやるな。


このバッティングフォームは、あの人に他ならない。


思わず、

「その仕切りにやってる、本人に謝れというくらいの大げさなそのポーズは、○○選手だろ。」


俺の声が耳に入った途端、目を丸くし、それからとても嬉しそうな顔をして、


「おおおー正解が出たぞ!!」

といって、俺に抱きついてきた。


「こ、こら、やめろ倉島。」

引き剥がそうとすると、

さらにぎゅっと抱きついてきて、

「さすがは相棒!!大好きだぜ、おかん!!俺は嬉しいっ!!」

目に涙を浮かべて喜んでいる。

「倉島、離れろ。」

と、もがいていると、俺の肩に両手をおき、少し離れて俺を見た。


「ありがとう!嬉しいよ。俺、○○選手がこの世で1番好きなんだ!」

「そ、そうか。俺もファンだ。」

と、思わず本音をいうと、再び目を丸くして、いつものようににかっと笑うのだった。


それから、ゆっくりと俺から離れると、

「みんな。俺の好きな○○選手でした。見てくれてありがとう!それでは、最後に戸ノ岡!拍手ー!」

軽く手を叩きながら、俺を紹介し、ゆっくりと隣に座ると、

「頑張れよ!」

そういって、優しく笑うのだった。


いや、なんか、お膳立てされて、逆に戸惑っていると、


「大丈夫。俺がついてる。」


と、にかっと笑って、俺をゆっくり立たせるのであった。


俺が立ち上がると、なぜかシーンと静まり返ってしまった。

なんだ。どうしよう。


でも、俺は一発芸をやり遂げて、かのこさんのおかげで一発芸をやり遂げることができましたって伝えたい。


よし!


「戸ノ岡一馬です。茨城からきました。一発芸になるか分かりませんが、俺が得意なもので勘弁してください。」

そう言い終えると、トートバッグを手に持ち、ゼミ生一人一人のために昨日作った、手作りのお菓子を、『よろしく』と、挨拶しながら配った。


男がお菓子かよ!って、笑われてもいい。

引越しの挨拶かよ!

と、自分で突っ込みながら、挨拶を続けた。


かのこさんが、『よくやったね』って言ってくれるなら、それでいい!!


全員に渡し終えると、自分の席に戻り、

「お菓子作りが得意です。以上です。ありがとうございました。」


頭を下げて、座った。


ほっ、とりあえず全員受け取ってくれた。

かのこさん!俺、やり遂げましたよ!


次に絵画教室で会うのが、楽しみだ。

もうすぐ、飲み会も終わりの時間だ。

頼んでいた烏龍茶で、緊張して乾いた喉を潤す。


すると、

「これ、戸ノ岡が本当に作ったのか?」

ゼミ長が驚いたように言った。

「ああ。俺が昨日作った。みんなに渡そうと思って。」

「戸ノ岡くん、包装も自分でやったの?」

「うん。そうだけど。」

なんか変だったか?

女子には、可愛い感じのリボンをつけたけど、それが気持ち悪かったのだろうか。

内心焦る。


すると、

「すごい!!可愛い!センスいい!」

と、嬉しそうだ。

よかった。気に入ってくれたようだ。



「中身は何?」

と、聞いてくるやつもいて、それに答えようと思ったら、

「ここお店の中だから、開けられないから、あとでのお楽しみにするので、言わないでー!」という声もして。


みんなが俺と、俺が渡した包みを交互に見ている。

その表情は、嫌がっている顔ではなく、なんだか驚きと、尊敬する眼差しに似ていて、正直面食らう。


なんだ。

思っていた反応と全然違う。

受け取ってくれた。

みんな嬉しそうな顔をしてくれている。


信じられない。

でも、なんだか、とても嬉しい気持ちになった。

なんだか、今すぐ、かのこさんに伝えたい気持ちになった。


来週まで会えないのが残念だ。


「どうやって作るの?どれくらい時間がかかった?」

「やだー!男子に負けてる!作り方教えて!」

なんだか俺の周りに人だかりが。。。


「えっと、いや、あの。。。」


こんなことは初めてで、おどおどしてしまう。


「私も!今度彼氏に手作りお菓子を渡したいと思ってて、作り方知りたいです!」

ゼミの女子の一人が、そういうと、

「えーお前、彼氏いたのかよ。」

と、まさかお前に彼氏がいたなんて、のようなニュアンスに聞こえる言葉を投げかけたやつがいて、

「どういう意味よ!失礼ね!私には、高校の時から付き合っている、とってもかっこいい優しい彼がいるんです!」

と、言い合いが始まってしまった。


どうしよう。

内心ビビる。


「まさか、美希のこと狙ってたとか?」

と、ほかの女子にからかわれ、

「まさか!」

と、そいつが咄嗟に答えたら、

「本当に失礼ね!」

とか言いつつ、顔は笑顔だ。まあ本気の喧嘩ではなく、冗談半分と言った感じで、はたから見てるとそんな言い合いも楽しそうに見える。


しかし、どんどん話がずれていっているような気がしないでもないが、俺が立ち上がったときとは一変して、和気藹々とした雰囲気に包まれていた。



そんな、同じゼミのやつらを見ていたら、ふと、あの日のことが目に浮かんだ。


「茨城のてえ?」と、声をかけてしまった、あの日……


かのこさんという小石が、俺の人生を少し震わせ、優しい波紋をつくったんだ。

少しずつ、少しずつ、学生生活も、俺の生活も、俺自身も、変わっていく。


一つの出会いが、こんなに俺の世界を変えるなんて・・・



かのこさんに出会ってから

絵画教室に通い始めてから


新聞紙みたいに白黒だった俺の世界に

少しずつ、色がついていく・・・





お読みいただきありがとうございました!

次回は、6月14日投稿予定です。

お楽しみに!

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