24. そうだったのか
だんだん時間がすぎ、一発芸の時間が近づいてきた。
ドキドキしながらも、近くにある空いた皿やジョッキなどを店員さんに渡す。
みんな気持ちよさそうに酔って、話に花が開いていてにぎやかだ。
隣で倉島は眠そうだ。
「おい。倉島、寝てるのか?」
声をかけると、
「おかん、俺は大丈夫だ。まだ食べられる。」
むにゃむにゃ言いながら、少し船を漕いでいる。
困ったやつだ。
俺は、親に似たのかあまり酔いが回らないタイプらしい。そんなに飲んだわけではないが、飲み放題なので、いくつか注文し、いや、してもらった。倉島に。
俺も困ったやつだな。
心の中で、いつものネガティブ俺が、何か言っているが、俺は今日頑張ると決めたのだ。
トートバッグの持ち手をぎゅっと握りしめる。
大丈夫。
かのこさんのあの絵をみて勇気をもらったんだ。
大丈夫。
俺は、この一発芸をやり遂げて、一生懸命考えてくれたかのこさんに、お礼をいうんだ。
ぎゅっと拳を握る。
よくみると、ちょっと手が震えてるけど、みなかったことにしよう。うん。大丈夫。
何度も自分に言い聞かせる。
すると、ゼミ長が立ち上がり
「それでは、時間もだいぶすぎて、いい感じに打ち解けたところで、神林ゼミ名物!はじめの打ち上げで、「一発芸!」を披露する伝統を受け継ぎ、只今より、神林ゼミ一発芸大会を開催いたします!」
と、宣言したのだ。
周りのみんなは、(倉島は、まだ船漕いでるけど)わあーと歓声をあげ拍手をしている。
すっと、幹事のところに店員さんがきて、何か耳打ちをしているのが目に入った。
今の歓声と拍手は、いささか周りの人の迷惑になるレベルの音量だったようだ。
そして、俺は。。。
そうだったのか。。。
それを知っていたら、神林ゼミを選ばなかったぜ。。。
心の中で、プチ後悔をしながら、ゼミ長の開始の合図を、沈黙のまま聞いていたのであった。




