64.お姉ちゃんの話
ショータの視点
家に帰ると監督(祖父)は早く体を休めたいと僕を解放してくれた。
祖母はずっと話かけてきたけど、お姉ちゃんが睨みつけて止めた。
お母さんは病院で会議、遅くなる。
いつもの事だ。・・・気にしない。
夜、お姉ちゃんが部屋に来た。
珍しくお酒を飲んでいない、『健康なんて知るか!』と言って
寝酒を欠かした事がないのに。
お姉ちゃんも話があるらしいけど、僕の相談を先に聞いてもらう。
美月の事を話したら写真を見せろ、合わせろと大喜びだった。
だからまだそんな関係じゃないって。
そんな事ではなくて、これからどうしたら良いか相談しているんだ。
お姉ちゃん、笑いが止まらないみたい。
「まず、ちゃんと好きです。お付き合いして下さい。って言うのが始まりね。」
「言いたいけど、自信がない。」
「お姉ちゃんと練習しよう、さあ言ってみな。それ言え、それそれ」
お姉ちゃんノリノリだけどそうじゃない。
「美月なら吃音出ても許してくれるとは思う。
悩んでるのはそっちじゃない。」
お姉ちゃんが?ってなって聞いてくれる。
「本当に僕で良いのかって、僕と付き合って、この子幸せなのかって、その・・」
なんかいっぱいある、ずっと考えているけど言葉で上手く説明できない。
「僕は美月が好き、美月がいてくれるだけで幸せ、それは自信がある。
でも何故、何が幸せ?って言われても説明できない。」
お姉ちゃんが僕をじっと見つめる。
「泣きたくなる、僕って何て情けないんだろう、何もできないじゃないかって。」
お姉ちゃんが立ち上がり、僕の肩に手を置いてきた。
「ショータは昔から結果を急ぐね。」
少し考えてからお姉ちゃんは続けた。
「嫌われるぞ、そんなだと。
いい、まだ子供なんだから。まだ時間あるんだから。
ゆっくり考えれば良いんだよ。
子供の頃お姉ちゃんとやったろ?ゆーーくり、ゆーーくりって。」
お姉ちゃんが吃音矯正の時やってくれたくれた、遊んでいるみたいで
楽しかった。
「話を聞いてると良さそうな子だから、きっと理解してくれる。
ショータはドンクサだけど、中身は特上だぞ。一緒にいるだけで伝わるさ。」
ドンクサは酷いと思う。
「それとね。もう少し自信もて。ショータが相手の事一生懸命思っていたら
相手も幸せな気持ちになれるから。今ショータが幸せなように
相手も幸せだ、ショータは良い奴だ、これは絶対!」
「あとね、エッチな事するときは十分注意しなさいよ。
命は重たいんだよ、相手は傷つくよ。」
お姉ちゃん、凄い事言うね。
僕が真っ赤になって話せなくなっていると、妄想でエッチな事を
考えてしまうのは、正常だから気にしなくて良いと慰めてくれた。
相手の嫌がる事は絶対ダメと念押しされたけど。
そんな事するはずない。
エッチなこと考えてるのバレて恥ずかしい。
その後、美月の家庭が大変な事を知っているだけ話した。
「ババアには内緒にしておいた方が良い。
でもショータが態度に出さないはずないからジジイにバレてるか?
いやジジイはババアには言わないかな?」
お姉ちゃんが考えこんでいる。
「ショータが相手を思う気持ちが試されるな。
好きなんだろ?思い続けるしかないよ。」
「お姉ちゃんに相談して良かった。」
「最後確認、一番大切と思うんだね。」
うん。美月が居てくれたら何もいらない、
美月の為なら何でもできる。
「それじゃ、私の話をするね。」
忘れていたお姉ちゃんからも話があるんだった。
「結婚して、この家を出て行こうと思うの。」
変な声が出た。