192 葵、旅立つ
葵です。
私は、仲良しの板谷君、恩師の山野先生と久々に部室を訪れます。
今日は夏の合宿に向けてのミーティングがある日だったので、部室には全員部員がそろってました。
「みんな、報告するね。
おかげ様で、大学の推薦入学許可もらったよ。
早めに引退して迷惑かけちゃったけど、これで大学生になれる!
それで、夏休みになったら、予定どおり、すぐタイに手術に行ける!
みんなが応援してくれてたから、頑張れた。
ありがとう。」
「うぉー、葵先輩やりましたね!」
「もう大学決まったんですか?すげー!」
「これで、手術ですね。いい女になってくださいよ!」
「板谷先輩、猛勉強して、一緒の大学に合格しなきゃ!」
部室の中は祝福の嵐でした。
うーん、うれしいっ。
みんなの部活を邪魔するつもりはなかったんだけど、仲間に報告をしたかったんだ。
先生が追加説明してくれます。
「葵はこれで、夏休みになると性転換手術、すなわち性別適合手術でタイに向かう。
8月下旬には日本に戻ってくるが、そのあともリハビリとかあるから、しばらくは演劇部には顔を出せないだろう。その辺はわかってやってくれ。
まあ、9月の文化祭のあたりには日常生活ができるようになってるだろうから、その後はいろいろ後輩指導もできるかもしれない。
まあ、まずは手術の成功を祈ってやってくれ。
世界で最高峰の技術をもつ病院だそうだから、心配はないだろうけど、それでも本人は心配になるもんだ。」
後輩からは、いろんな言葉が送られます。
「先輩、ここからタイに向けて、みんなで手術が上手くいくように、いつも祈ってますよ。」
「あそこの改造手術ですよね。大変だ。きれいに仕上がるように念を送ります。」
「女になるけど、ここは男の気合で乗り切ってください。」
「帰ってきたら、完全に女の身体ですね。何か信じられません。でも、頑張ってください。」
そして、可愛い新人姫の太田さんが私に抱き着いてきました。
「先輩、ついに女性になるんですね。すごい、羨ましいです。いろいろ教えてください!
私も2年後に同じ道を歩みます!」
「うん、女の子になる道、ちゃんと教えるよ。楽しみに待っててね。」
「おおっ、新旧姫の抱擁だ。何か男子校なのに百合っぽいぞ!なんか美しい!
これは写真に撮らないわけにはいかない!」
スマホのシャッターが次々となります。
何と、山野先生までスマホのカメラを向けてました。
うん、可愛い和音ちゃんとのツーショット、私も欲しい!
あとで、送ってもらおう!
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そして、夏休みになり7月の下旬、私と付き添いの母、小出智花は成田空港に立っています。
そう、性別適合手術のためにタイに向けてこれから出発するのです。
18才なので、手術を受けられるのですが、その代わり親の付きそいが必要なのです。
空港には父親の小出健人と姉小出柚、山野先生、そして、いつもの仲良しメンバーが送りに来てくれてます。
まずは近所の幼馴染みの柏原由奈とその彼氏で生徒会長の菅原直人の二人が声をかけてくれました。
「ついに、女の子になっちゃうんだね。
帰ってきたら、いっしょに温泉に入れるね。
楽しみにしてる。葵のナイスバディ、たっぷり見てあげるから。」
「小出、入学の時のことを思い出すと不思議な気分だよ。
全くの別人になっちまったからな。
入学当時も可愛かったけど、やっぱり男子だった。いまは全く女性にしか見えない。
でも、男子の部分残ってるんだもんな。タイで完璧にしてもらってこいよ。」
「ありがとう。二人も喧嘩しないで、仲良くね。
それから、由奈。私も由奈の裸をみるの楽しみにしてる。」
「ええっ?私はいいよ。私は見せない。」
「ははは、由奈、それは公平じゃないぞ。」
次に、女子校の旧王子新王子二人が近くに来てくれました。二人の彼氏も後ろについてきます。
藤原祐希、新川梨亜、そして、尾崎皆、友利豊です。
祐希が言います。
「タイの手術が終わったら、東京では私の両親が事後フォローするから。
性適合手術はその後の経過観察とフォローが大事みたいよ。
表面的にキレイに出来上がればいいってことじゃないからね。
ウチの両親に色々任せてね。」
「うん、ありがとう。手術のあと、女子の身体が定着するかどうかが問題だからね。
頼りにしてます。」
新川さんも涙ウルウルって感じで声をかけてくれます。
「葵先輩!手術がんばってください!
女の子に体になって、安定したら、先輩の家に泊まりにいきますから、よろしくお願いします。
先輩ともっと仲良くなりたいんです。」
この子はちょっと百合っぽい感じがするんだよね。でもそこが可愛かったりして。
「新川さん、身体が完全に女性になれば、晴れて女性同士だね。気兼ねなく一緒に遊ぼうね。」
「はい、よろしくお願いします。」
尾崎君と友利君も声をかけてくれます。
「演劇部のフォローは任せとけ。まあ、10月以降はそっちに任せるつもりだ。」
「先輩、大手術ですけど、乗り切ってください。より女っぽい姿になるのを楽しみにしてます。」
「二人ともありがとう!いろいろ後をよろしくね。」
そして、山野先生が私に近づいてきて、小さな声で囁きます。
「これから行く病院は私が手術した病院だし、手術担当医も私と一緒。
名医だから心配しないでいいからね。
手術の後の経過で、心配ごとが生じたら藤原さんの両親に相談するのが一番だけど、私も相談に乗れるからね。」
「先生、ありがとうございます。その時はよろしくです。」
先生が元男性って知っている生徒は私以外にはいないはず。
先生、すごいなー。
最後に、板谷瞬君が私のところに来てくれました。
みんな気を使って、少し離れてくれます。
「小出、ついに女の身体だな。いい女になって帰ってこいよ。
俺も受験勉強頑張る!一緒の大学に入って、ずーっと一緒にいよう!」
「うん、約束だよ。勉強しっかりやってね。
大学4年間一緒に過ごすのが私の夢なんだ。」
「俺の夢でもある。うん、受験勉強頑張るよ!」
私たちはしっかり握手しました。
ホントは抱き合いたい気持ちもあったんだけど、私たちは恋人ではありません。
今は親友なんです。
恋人になるには、私が性転換手術を成功させて、板谷君が大学合格しないと・・・
「じゃあ!みんな行ってくるね!!」私は、搭乗口にむかって、母と歩き始めました。




