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175 ライブ前の憂鬱

森山優人です。


今は5月の中旬。

もうすぐ、バンドのライブが近づいているというのに、気持ちが乱れていて、

ドラムのプレイに切れがなくなっている。


「おい、森山。何か、ノリが悪いぞ。6月にライブだというのに、何か変だ。

何か、悩みでもあるのか?」


スタジオでの練習中、俺は、ギター担当の深山陸(みやまりく)に指摘された。


「うっ、ワリい。そのとおりだ・・・悩みがある。

ちょっとここでは言いにくい・・・」


俺は、他のメンバーに聞こえないように深山にささやく。

あまり、俺の悩みは大ごとにしたくない。

深山なら、中学時代の親友だから、悩みは話せる。


バンド練習後、帰り道で俺と深山は二人きりになる。深山は家が近い。


「あのさ、不調の原因なんだけど・・・」


「どうせ、好きな女ができたんだろ?それも、めちゃめちゃ惚れてるんじゃないか?」


「おお、よくわかるな!

深山には嘘言えないな。

その通りだ。入学したばかりで、間もないのに、変だろ?

一目惚れってやつだ。」


「例によって、全然うまくしゃべれないんだろ?」


「そのとおりだ。むこうは変なヤツと思ってると思う。

それにしても、・・・

わりいな。恋愛なんかで悩んでる時期じゃないよな?

でも、何かアドバイスないか?」


「まあ、むしゃくしゃするなら、とりあえず、ライブ直前になる前に告白してみたらどうだ。

悶々とした気持ちがスッキリするぞ。」


「おいおい、相手は俺のことよく知らないんだぞ。

入学して、1カ月ちょっとだ。

告白すること自体、無理がある。

それに、振られたら、ライブの時、おかしくなりそうだ。」


「そこは、言い方だよ。

好きになったということは伝える。

でも、交際については、時間をおいて、また申し込むって相手に説明すればいいんじゃないか?

例えば、夏休み前、もしくは夏休み後に交際申し込むから、それまで、俺という人間を見てくれとか言うのはどうだ?」


「何だ、そりゃ?

うーん、そっか、

好きっていう事だけを伝えるのはいいかもしれない。

よく考えてみれば、俺もあいつのこと知らないんだ。

うん、わかった。

言い方を考えてみる。

不器用な俺なりの言い方を考えるよ。」


「そうだな。森山が自分で考えて、自分のことばで伝えるのがいいだろう。

焦りは禁物だけど、とりあえず、好きって言ってすっきりしてこい。」


「おお。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



藤田風歌です。


今朝、通学中、驚きがありました。

私と話したがらない森山君が、朝倉君と和音に気づかれないように、私にメモを渡したんです。

そこにはスマホの電話番号が書かれていて、夜電話をくださいと添え書きがしてありました。

私は、ドキドキしてしまいました。

これって、もしかして、森山君が私に告白するのかな?

いや、いくら何でも、早すぎるでしょ。

だって、入学して1カ月ちょっとだし、ろくに話をしていないし。

確かに、森山君のキャラクターには興味はあるし、仲良くなりたいとは思ってたけど。

どうしよう?

SNSで連絡とるのはなれてるけど、よく知らない男の子に電話するなんて、ちょっとやだ。

でも、電話しないのも悪いしなぁ。



どうしよ?どうしよ?

と悩んでるうちに夜の9時になってしまいます。

もう、仕方ない、電話してあげよう!

電話しないで明日の朝会うのは嫌だ。

そういう結論になった私はメモを見ながら

スマホをタップしました。申し訳ないけど非通知で電話します。


「はい、森山です。」


わ、すぐに出た。やっぱり待ってたんだ!


「あの、藤田です。あの、何か用?」


「あ、ごめんなさい。無理なことお願いしちゃって。

電車の中では言えないことだったからね。

でも、電話をくれてありがとう!

それだけですごく嬉しい!

これで今日眠れるよ。」


「あ、電話するくらいなら問題ないよ。

それより、用件聞きたい!」


「あ、ごめん!

そうだよね!

単刀直入に言う。

俺、藤田さんが好きだ!」


「ええ!ちょっと・・・」


「あ、ちょっと待って。不安にならないで!

交際は申し込まないし、告白に対する返事もいらない。安心してくれ!

気持ちを伝えたかっただけだ。

変な話だけどひと目ぼれって感じかな。

藤田さんは俺のことよく知らないだろうし、俺も藤田さんのこと知らない。

だから、告白するのも変なんだけどね。でも・・・どうしても伝えたくって。

だから、・・・今まで通りにしてくれればいいんだ。

それ以上のことは・・・今は望まない。

ごめん。今日はありがとう!」


「え?そう・・・なんだ。

今まで通りで・・・いいんだ。

そ、そうなの?

うん。・・・わかった。」


「じゃ、また明日!」


「うん、明日。」


電話を切ったあと、私はすごく煮え切らない気持ちになります。

いったい何?

ええ〜!告白されたけど、まさかの交際申し込みなしだ!


もし、付き合ってくれって言われたら、まだお互いによく知らないからって、一度はやんわり断わろうかなって思ってたけど、向こうからその話を言われるなんて!


あー、中途半端な気分!

男だったら、ちゃんと交際申し込んで、振られなさいよ!

何?答えはいらないって!


でも、でも、私のこと好きなんだよね?

これからどうしよう?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


太田和音です。


今朝はいつも通り、私と風歌と良太、森山君の4人で電車に乗ってます。

今日はちょっと変です。

風歌が気もそぞろって感じで、ぼーっとしている。

逆にいつもは風歌がいると借りてきた猫のようにおとなしい森山君が元気に喋ってる。


「藤田さん、ライブのチケット渡すね!

女子高の友達も連れて来れそうだったら誘ってみて。チケットはまだあるから。」

おお、風歌と普通にしやべってる。


「そ、そうだね。

あの、女の子のバンドなんて出るかな?

男子苦手な友達いるから・・・」


「そういえば、今回は女の子バンドでるから安心して。女子高のバンドも出るよ!」


「そう?

それなら仲のいい子、誘ってみる・・・ね。」


風歌がうつむきながら恥ずかしそうに答えてる。どうしちゃったの?


「そうだ、小泉と伊藤も誘おう!

俺の爆走ドラム見せなきゃ!」


森山君、絶好調!もしかして風歌のこと好きで、変におとなしくしてるのかなって思ってたけど違うのかな?




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