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174 もう一人の仲間

朝倉良太です。


クラスで、俺と和音が仲良くなった生徒は演劇部の二人以外にもう一人いた。


軽音楽部の森山優人(もりやまゆうと)だ。

整った顔をしているが、チャラい感じだ。髪を伸ばし、カラーリングもしている。

いかにもバンドマンというルックスである。


しかし、意外にいいヤツだ。

森山は、朝、電車で一緒になるんだが、お年寄りを見つけると、手を引いて、席を探してあげたりする。

「すみません、すみません、ちょっと、そこを開けてください!こちらの方を座らせてあげてください。」なんて、言ってお年寄りを座らせてしまう。


正義感でもある。ずるい事は許さない。

「おれ、おじいちゃん子、おばあちゃん子なんだ。

おじいちゃんがまがったことは許さないっていう、昔気質の男で、その教育を受けたんだ。

また、おばあちゃんが大好きだから、おばあちゃんと同じ年ごろのお年寄りをみると、すぐ助けたくなる。」


でも、見た目はチャラい。

学校では、あることないことぺらぺらしゃべって、場を盛り上げるムードメーカーだ。

不思議なヤツ。


そんな森山は朝、俺と和音と藤田が3人で電車に乗ってくるところに合流してくる。

バンドマンだが、ドラマーだから、ギターは背負ってない。

スティックを入れた袋をもってるくらいだ。


森山は意外と照れ屋なのか、藤田とはそれほど話さない。藤田がいると借りて来た猫のようだ。

藤田は、誰とでも仲良くなれる元気娘だから、森山のバンドのことに興味津々で、いろいろ質問をするのだが、ぼそぼそっとしか答えない。

お年寄りを見つけて、親切にしてあげる積極性がある男なのに、変である。

そういえば、藤田がいる前でもお年寄りに親切にしてて、藤田が感心して、褒めても、

「ああ」とか「うん」としか言わない。

藤田が、「私、嫌われてるのかしら?うるさいからかな?」なんて悩む始末だ。


俺は和音と二人きりの時に、和音の意見を求めた。


「和音、森山は何で藤田の前だと、大人しいというかしゃべらないんだ?

あんなにしゃべるやつなのに。

小泉や伊藤のように女性恐怖症なのかな?」


「うーん、どうだろう?

もしかしたら、もしかするかも。」


「え、もしかするって、何だ?」


「うーん、やっぱ自信ないな。もう少し様子をみないと。」


「そうか?うーん、俺にはわからん。」


全然、彼の心がわからなかった俺だが、ある日動きがあった。


朝の電車の中で、森山が俺と和音に頼み事をしてきた。


「あのさ、6月のこの日、空いてるか?部活ある?」


「その日は定期公演終わった後の日曜だね。部活ないよ。」「うん、ないね。」


「俺が中学から組んでるバンドのライブがあるライブハウスであるんだ。

チケットを友達に買ってもらってるんだけど、朝倉と太田にもお願いしたい!

一枚1000円だ。買って、見に来てくれないかな?」


「1000円か?その値段なら観に行ってもいいな。和音。行くか?」


「そうだね。森山君のドラムたたいているところ見たいよ。」


「おっ、助かる!ありがとう!!」


その時だ。藤田が、恐る恐る声を出した。


「あのー、まだチケットある?」


「あ、あるけど・・・」


「私も見たい!知り合いのライブって見たことないんだ。私も、朝倉君、和音と一緒に見たい!」


「あ、ありがと・・・」


森山は小さい声で礼を言ったが、それ以上のことは話さなかった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


藤田風歌です。

高校に入って、女子だらけの生活になってしまって、男の子と話す機会ないかな?

なんて思ってたけど、そんなことありませんでした。

毎朝、和音といっしょに登校してるんですが、途中から、朝倉君が合流してくるし、

和音と朝倉君の同級生の森山君が合流してくるので、毎朝、男の子と話しています。


で、気になるのは森山君。


森山君って、見た目はちょっと派手目。

端正な顔なんだけど、

ロック・バンドやってて、髪の毛染めててちょっとワイルド。

最初はちょっと怖いかなって思たんだけど、実は素敵な性格してるの。

ふらふらしながら電車に乗ってくるおばあさんを見つけるやいなや、すぐに駆け寄って、

手を引いて、席をみつけて座らせてあげるとこ見ちゃった。

おばあさん、森山君の容姿にちょっと驚いてたけど、親切にされて、

「すみません。若い人にこんなに親切にされたの初めてです。」とすごく喜んでた。


森山君は、

「当たり前のことです。気にしないでください。」ってニカって笑って、戻ってきました。


私、感動しちゃった。

いい人!って思っちゃった。


でも・・・なぜか、私とはあまり話してくれないんだ。

「うん。」とか「そうだね。」程度。

もっと、いっぱいおしゃべりしたいのに。


そしたら、森山君が、自分がやっているバンドのライブのチケットを朝倉君と和音に買ってほしいと頼んでいる場面に遭遇しちゃった。


私は、勇気を出して言いました。


「私も見たい!知り合いのライブって見たことないんだ。私も、朝倉君、和音と一緒に見たい!」


実は姉が大学でバンドをやってるんだけど観に行ったことがありません。

生のライブって意外と観てない!

あ、文化祭のライブは別だけど。


バンドでドラムを思い切りたたいている姿を見たら、森山君の新たな魅力に出会えるはず!

そして、ライブを観に行けば、森山君と仲良くなれるはず!って思いました。

森山君のこと、もっと知りたい!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


森山優人です。

高校1年。バンド少年です。


ロック命!って感じで、ドラムを叩いているんだけど、最近、胸がドキドキしっぱなしで、

困っている。


それは、毎朝、通学時に一緒に電車に乗る女の子が原因だ。


俺は、クラスメイトの演劇部の連中と仲がいい。


俺、ロックも好きだけど、演劇も好きなんだ。

舞台で、緊張感の中、観客を酔わせるパフォーマンスをするっていう点で、ミュージシャンも

俳優も一緒だって考えている。

だから、クラスにいる演劇部の4人、朝倉と太田、小泉、伊藤とはなんか共通するものを感じて、

仲が良くなった。太田は演劇部の女役専門ってことで、女子の制服で通学している。すげー!

しかも本物の女の子に見えるし、朝倉とはカップルに見えてしまう。二人は否定してるけど、この関係は面白い。ずっと観察していきたい。


さて、4人の仲のいいクラスメイトの内、朝倉と太田とは朝、電車で一緒になる。

まあ、気心の知れた二人だから、話が弾むはずなんだが、問題が生じている。

もう一人一緒にいるからである。


もう一人というのは藤田風歌という女子だ。

藤田さんは朝倉と太田と同じ中学出身で、女子校の演劇部にいる子らしい。

何と、容姿と性格が俺の好みにどストライクなんだ。

こんなに好みの女の子って初めてかもしれない。

明るくて、活発なところがすごくいい!

誰とでも仲良くできるところは俺と同じだ。


でも、俺は・・・、恋愛対象じゃない女の子の前ではチャラくできてすぐ仲良くなれるんだけど、好きになった女の子の前だと、上手く話せなくなってしまうことがある。

小学校、中学校の時でもそんなことがあった。

ちょっと不思議なんだけど・・・。


中学の時に付き合った女の子いたけど、

その子は最初は好みのタイプじゃなかったから、上手く話せて、そして交際に至ったんだ。

知り合ったときに好みのタイプだと、上手く話せない・・・。


だから、毎朝、困ってしまっている。

学校にいる時みたいに、場を盛り上げる話ができない。


そしたら、藤田さん、俺のバンドのライブを見に来るっていうんだ。


どうしよう?緊張しちゃうよ!

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