168 LGBTがいる男子校
朝倉良太です。
桃花高校入学式の話の続きです。
壇上の校長が口を開いた。
斜め後ろに立つ、美少女としか言いようのない女子高の上級生は黙って立っている。
どんな役目があるんだろう?
「新入生のみなさん、今度はわが校の独自の制度とLGBTすなわち性的少数者への取り組みを説明しましょう。
まずは独自の制度です。
それは、演劇部の女形制度、女役専任制度です。我が校は男子校ですので当然ですが女子がおりません。女性のキャラクターについては男子が演じることになります。
そこで我が校の演劇部では歌舞伎の女形のように、女性役を専門でやる生徒がいます。その生徒は「姫」と呼ばれています。
なお、この女役の生徒は女性らしい身の動きや話し方をマスターするため、学校生活を女子生徒の制服で過ごすことを認められています。ちなみに制服は当校のグループ校である桃枝女子高校の制服です。」
新入生がまたざわつく。
「女装して授業を受ける生徒がいるのか?
漫画みたいだな。
似合えばいいけど似合わなければ悲惨だな。」
「女子生徒に見えるのか?
コントになってないか?
笑われてるんじゃないの?」
新入生が想像する女装とは、やっぱりお笑い芸人の笑いを誘うヘンテコな女装姿の男性だ。
俺は姫制度を事前に知っていたから、戸惑いは半分くらいか?
しかも太田の女子高生姿を見てるし、コントみたいな女装は想像しなかった。
ただし、先輩の姫ってどうなんだろう?
18才近くだろうから、けっこうガタイいいんじゃないか?
ホルモン治療してるとは言っても。
俺は先輩の姫が気になる。
「そして、現在の姫は3年生の小出葵さんです。小出さんは姫であり、LGBT高校生でもあります。
性同一性障害、性別違和ってご存知ですよね。
女性の心を持って生まれて男性なのです。当校では小出さんの立場も支援しています。
皆さん、当校では小出さんに限らずLGBTを支援しています。
性的な差別やいじめ、中傷はなさらないようお願いいたします。
もし、そうした行為が発覚したら処分を検討せざるを得ないのでご注意ください。」
「LGBTの女形か?ややこしいなあ。」
「最近は、この件について世の中うるさいからな。
でも、ウチの高校進んでるな。ゲイのカミングアウトもいいってことだよな?」
「ええっ、おまえゲイなの?」
「違うよ!例えばの話だ。
それにしても校長のそばにいる女子高の先輩、可愛いなあ!
彼氏いるのかな?」
「アイドル級のレベルだな。
当然いるだろうな。もしかしてミス桃花女子かもよ!だから来てるんじゃないか?
うーん、ファンになっちまいそうだ!」
「お、校長が下がって、女子高の先輩が前に出てきたぞ!」
俺のそばにいる新入生、うるさい。
でも女子高の先輩に憧れるのは理解できる。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。
上級生として心からお祝いいたします。
仲良くしてくださいね。」
「うおー、声、可愛い!笑顔も素敵だ!」
「俺、惚れたかも!」「俺も!」
「うん!」「女子校に遊びに行くぞ!!」
確かにきれいな声だ。笑顔で話す姿はアイドルがステージ上で挨拶してるみたいだよ。
この先輩に会うために女子高に遊びに行くヤツけっこういるかも!
しかし、先輩が続けた言葉は衝撃的なものだった。
「皆さん、何で女子高の上級生がここにいるんだろう?って思ってません?
理由を説明しますね。
私は3年生です。女子高の生徒ではなく、当校の3年生なんです。
女形、すなわち姫を担当している小出葵と言います。
生まれた時の性別は皆さんと同じ男性です。」
その瞬間、新入生から、さまざまな声が漏れる。
「嘘だ〜!」
「まさか!」
「冗談だろ?」
「信じられない!」
「一目惚れの後、すぐ失恋だ!」
「すげ〜!」
「男だとしたら、きれい過ぎる!」
「男ってわかっても惚れちゃうよ!」
俺も驚いた。とても男子とは思えない。
たぶん、女子の中にはいっても相当な美少女だ。
確か、ホルモン治療を受けているはずだよな。
太田はまだ始めたばかりだけど、小出先輩は2年くらい治療しているはずだもんな。
体つきも顔も女性そのものだ。
「そして、今年、私の後継者が入学してきました。ご紹介しますね。
太田和音さんです。
太田さん、私のところまで上がってきてください!
皆さんに挨拶しましょう。」
「えっ?今年の新入生にも姫がいるんだ?」
「小出先輩とちがって、訓練してないだろうから、女性にはまだ見えないんだろうな。」
「そうだよな。小出先輩は特別だよ。
あんな、アイドルみたいな男子、そういないだろ。」
そうかな?太田もなかなかのもんだぞ!ダイヤの原石って感じがするよ。
おっ、太田が出てきた。
「みなさん、初めまして。今年の姫に選ばれた太田和音です。
どんなヤツが来ると思いました?
こんなやつです。
まあまあと思ってくれましたか?
自分では合格点だと思ってますけど・・・。」
そこで、調子のいい新入生の男子が、大きな声を出した!
俺の席からは誰だかわからない。
「女の子に見えるよー!がんばれー!」
その声に新入生たちはどっと沸く。
いきなり声を出していい度胸だなという戸惑いの声プラス賛同する気持ちが声に出たのだろう。
俺の席の近くのおしゃべり二人組も反応した。
「おお、確かに、髪の毛が短いからボーイッシュな女の子に見える。
あれで、髪の毛伸ばして、訓練すれば、小出先輩のようになれる可能性あるぜ。」
「うーん、そうだな。やっぱり素質のある生徒が選ばれているんだ。」
「ありがとうございます。
それにしても、中学生までは男子制服だったので、けっこう恥ずかしいです。
ミニスカートなので、スースーして、大変です。
風が吹くと恐怖です。
でも、女子高生はみんな平気な顔して歩いているんですから、慣れなきゃいけませんね。
ふとしたことで、パンチラしちゃったらごめんなさい。
たぶん、女の子の動きに慣れてないせいです。
その時は笑ってくださいね。
えーっと、これから頑張るのでよろしくお願いします。」
暖かい拍手が起こった。
おしゃべり二人組の片方が言った。
「俺、太田のパンチラならオッケーかも。」
「俺も、見えたらラッキーと思っちゃいそう。」
おお、これで、太田はほぼ受け入れられたな。
変な奴らもいるけど。
後で褒めてやろう。
入学式で掴みはオッケーだって言ってやらないと。




