158 今年も告白
葵です。
クリスマスパーティが始まって、30分。
女子校の福島雅先生が、みんなに声を掛けます。
「みなさん、聴いてください。
これから、女子校演劇部の新しい男役、王子になる人について発表します。
藤原さんの後に王子になる人は、
新川梨亜さんです!
みなさん、応援してあげてください。」
えっ?新川さんなの。意外。確かに、背は祐希ほどじゃないけど高いし、整った顔は凛々しい感じもあるから、男役は向いてるかも。
それに、演技うまいかならなー。
お姫さまっぽいキャラのような気がしてたからノーマークだったけど、うん、王子もいけるかも。
私の周りでも、概ね同じような意見が飛び交ってました。
「新川さん、演技うまいもんねー。役になりきるから、うまく男の子に化けそう。」
「おお、新川さんなら、いいかも。けっこう目が涼し気で、男もいける!」
概ね好評です。
新王子、誕生か!
応援しなきゃ。
あの長い髪の毛切っちゃうのかな?ちょっともったいないけど、しょうがないよね。
あれ?男子の制服着て登校するのかな?ちょっとイメージ湧かないよ。
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友利豊です。
俺と、落合、児玉の1年生3人組は、尾崎先輩をいじっていた。
「尾崎先輩、憧れの藤原先輩の女子制服姿、なかなかいいじゃないですか?
いつ告白するんですか?
もう王子じゃないんだから、今日告白しちゃいましょうよ。」
と俺が言うと、
落合が
「先輩、受験終わってからなんて言ってますけど、受験終わったらすぐ卒業じゃないですか?もし、受験失敗して浪人したらどうするんですか?今の内に告白しましょう。」と尾崎先輩をけしかける。
児玉も
「好きな人がいるっていいなー。告白しちゃいましょうよ。俺なんか、どの子に絞っていいいかわからないし。みんな可愛いし。」
とやんわりと告白を勧める。
「ちょっと、待て、俺には俺の都合があるんだ。そう急がせるな!」
その時でした。福島先生が、大きな声で、みんなに声を掛けます。
女子校の男役の発表です。
えーっ、なになに新川がやるの?
ていうことは、あの長い髪の毛を切っちゃうのか?
もったいない!
あ、新川が前にでてきた。
「あの・・・新川梨亜です。
今、福島先生が発表したとおり、4月から男役つまり通称『王子』をすることになりました。
私で務まるかわかりませんが、一生懸命がんばります。
引き受けたからには本気で取り組みます。
ただし、『王子』といっても、藤原先輩みたいに普段から男装はしません。
男装は演劇部の稽古の時と、本番の時だけにします。
でも、髪の毛は短くします。ずっと長く伸ばしていた髪ですが4月までにショートカットにします。
『王子』ですからね!
あと・・・恋愛についてですが、・・・我慢しません!」
あいつ、急に何だ?
みんながざわついている。あ、俺に視線が集まってきた。
新川、変な事いうなよ。
「恋愛は我慢しません。
それでですが、今日のクリスマスパーティーは好きな人に告白する日だって先輩に聴きました。」
あいつ何言ってるんだよ。
告白したのは、安藤さんだけだぞ。それも、ハプニングって聴いたぞ。
まさか・・・こんなところで・・・まさか・・・
「私、髪の毛を切る前に告白します。女の子っぽいうちにすることにしました。
私の好きな人は、友利豊君です。
会えば、うまく話せなくて、喧嘩しちゃったりするけど、ホントは大好き。
演劇に対する姿勢も尊敬しています。
友利君、私と付き合ってください。」
あいつは、俺の方を向いて、頭を下げた。
おいおい、反則だぞ。
会場は大盛り上がりになった。
「おおーっ、今年もキターーーーーー!告白だー!」
「梨亜すごーい!勇気あるー!がんばってー!」
「どうすんだ?友利!ちゃんと答えないと男じゃないぞ!」
「新川さん、泣かしたら許さないよー。」
うわっ、こりゃ困った。どうしよう?
隣でニヤニヤしている男子が3人。
「あんなキレイな子に好かれて、逃げるのは反則だなー。」と尾崎先輩。
「俺は気づいてたよ。新川さん、友利にかみついていたけど、それは好きの裏返しだって。」
「なんだかんだ言ったって、いいコンビじゃないか?いい返事してやれよ。」
とりあえず、何とかしないと。
俺は、大きな声を出してとりあえず返事をすることにした。
「新川!いきなり言われても心の準備ができていない!
考えさせてくれ!」
そう言って、俺は頭を下げる。
その瞬間、ブーイングが起こる。
「男らしくない!」
「逃げるのか?」
「こんな美少女、ダメなのか?失礼だぞ!」
「付き合ってあげて、友利君!」
「梨亜、ものすごい勇気だしてるんだよ!」
「女の子の一世一代の告白なんだから!」
俺は、今まで何度も女の子の告白を受けてきた。
そして、優しく断るのが常だった。
俺は演劇に集中したかったし、男子同士で仲良くやるのが好きだったし。
こんなストレートな告白は初めてだ。
しかも、こんなに大勢の前で。
もし、彼女に恥を書かせてしまったら、今後の演劇部の活動に差しさわりがあるかも。
別に彼女は嫌いではない。
容姿については好みといっていいんだが、性格というか相性の問題があると思ってた。
というか、つい最近まで俺のこと嫌いと思ってた。
この間、悪いやつらから助けて抱き着かれてからちょっと変な気分になった感じだ。
どうしよう?
んー、考えてもしょうがない。
俺がここでオッケーすれば、演劇部が盛り上がって一体感が生まれるのは間違いない。
覚悟を決めるか?
顔を上げると、手で顔を覆ってしゃがんでしまっている新川がいた。
俺は、新川に近づく。
「おっ、友利どうするんだ?」
「友利君。梨亜のこと考えてあげて!」
と外野の声があったが、俺が梨亜の目の前に来ると、みんな黙ってしまう。
一瞬の静寂。
近づいた俺に気づき、顔を上げる新川。
「よし、付き合おう。新川。その代わり、男女交際より部活優先だからな?甘っちょろい男女交際はしないぞ。」
その瞬間、おおーっという男子の低い声と。きゃーっという女子の声が響き渡る。
立ち上がった新川は、泣き笑いだった。
「ありがとう!私も演劇に命かけてるから、わかるよ!よろしくお願いします。」
「いきなりで焦ったぞ。もうこういうドッキリはやめてくれ。」
俺は、彼女の肩に手を置いて、優しく声をかけた。
「うん。気を付ける。
でも、浮気したら、ただじゃ置かないからね。」
おおっ、いつもの怖い新川の声が出てきた。油断もスキもあったもんじゃない。
ま、いいか。好かれてることは悪い事じゃない。
こういうキツイ言い方も彼女らしい。




