153 面接
太田和音です。
今日は、ついに学校推薦の面接で、桃花高校に来ています。
そして、面接が始まりました。
僕の前には5人の面接官。4人の男性とモデルのようなすらっとした女性が1人。そして・・・
何と、私の憧れの小出葵さんが面接官から少し離れて座っていました。
びっくりです。
真ん中に座る面接官より中学をどのように過ごしてきたかとか聞かれて答えた後、志望動機について聞かれます。
ちょっと動揺しかけましたが、深呼吸をしたあと、用意してきた言いたいことを話し始めます。
「ご存知だと思いますが、僕は、性別違和、性同一性障害です。
この学校は、演劇部の姫として採用されるなら、女子校の制服の着用での通学を認められると聞きました。
僕は、演劇部の姫になりたくて、この学校を希望します。
姫として採用してくれなければ、希望する性別の制服を着ることができる別の学校に入学します。
でも、できれば、桃花高校に入りたいんです。
この学校の自由な校風が好きですし、そこにいらっしゃる小出葵さんにすごく憧れてるんです。」
「君は、中学の時、演劇をやっていないようですね。
この学校の演劇部はこの夏に全国大会で優勝し、今年も全国を狙っています。
初心者としての入部に抵抗はないのですか?」
「全く抵抗はありません。
女性として生きようと思った時から、僕は自分にできないことはないと考えるようになりました。
でも、強気とか、自信家というのとは違います。
未熟であることを認めた上で、目標を目指し、死ぬほど努力すればきっと目標には届くと信じるようにしてるんです。」
「なるほど、じゃあ、演劇部の顧問、山野先生から質問してもらいましょう。」
「こんにちは、演劇部顧問、山野です。」
うわっ、モデルのような女性、演劇部顧問の先生だ。
超美人。
しかも、目が光っていて、尋常じゃない切れ者の感じがする。
「性同一性障害ということならば、これから人生で様々な困難が待ち受けています。
高校生活でも、同様です。
ここは男子校です。
女子の姿をして当校するのは同じ学年ではあなた一人です。
いじめはないように私たち教師が管理はいたしますが、それでも嫌味等を言われる可能性もあります。
そこに加えて、演劇部でもしごかれますよ。覚悟はできていますか?」
「はい。
・・・僕は単に女子高生になるのが目的ではありません。
女子高生として、仲間と一緒に苦楽を共にできる時間を作りたいんです。
喧嘩したり、ぶつかったりしながら、本音で何かを作っていきたいと思います。
山野先生みたいに生まれながらの女性とは違いますが、それでも、女性として認められるように仲間に働きかけていきます。」
「わかりました。
部活はチームワークです。
受け身にならず、積極的に動けば、道は開けると思います。
ただし、入学、入部できたとしても、チームワークを乱すようであれば、退部してもらうこともあります。
その辺は大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫です。」
「わかりました。では、後は現役の姫である小出さんに質問してもらいましょう。」
「小出です。太田さん、お久しぶりです。以前お話いただいたとおりに、当校を志望していただいて、
すごく嬉しいです。
私からは演劇についてです。
演劇部は別に、中学からやってなくても、大丈夫だと思います。
ただし、姫はヒロインだからちやほやされるものだと考えないでください。
姫という名前がついていますけど、別にお姫様ばかりやるわけではありません。
必要によって、いろんな役をやる可能性があります。
例えば、今年の地区大会での私の役は母親役です。つまり老け役もやらなければなりません。
場合によっては、老婆の役も回ってくる可能性があります。
そういったケースにも対処できますが?」
「そうですね。
僕は・・・実は若い女性のヒロインしか考えていませんでした。
お芝居ですものね・・・。
女性にはいろんな年齢があるんだから、当たり前ですね。
はい、何でもやります。
赤ん坊でも、老婆でも。
いいお芝居をつくる一員になれるならば。」
「ありがとう。
たぶん、これから女性として生きていくことを想定するならば、おばさん、おばあさんになる時の自分の姿も考えなければいけませんね。
お芝居では、いろんな年齢の自分に化けられるから、それを楽しめるくらいの方がいいでしょう。
私からの質問はここまでです。」
僕は、緊張で、心臓が張り裂けそうでした。
上手く答えたような気持ちもありますが、お利口さんっぽい回答になっていないかな?という不安もあります。
最後に一番高齢の面接官から質問がありました。
「最後に、この学校の理念を説明しましょう。それは『挑戦』です。若いからこそできる『挑戦』、そして失敗しても再び立ち上がる強い心。われわれは生徒にその二つを3年間で培ってもらいたいと思っています。そこでです、あなたにとって挑戦とは何かということをおっしゃってください。」
僕は、少し下を向いて考えたあと、顔を上げて答えました。
「他人にどう思われようと、自分が信じた道を突き進むことです。もちろん、なるべく迷惑をかけないようにしたいとは思います。家族にはいろいろ迷惑をかけてしまっていますが・・・」
「ありがとう。これで面接は終了です。結果は今日中に学校とあなたにメールします。
お疲れ様でした。」
お、終わったー。死にそうー。超緊張したよ。
そして・・・数時間後、私の登録アドレスに「合格」の通知が届きます。
ふーっ、よかったー。これで一安心。でも、困難はこれからいっぱいありそう。
よし、小出先輩にいろいろ教えてもらおう!
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葵です。太田さんの合格通知を学校が出したあと、山野先生に呼ばれました。
「ふふふ、いい子だったわね。あの子だったら、葵の後を任すことができそうね。」
「そうですね。けっこう芯の強い子だと感じました。
それにしても先生のこと『生まれつきの女性』って言ってましたね。
やっぱり先生はすごいなー。」
「まあ、女として生きている時間が長くなったからね。
あなたも、女性として扱われるのが自然に感じる時がきっとくるはず。
今もそうなってきたでしょう?」
「うーん、でも、まだ、自信がもてません。まだ、付いてるからでしょうか?」
「そうね、うん、やっぱりそれは大きいかもしれない。
やっぱり手術しないとねー。」
「早く、手術したい!待ちきれない!!」
「まあまあ、慌てないで。地区大会、県大会と忙しいんだから。
来年、再び全国大会に行けるように頑張るんでしょ?」
「そうでした・・・へへへ。まずは演劇ですね!」
もうすぐ地区大会、がんばるぞ!




