152 和音、面接前
和音は、良太に声をかけられた後、帰宅途中で、風歌を見つけた。
前回と違い、風歌は前を歩いている。
和音は走って、風歌に追いついた。
「はぁっはぁっはぁっ、風歌、ちょっと待って。」
「ん、和音!
どうしたの?
息、苦しそうじゃない!
ちょっと息整えなよ。
待ってるから。」
「うん・・・
ふぅ~・・・・
もう少し・・・
うん、もう大丈夫!
あのさ、ちょっと聴きたいことがあるんだ。」
「あ!もしかしたら・・・
朝倉君のこと?
ごめんごめん、言うのを忘れてた。
やっぱり美亜と別れたよ。
美亜、わんわん泣いて大変だったんだから。
あの子、プライド高いからねー。
でも、これで和音にチャンス来たね。
堂々と好きになれるよ!
ライバルになる女の子いっぱいいるけどねー。」
「違う、違う!
もうー、変なこと言わないで。
事情わからない人に聞かれたら、ホモだって噂立っちゃうよ。
そんな噂が立ったら、朝倉君に迷惑かかるから・・・
気をつけてほしい。」
「ふふふ、わかりました。
噂は恐いよね。
腐女子にとっては、美味しいネタだけど・・・」
「で、聴くけど・・・
あのさ、
もしかして朝倉君に桃花高校を進学先として勧めた?」
「ん?
勧めてないよ。
ああ、この間は勧めるって言ったけど、あれは冗談。
人生に関わることだから軽はずみなこと言えないよ。
もしかして勧めて欲しかったの?」
「違うよ!
実はさ、今日朝倉君に不意に声かけられて、
進学先聞かれて・・・
思わず答えちゃったんだ。
桃花を推薦受験するって・・・」
「そりゃ、突然ね。
クラス違うのに。
不思議。」
「そしたら、朝倉君も桃花を受ける予定だって言うから、びっくりして・・・
もしかしたら勧めたのかなって思って・・・
となると・・・単なる偶然だね・・・」
「やったー!
ラッキーじゃない。
同じ高校でしかも男子校!
これ以上ないシチュエーション!
仲良くなるしかない!」
「同じクラスになるかわかんないし、
朝倉君はテニス部に入るだろうし、
接点ないかもよ・・・」
「そうかもしれないけど、他クラスの和音に声をかけてきたってことは、けっこう好かれてるってことだよ。
仲良くなれるかもしれないよ!
まあ二人とも合格したら、今度は和音から声をかけてみたら?」
「うん、そうだね。
せっかく声をかけてもらったんだから・・・
嫌われてはいないよね?
そうしよっかな。」
和音は、そんなわけは無いと心に言い聞かせながらも恋の予感を感じる。
顔がにやけてしまう。
「ふふふ、恋する乙女の顔に見えちゃう。
いいなー。
私も高校に行ったら彼氏捕まえよう!
男子校のイケメン紹介してね!
同じ演劇部だから、会う機会、多いかも。」
「え?ああ・・・うん、もしいい人いればだけど。
あ、それから・・・恋する乙女じゃないから!」
「ふふふ、ちゃんと突っ込みに対して返すんだ。
そういうところも可愛いよ。
あ、そうだ!
私テニスやってたから、ずーっとショートヘアだったんだ。
現時点で和音より少し短いくらいでしょ?
でも、テニスやめちゃうから、これからは伸ばしてロングにする。
ずーっと、伸ばしたかったから、夢を実現させる。
和音も伸ばすんでしょ?
一緒に伸ばそうよ!
美容室も一緒のところに行こ!
これからは女の子同士って感じで付き合おうよ!
まあ、中学にいる間は無理だから、卒業してからだけどね。」
「う、うん。伸ばしたい!
ロングヘアの方が女の子っぽくなるもんね。
よろしく。
女の子のこと教えてね。」
「任せて!」
さて、その頃、桃花高校側は・・・
「忙しいのに呼び出してごめん。
ちょっと頼みがあるんだ。」
演劇部顧問の教師、山野秋葉が職員室に小出葵を呼び出していた。
「実は、来週学校推薦の面接を実施するんだけど、演劇部志望でかつ姫志望の生徒がいるんだ。中学側に問い合わせてみたところGIDのようだけど、葵、知ってる?
葵と面識があるって向こうは言ってる。
太田和音っていう子だけど・・・」
入学当初は葵のことを葵ちゃんと呼んでた秋葉だったが、最近では友達みたいに呼び捨てになってきた。
葵の方もそれを自然に感じてる。
信頼関係が深まっているせいだろう。
「ああ、定期公演にいらっしゃったOBの太田先輩の弟さんですね。覚えてます。会いましたよ。
可愛い子でした。私と違って、中学3年生の段階でGIDの診断が出ていて、中学在学中にホルモン治療できるんじゃなかったかな?
ちょっとしか会わなかったけど、いい子だと思いましたよ。
うん、確かに私の後継者になりたいって言ってた。」
「そうなのね。
ちょっと期待できそうね。
それで、お願いなんだけど、あなたも一緒に面接に参加してほしいの。
後継者にふさわしいか、もう一度自分の目で確かめて。
太田さんって、姫に採用されなければ、入学しないって言ってるんだ。
学力は申し分はないから、後は姫への適性のみ。
私だけだとちょっと不安だから、あなたの意見も欲しい。」
「ええっ、そりゃ責任重大!
うーん、どうしようかな?
でも、来年度以降の演劇部の運営にかかわる重大事項ですよね。
わかりました。
出席します。
もう一度、自分の目で確かめてみます。」
「ありがとう!
じゃ、よろしく。」
葵は、職員室から退出したあと、いろいろ考える。
(うーん、私と違って、中学時にGIDの診断が出て、ホルモン治療までやってるんだ。
身長も低かったし、可愛い顔してたし、容姿は問題ないと思う。
問題は性格だよね。
人との協調性、困難を乗り越える勇気、積極性、明るさ、そして演劇に必要な滑舌・・・
いろいろあるなー。
後は、やる気でしょ。
そうだ!性自認がすでに女子ってことなら・・・
女子校の制服着るため、どんな困難も超えようとするはず。
今、私が着ている制服、本当に可愛いもん。
期待できる。)
葵は姫の後輩ができそうなことにワクワクしてしまう。
ヒロインになれる喜びを教えてあげたいと思う。
(そして、恋心をもてる男子ができれば素敵ね。
そんな男子も一緒に入部してくるといいなー。)
けっこうお節介な葵だった。




