151 朝倉良太は桃花高校の演劇部をめざす
「朝倉君、演劇部に興味あったの?
テニス部で、スポーツマンだと思ったのに。」
「いや、ちょっと、あるところで、桃花高校の演劇部の噂を耳にしたので。」
「そうなの?
あのね、桃花高校は今年の夏に開催された全国高校演劇大会で優勝した高校だよ。
演劇の強豪校なんだ。
実は私の大学の時の1年先輩の山野さんっていう女の人が演劇部の顧問やってる。
ちょっと男っぽくてかっこいい先輩。
女同士だったけど、大学時代憧れてたなー。
今でも、その先輩と、あと桃花女子高校の演劇部の顧問をしている福島さんという先輩と
たまに会うよ。
それにしても、意外だな。
朝倉君みたいなスポーツマンが演劇に興味をもつなんて・・・」
「いや、興味があるかどうか微妙なんですけど、
実はテニス以外のことを高校でやってみたいと思ったんです。
そこで、ちょっと演劇の強い高校って話を聴いて、興味をもったんです。」
「桃花高校か・・・そうねー。
学力的には、朝倉君のレベルにぴったりね。
でも、ご両親と相談してね。県立高校よりお金がかかるから。
あと、演劇部に入るとしたら・・・あそこはスカウト主体だからねー、事前に根回ししておいた方がいいな。
その点は安心して。
私が山野先輩に話をしとく。
ウチのイケメン生徒を演劇部に入れてってお願いしちゃうから。
山野先輩、私のことはけっこう可愛がってくれてたから、大丈夫。」
「そ、そうですか?
まだ、桃花高校って決めたわけじゃないし、演劇部に入るって決めたわけじゃないけど・・・
もし、両親と話し合って、そういうことになったら、よろしくお願いします。
実は、桃花高校しか今は思い浮かばなくって。」
「いいんじゃない?あの高校は生徒の個性を伸ばす理念があって、自由奔放な校風があるんだ。
芸術肌の若者にはいいところだよ。」
「別に芸術肌ではないですけど、でも、個性的な学校っていうところに惹かれます。
あ、それで、ちょっと耳にしたんですけど「ひめ制度」って何ですか?」
「あ、耳にしたの?
私もよく知らないんだけど、桃花高校は男子校だから、女の子がいないの。
それで、演劇部では男の子が女性の役をやるんだけど、一人専任の女役がいて、『姫』と呼ばれてるんだ。歌舞伎の女形みたいなものね。けっこう可愛い男の子が選ばれるみたい。」
「そうなんですか?そんな制度があるんですね。」
俺はさっきの太田と教師の会話を理解した。
つまり、太田は高校の演劇部で女形をやりたいんだ。
確か、あいつは演劇部じゃなかったはずだけど・・・
面白いやつだな。
うん、女形にピッタリだな。華奢だし、可愛いし。
「先生、いろいろありがとうございました。
家族と相談してみます。」
「うん、方針が決まったら、また私に話をしてね。」
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家に帰って、俺は、家族と相談する。
実は俺の男女交際のもつれについては家族に説明済みだ。
「モテる男はつらいなー。」と父親はからかうし、
母親は、
「怖い女の子っているのよねー。」と女性の怖さを改めて俺に説明したりしてた。
すでに社会人の兄蒼汰も、
「その女の子と一緒の高校には行くな。」と賛同してくれてた。
ちなみに、兄は、東京で一人暮らしをしているのだが、時々実家に帰ってくるので、こういうプライベートの件はよく相談に乗ってくれる。
同性の兄弟というのはいい。(良太の家から東京の兄のアパートまで電車に乗って50分で着く。就職当時は実家から通ってたのだが、一人暮らしがしてみたいということで、東京の会社の近くにアパートを借りた。)
俺は、進学先を、桃花高校にしたい、お金が県立高校よりかかるけど、認めてほしいと話を切り出すと、
父親は
「金の話はいいけど、何で急に桃花高校にしたいと思ったんだ?」
母親も
「そうねー。理由が知りたいな。」と聴いてきた。
「俺、桃花高校の演劇部に興味を持ったんだ。
中学ではテニスに3年間打ち込んだけど、高校では違うことに夢中になりたくて。
それで、あるきっかけがあって、桃花高校の演劇部がすごいって話を知って、ぜひ、桃花高校の演劇部に入りたくなった。
強豪校で厳しそうだけど、テニス部でもしごかれたからね。
根性はあるから大丈夫。」
「おお、桃花高校か?アソコの演劇部はすごいみたいだな。
しかも、男子校だけど、女役する生徒がものすごく可愛いって評判だ。」
兄がプチ情報を提供してくれた。
兄は、最近、地元で高校時代の友人と飲み会をやったせいか、地元ネタに詳しい。
それを聴いた父親は
「そうか。ちゃんとした理由があるんだな。
桃花高校は、けっこういい大学に進学してる高校だし、不満はない。
夢中になれそうなものがあるなら、俺は文句は言わない。いいぞ。」
「そうね。演劇とは面白いものに興味をもったわね。
お芝居見に行くのが楽しみになりそう。」
よかった。家族全員賛成だ。
俺に新たな目標ができた。
そして、ある日、学校の図書館で受験勉強をしていると、すぐ近くに太田和音がいることに気づいた。
「よう、太田!俺も桃花高校の演劇部めざすぞ。よろしく!」って言いたかったけど、盗み聞きしたことがばれちゃうから言えない。
でも、仲間になる可能性があるんだ。
ちょっとでも声をかけて、距離を近くにしたい。
「よう、太田、久しぶり。高校はどこに行くんだ?」
俺は、1年生だった時、同じクラスだった強みを生かし、馴れ馴れしく話しかけた。
進学先について知らないふりをした。
「あ、朝倉君。久しぶり!
あの・・・一応推薦をもらって、桃花高校を目指してる。
もうすぐ面接があるんだ。」
太田は周囲を見渡して、他の生徒に聞こえないように、俺に近づいてきて、耳に囁いてきた。
うわっ、こいつ未だに可愛い。何かいい匂いもする。
ホントに女の子っぽい。女形にぴったりだ。
「でも、実はクラスのみんなには秘密なんだ。
その・・・黙っていてくれると嬉しい。」
そっか?女形を目指してるんだ。あまり言いたくないだろうな。
「了解。誰にも言わないよ。
それで、奇遇なんだけど、実は、俺、通常受験だけど、桃花高校を目指してる。
もし、一緒に通学することになったらよろしくな。」
俺も、小さな声で、ひそひそと太田に囁いた。
すると、太田はすごく驚いたようだ。
大きな目をさらに見開き、口も開けてしまった。
驚きすぎて、言葉が出ないようだ。
おお、このリアクション、可愛い。
でも、嫌がってはいないと思う。なんとなく嬉しそう。
「そ、そうなんだ・・・
朝倉君と一緒だったら、嬉しいな・・・」
そう言って、彼は顔を赤らめた。
まるで女の子みたいだな。
ホント可愛いやつ。
こいつと高校生活過ごすのは楽しいかもしれない。
俺はそう思った。




