150 朝倉良太は演劇に興味をもつ
俺は朝倉良太。
中学3年生だ。
9月、文化祭の後、俺にはちょっとした事件があった。
半年ほど付き合った女子、木口美亜と別れたんだ。
学校一の美少女で、付き合い始めた時はウキウキしてたけど、性格が俺とは全然合わなかった。
俺は、誰とでも分け隔てなく付き合う男だけど、美亜は人に色を付けるタイプだった。
「あの人は気に食わない、あの人はダメな人間、あの人は付き合わない方がいい。」ということを
露骨に言うんだ。
また、自分の顔の良さがわかってるせいか、自分より容姿が劣ってると思う他の女子に対し、上から目線がすごい。
男子も、地味目なヤツについては、明らかにバカにする。
俺は、当初は我慢していたが、だんだん我慢できなくなっていった。
学力が同じくらいだったから、一時は同じ県立高校を目指そうと約束したけど、もうやめることにした。
俺は、美亜に
「俺と美亜は性格的に合わないと思う、別れよう。」と話しを切り出したんだが、美亜の抵抗は予想以上に大きかった。
俺が切り出したことで、彼女のプライドはかなり傷ついたようだ。
それにしても、学校一の美少女と付き合って、俺は女性に対する考え方が変わった。
やっぱり、女子は性格が一番だ。
そして、同じ価値観を持っていることが大切。
どんなに顔やスタイルが素晴らしくても、一緒の時間を過ごすならば、気が休まる相手じゃなきゃダメだ。
顔で相手を選んじゃいけない。
クラスメイトや、部活の仲間に羨ましがられたけど、美亜との交際は間違ってたんだ。
何とか文化祭のあとに別れることができたけど、おかげで志望校を変えることになってしまった。
彼女に、「同じ高校に進学しないで!」と言われてしまったからだ。
彼女はすごい剣幕で、そこだけは譲れないと言い張った。
俺は約束するしかなかった。
どうしよう?
どこの学校にしようか?
県立高校ならレベルを一つあげるか?それとも下げるか?
それとも同じレベルの私立高校にするか?
そうそう、テニスはもうやめるって決めたんだ。
高校では違うことをやろうって思ってた。
面白い部活がある高校に行きたい!
テニス部の仲間には秘密だけど・・・
志望校の件で、俺は職員室に向かった。
担任の先生が、相談に乗ってくれると言ってくれたんだ。
担任の先生、小山朱里先生はまだ20代後半の女性教師だ。
美人で、面倒見がよく、生徒に人気がある。
女子生徒からも人気があり、情報通でもある。
今回の俺の男女交際失敗の話も知っていた。
志望高を変えるという俺の事情を知って、声をかけてくれた。
「失礼します。朝倉です、小山先生いらっしゃいますか?」
「お、来たわね。
ごめん、悪いんだけど、私、まだちょっと片付けなきゃいけない仕事があるから、
先に生徒相談室で待っててくれる?
生徒相談室はAブースとBブースに分かれてるけど、Bブースを予約してあるから、そこで待ってて。
15分くらい後から行くから。」
「はい、わかりました。」
俺は、生徒相談室に向かう。
「失礼します。」と声をかけ、Bブースに入った。
この生徒相談室、一つの部屋をつい立てで仕切ってるだけで、けっこうAブースの声が漏れる。
うーん、プライバシーのために、もうちょっと声が聞こえない工夫できないかな?
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「うん、太田の学力なら、間違いなく桃花高校の推薦入学は大丈夫だと思う。
ただし、面接で、大失敗しなければだな。
でも、演劇部の「姫」の採用がなければ、行かないのか?」
「はい、先生にも前にお話したように、「姫」になれなければ、桃花高校に行く意味はありません。」
「そうか。その辺は学校からも高校側に話をしておく。そこがポイントなんだな?
太田の複雑な事情は、あの学校なら理解してもらえると思う。
何せ進んだ考えを持ってるからなあ。
しかし、演劇部で超有名校だから、ほかにも「姫」を目指す生徒がいるかもしれないぞ。
学校側の考え一つだな。
もし、ダメだったら、すぐ他の高校目指さないとな。
太田の希望どおりの制服を認める高校となると、ちょっと遠い学校になるかもしれない。」
「それは承知しています。覚悟は決めてます。」
「わかった。
それから、これは、俺が考えた面接での想定問答集だ。
これを参考に面接の練習を家でやったほうがいいぞ。」
「わかりました。助かります。」
「よし、きょうはこれまで。頑張れよ。」
「はい。」
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Aブースの生徒と教師が生徒相談室を出ていったあと、俺は二人の会話を分析してみた。
太田?って聞こえた。
あの太田和音か?
1年の時一緒だった小柄で華奢で、男子なのに可愛らしい感じのヤツ。
笑顔が女の子みたいで、ちょっと癒されるヤツだったなー。
うん、性格のいいヤツだった。
あいつ、桃花高校を推薦受験するんだ。
それにしても演劇部の「ひめ」って何だろう?
うーん、よくわからない。
とにかく演劇部に入れなければ意味がないって言ってたな。
そんなに演劇部に魅力あるのかな?
演劇部が有名なんだろうな?
桃花高校か?
そういえば、個性的な教育と、個性的な部活でけっこう有名な学校だよな。
有名大学にもけっこう合格している。
今まで私立なんか考えてなかったけど、私立を狙うのも面白いかも。
男子校もいい。
何せ、女子にはちょっと懲りてるからなあ。
高校3年間は女子のいない世界もいいかもしれない。
別にホモじゃないけどね。
そんなことを考えていると、小山先生がやってきた。
「ごめんごめん、待たせちゃってごめん。
志望高の変更は重大なことだから、しっかり相談に乗るね。
で、とりあえず、行きたい高校ってあるの?
もし、希望があるなら遠慮せずに行ってね。
その高校が朝倉君にふさわしいかどうかは、ちゃんと考えるから。」
「先生・・・桃花高校ってどうでしょうか?
そういえば、先生、うちの中学の演劇部の顧問でしたね?
桃花高校の演劇部ってすごいんですか?」
俺は、先ほど耳にした高校の名前を口にしていた。




