147 めんどくさい女だけど、可愛いのか?
トラブルは収束するのかな?
友利豊です。
合宿で、とんでもない場面に遭遇してしまった。
二日目の午後、芝居のけいこの休み時間に仲間の落合、児玉と一緒にジュースを買いにいくときだった。
女子校の新川梨亜が他校のサッカー部の2年生に絡まれているところに出くわした。
サッカー部の連中も梨亜も俺たちに気づいていない。
神龍大付属高校の大野?聴いた事あるぞ。
サッカーは上手いけど、性格が悪いっていう噂を聞いたことがある。
あ、やべー、新川が襲われた。
放置できないぞ!
こりゃ、犯罪だ!
助けなきゃ!
ここは演劇部の役者として、知恵を働かせないと。
まずは、落合と児玉を後ろに隠れさせ、俺一人が悪人の3人の前に出た。
「ちょっと待て!そこまでだ!神龍大付属高校のミッドフィルダーの大野卓也さん!
今の会話はスマホに録音させてもらった。
この録音をサッカー部の監督に聴かせていいのかな?
いや、新聞社に持っていこうか?」
俺は録音なんかしてなかったが、はったりをきかせた。
演技である。
そして、相手のフルネームとポジションまで指摘し、相手が不利な立場であることを意識させた。
「なんだ、お前、誰だ。何言ってるんだ?」
「どこの学校だ。俺たちとやろうっていうのか?」
「お前背が高いだけだろう?俺たちと喧嘩して勝てると思ってるのか?
俺たちは3人だぞ。」
「俺は、桃花高校の友利だ。まだ1年だが、礼儀を知らない2年生には敬語は使わない。
それに、一人じゃないぜ。」
相手が一人だと思って、舐めてかかってきた悪人たちに、俺は残りのカードを切る。
児玉が、少林寺拳法の蹴りのパフォーマンスをしながら出てくる。
児玉はちょっと目つきが悪いところあるから、迫力満点だ。
「おお、悪そうな連中だな!
俺、久々に暴れよっかな?
サッカー部のスター選手がどれだけ喧嘩強いかみせてもらおうか?
俺の蹴りのスピードについていけるかな?」
相手が明らかにビビったのがわかった。
「神龍大付属のみなさん、喧嘩のシーンも録画しますか?喧嘩したことが世間にばれたら、あなたたちが試合に出れなくなれなくなるだけじゃなく、チーム全体の不祥事、学校全体の不祥事になりますよ。
それでも喧嘩しますか?」
次に出てきた、理知的な落合が、理路整然と相手にとって不利な情報を提供する。
相手の「しまった。まずい。」という心理が顔つきの変化で手に取るようにわかる。
サッカー部で特待生扱いされてる連中は不祥事に弱い。
「う、ううっ、ちきしょう、覚えてろ!隆太、高貴行くぞ!その女はほおっておけ!」
「くそ、しょうがねえっ。チームや学校にバレるとやべー。」
「ううっ、お前らひきょうだな。今回は見逃してやる。」
悪者サッカー部は早足で去っていった。
バカな連中だ。
スマホに録音されてると思えばもう絡んでこないはずだ。
「ふうっ、ふうっ、ふうっ。はぁっ、はあっ、はあっ。」
新川は激しい息をしばらくしていたので、俺たちは落ち着くまで見守るしかなかった。
落ち着いたところで俺は声をかける。
「新川、もう大丈夫だ。偶然、俺たちジュースを買いに行くときに見かけたんだ。
危なかったな?」
その瞬間、新川の目から、大粒の涙が流れるのを見た。
そして、何とすごい勢いで俺に抱き着いてきた。まるで飛びかかってくる感じだったので受け止めるしかない。
「ばかっ!!
来るの遅いよ!
すごく怖かったんだから!
もっと早く来てよ!
うわーんっ。」
むちゃくちゃだ、助けてやったのに文句言われている。
でも、こいつ、気が強くても女の子だな。
すごく怖かったんだろう。
何となく可愛く感じる。
「おっと、新川さん、友利が神様にみえるんじゃないかな?」
「うーん、これは運命的だな。友利が一生守ってやらなければいけないんじゃない?」
「あのなー。」
俺は、言い返そうと思ったけど、わんわん泣き続ける新川を勇気づけるのが先と判断した。
「新川、もう大丈夫だ。
あいつら、もう来ないよ。
それから、山野先生に言って、相手の学校にも文句を言ってもらおう。
あんな奴らに会うなんてアンラッキーだったな。
もう大丈夫だから、泣くなよ。」
「う、ううっ。
うん。
これから、私が危なくなったら、絶対助けにきてよ!
私を守ってよ。
約束して。
お願い。」
「ええっ?その、今回は偶然だったけど。
そんなこと言われても・・・」
「友利、約束してやれよ。頼りにされてるぞ。」
「おお、新川さん、心細いんだ。あんなことがあって・・・」
そうか、下手するとトラウマになるような出来事だったよな。
もし、俺たちが偶然通らなければ、大変なことになっていた。
安心させることが必要か?
「わかったよ。新川。
約束するよ。
守るよ。助ける。」
俺は強く新川を抱きしめて、優しく囁いた。
「ホント?
ありがとう!
うれしい・・・」
新川はしばらく泣いていたが、10分ほどたって落ち着く。
俺たちは新川を連れて、山野先生と福島先生に事件について報告する。
「神龍大付属高校ね。私、あそこの偉い人知ってるから、今すぐに電話しておく。
事を荒立てることはないけど、二度と事件がおこらないように、釘を刺しておかないとね。」
山野先生は、その場で、スマホをタップして、電話を始めた。
「はい、今話した通りです。
女子生徒が襲われて、けっこう精神的苦痛を負っています。
事件をオープンにするつもりはありませんが、少なくともサッカー部の監督の謝罪はいただきたいと思います。はい。」
おおっ、山野先生、仕事が早い。あっという間に事件の収束に向けて、動いた。
そうだよな。
俺たち高校生だけの話にしておくと、いろいろ後を引く。
大人も巻き込んだ方がいいんだ。
その日の夕方、サッカー部の監督と、当事者3名が男子校女子校のいる場所に現れて謝罪があった。
新川の前で、頭を下げる4人を見て、これで事件は本当に収束したと思う俺たち。
何より新川の心が元に戻るためには大げさでもこういう流れは必要だった。
よかった。
サッカー部の連中が帰ったあと、新川が俺と児玉、落合がいるところにやってきた。
「あの・・・いろいろありがとう。友利君、児玉君、落合君。
それから・・・友利君、めちゃくちゃなこといって・・・ごめんなさい。
えっと・・・あの時・・・嬉しかった。」
新川は真っ赤な顔で、小さな声でつぶやき、全力疾走でその場を離れた。
「ほーっ、友利、こりゃ他の女の子と仲良くしたら、ダメだぞ。」
「うん、こりゃ付き合うしかないな。」
「いや、単に頼りにされているだけだ。恋愛とはちがうぞ。」
と、俺は切り返したが、彼女の柔らかい感触が自分の体に残っていて、ちょっと彼女をほおっておけないという気持ちになっていた。
山野先生のコネクションすごいですね?何者でしょう?




