138 小出家
今度は小出家での会話です。
葵です。
全国大会を終えて、やっと自宅に帰ってきました。
「お父さん、お母さん、お姉ちゃん、
おかげ様で、全国大会優勝できました!
家族の応援があってここまで来れたと思います。
それから、遠いところを直接見に来てくれてありがとう!
力になったよ!」
私は、全国大会から戻って自宅に着くと、まず家族に優勝報告をして感謝の気持ちを伝えました。
家族はニコニコ笑みを浮かべながら、と私の挨拶を聴いてくれます。
よかった。
実は学校で解散する時に山野先生に、家族への感謝を伝えなさいと言われてきたので、その通りにしたんです。
私は、先生が言う事はもっともだと思ったんです。
家族があってこその自分だし、家族の協力なくして、ここまでは来れなかったはずですから。
特に私は男子として生まれたのに、女子に生まれ変わるという人生を選択しました。
家族の協力がなければ、こんな高校生活なんてできなかったんです。
私の挨拶を聴いて、家族は心から喜んでくれました。
「おお、葵、よくやったな!ホント、自慢の娘だよ!
甲子園で優勝したようなもんだもんな。すごいよ。
俺たちも芝居にはすごく感動した。さすがだよ。
いいもの見せてもらった。ありがとう!」
「葵、やったわね。いいお芝居だった。
演技も素敵で、文句なし。
それに、すごく女の子っぽかった。
いつの間にか、すごく魅力的な女の子になってたのね。
」
「よかったよー。高校生の弾ける熱いものを感じたよ。若さねー。
優勝するのもわかる。いいもの見せてくれてありがとう!
私も刺激になった。」
家族はみんな熱く語ってくれました。
で、驚いたのは次の父の一言でした。
「あのな、葵の芝居を見に行った日に、板谷さんのご家族と一緒になってな。
ちょっと親しくなったんだ。
それで、今度ご家族全員を我が家に招待したから。」
「ええっ!うそ!本当?
まあ、板谷君のお母さんと佳織ちゃんは面識あるけど、お父さんは知らないよ。
どうしよう!
何か、緊張する。」
「葵、前に、電車の中でけがをしたおじさんに、ティッシュとガーゼ付き絆創膏を渡したことあっただろう?
そのおじさんが板谷君のお父さんだ。
葵にすごく感謝してたぞ。
お酒が好きそうな人で、俺と気が合いそうだ。」
「そうなの。私と板谷君のお母さんが友達だったはずなのに、お父さん同志も仲良くなっちゃたの。
不思議な縁ねー。
これを機会に家族ぐるみで仲良くしましょ。」
「私も、佳織ちゃんと仲良くなったよ。
佳織ちゃん、私と葵と一緒に遊びたいって。
可愛い子だよね。
そういえば、翔君って、かっこいいじゃない!
彼女いないみたいね。
葵、彼女になっちゃえば?」
「おお、彼はいい感じの若者だな。さわやかだ。
身長も高い。
彼だったら、葵をあげてもいいな。」
「ふふふ、お父さん、まだ早すぎるでしょ?
まだ、葵は性適合手術の前だし、戸籍変更は20才になってからなのよ。
まあ、翔君が葵の彼氏になってくれれば、素敵だけど。」
「でも、翔君、あれだけかっこいいと他の女の子がほおっておかない感じだよ。
葵、部活を一緒にやっているうちがチャンスだよ。
油断は禁物。
他の女の子にとられないようにね。」
「え?ええ?そんなこと言っても、板谷君は私を女の子って思ってないよ。
演劇仲間って思ってるだけだって。
1年の最初の私の男子姿だって知ってるんだから。
私、板谷君を好きになる資格なんてないと思う。」
「何言ってるの。葵ほど、可愛い女の子はそんなにいないよ。
私に似てるんだもん。間違いなく可愛い!翔君もかなり意識してると思う。」
「そうだな、柚と葵は俺の自慢の美人姉妹だ。」
「それを言うなら美人親子でしょ?」
「おお、お母さんを忘れたたな?ごめんごめん。
美人親子美人姉妹だ。」
もー、軽いノリだな。お父さんも、お母さんも、そしてお姉ちゃんも。
そりゃ、板谷君が私を好きになってくれたら、嬉しいけど。
今は恋愛どころじゃないなあ。
身体が不完全なことはいつも意識してるし、それよりも何よりも、演劇を来年の春まで、やり切りたいし、大学に推薦で受かるために勉強も頑張りたいしね。
恋愛にうつつを抜かしている余裕はないよ。
板谷君も同じ状況じゃないかな?
手術を終えて、大学に合格したら、その時はいろいろ考えよう。
そう自分の中で、まとめようとしたら、姉の柚がちょっと意地悪なことを言ってきました。
「葵がぼやぼやしてるなら、私が翔君を彼氏にしちゃおうかな?
年下彼氏も悪くないかも。
どう?葵。
私だったら許してくれるよね?」
「ええーっ!
ダメよ、そんなのダメー?
お姉ちゃん、おっぱい大きいし、色っぽいし、絶対敵わない?
お姉ちゃんが板谷君を誘惑したら、ひとたまりもないよ。
そんなことしちゃダメー!」
私はちょっと慌ててしまいます。
姉は彼氏はいません。
就職してから、彼氏を作るなんて言ってますが、むちゃくちゃモテるんです。
私と違って、すごいセクシーボディです。巨乳です。
純情な高校生男子がうっとりしてしまう大人の女子です。
「ふふふ、冗談よ、冗談!
いくら何でも、高校生に手を出さないから。
でもね、葵。あなたの場合は、チャンスは活かさなきゃだめよ。
あんなに素敵な男子がそばにいるなら、捕まえて離しちゃだめ。
すぐに付き合えとは言わないけど、ライバルにとられないように、十分注意しなさい。
好きなんでしょ?」
「うーっ、参ったなー。
そりゃ・・・
好きだよ。
かっこいいし、優しいし、私のこと誰よりもわかってくれるし。
でも、私、元男子だし、まだ付いているし・・・」
「でも、翔君のお父さん、お母さん、佳織ちゃんは葵のこと気に入ってるよ。
ふつうだったら、家族が反対して、障害になると思うけど、葵の場合はラッキー。
お母さん同士は昔からの友達だし、お父さん同士も仲良くなりそうだし、
外堀は埋まるんじゃないかな?」
「おお、俺は協力するぞ。」
「私も。娘の幸せのためなら、友達の関係を120%活かすから。安心しなさい。」
「うっ、ありがとう。
板谷君と・・・その・・・関係が進展するようにがんばる。」
「そうだな。」
「そうね。」
「ファイト!葵!」
何か、家族で私の恋愛を応援する態勢ができてしまいました。
でも、道のりは厳しそう。
って言うか、私、封印していた恋心を明らかにしちゃった。
どうしよう?
なんか、板谷君と会うのはずかしくなっちゃいそう。
でも、そんなこと言ってられないや。お芝居で夫婦役やるんだから!
部活がんばろう!
葵の恋心は家族にわかっちゃってますね。
強力な味方ですね。




