137 翔、家族の対応に驚く
連休連続更新、今日が最終日です。
板谷翔です。
全国大会が終わり、学校に荷物を運び、何とか自宅に帰ってきた。明日学校で片付けと次期体制のミーティングだ。
それにしてももう午後10時になる。疲れた。
はしゃいでいたせいか、さっきまで全然疲れを感じなかったのに。
その反動だろうか?
とにかく、自宅についた途端疲れが出てきた。
早く横になりたい気分。
良く眠れそうだ。
父が「おお、優勝おめでとう!よくやったな。演技観たぞ!主役ご苦労様。」
母が、「素敵な演技だったよ。うん、かっこよかった。」
妹は、「さすがお兄ちゃん。私が見た高校生役者のなかでは断トツでかっこよかったよ。」
と声をかけてくれる。
現場からスマホで優勝報告しておいたから、みんな優勝した事を知っている。
祝福は嬉しい。
昨日は、舞台を観に来てもらって感謝だ。
「ありがとう。
おかげさまで優勝できました。
部活を自由にやらせてもらって、感謝してるよ。
昨日の応援も遠いところ来てくれて、すげー嬉しかった。」
ちょっと照れ臭いが、真面目な顔で礼を述べる。
山野先生が学校で解散する時に、俺たち部員全員にアドバイスしたんだ。
「帰ったら、家族に直接感謝の気持ちを伝えてください。家族のバックアップがあるからこそ部活動が出来ることを考えてください。そして、応援に来てもらった人は、わざわざ足を運んでもらったことについても、お礼を言う事。恥ずかしいけど、それを伝えることによって、家族との関係が円滑になります。もう、高校生なんだから、しっかりね。」
山野先生は大まじめな顔だった。
俺たち部員は、(そういえば、家族に感謝を伝えたことなんてなかったな?)なんて顔になる。
でも、先生の言う通りだ。
半分大人なんだから、家族の気持ちを考えないと。
一人で育ったわけではない。
俺は、家族を前にして、感謝の意を伝えられてホッとする。
「おおっ、翔も大人になったな。うん。感謝されると、嬉しいよ。」
「ほんと、部活を通じて大人っぽくなったわね。ありがとう。」
「お兄ちゃん、すごい!私もお父さん、お母さんに感謝しなきゃ。」
どうやら、家族も満足してくれたみたいである。良かった。
もう食事をしてきたので、そのあと俺は、シャワーを浴びて、くつろぐことにする。
シャワーから出てくると、出くわした父親が、何気に言う。
「そうだ、今度、小出さんの家に家族で遊びに行くことにしたからな。
俺は小出さんのお父さんと意気投合したし、お母さん佳織はもともと向こうのお母さん、葵さんと仲良かったし、葵さんのお姉さんもいい感じの女の子だったぞ。家族ぐるみで仲良くすることにしたんだ。
今回は2家族で宴会する感じかな?演劇部の主役とヒロインの祝勝会って感じでもある。
よろしくな。」
「は?いつ、向こうの家族と仲良くなったんだよ。
そうか、応援に来たときに知り合ったのか?
ということは、葵の正体もわかったっていうことだよね?」
「おお、驚いたよ。おまけに、この間電車で怪我をした時、ティッシュとガーゼ付き絆創膏をくれた女の子が葵さんってことも判明したよ。
いろいろ縁があるもんだ。
それにしてもいいお嬢さんだ。
可愛いくて、性格もいい。
理想的な女子高生だよ。」
「え?あのさ・・・
念のために聴くけど、小出の性別わかってるよね?」
「もちろん、わかってるよ。
でも、ホルモン治療でほとんど女の子と同じ身体じゃないか。
もう女の子だよ。
俺の好きなアイドルグループに入っても違和感ないくらい可愛い!
すっかりファンになったよ。
俺は葵さんを女性として扱う。
文句あるか?」
「いや、ないよ。
小出は一生懸命、女性になろうとしてるんだ。俺は応援してる。
おやじがそう思ってくれるなら助かる。」
「じゃ、問題なしだ。それにしても葵さんのお父さんと飲む酒が楽しみだ。
あちらさんもお酒が好きみたいだしな。」
父はそういうと寝室に向かった。
小出の家に家族全員で行くのか?
どうしたらそんな流れになるんだ?
小出のご両親とお姉さんと会うのか?
緊張するなー。
どんな人たちなんだろう?
リビングに入ると母親と妹の佳織がその話の続きをしてきた。
おやじとの会話が聞こえたのだろう。
「今、お父さんから聴いたでしょ?
今度小出さんの家に家族でおじゃまするから。
翔ったら、葵さんの正体隠してたのね。
口堅いわねー。
でも、元々の性別がわかっても可愛いし、イメージ変わらないから不思議。
いい女の子じゃない。
あの子を彼女にするっていいんじゃない?
手術して戸籍も女性に変更するんでしょ?
お父さんもすっかりお気に入りよ。
お芝居してる時、二人お似合いだったよ。」
「うん、お兄ちゃん、葵さん、彼女にしなよ。私、大賛成!
顔もスタイルも私より全然上で、憧れちゃう女の子だもん。
お母さんのいうとおり、並んだ姿が素敵だった。」
「ええ?
そんなこと言われてもな・・・
うんと・・・
俺にとって、あいつは友だちだ。
そういう対象として見ないようにしてる。
あいつもそうだと思う。」
「へー、そうなの?
お似合いなのに?」
「なんか怪しい。
無理してない?」
「その話はもういいだろ?
俺、疲れてるから、寝る。
おやすみ!」
俺は逃げるように自分の部屋に向かう。
それにしても、うちの家族は全員変だ!
葵の性別を知ってるのに、女性として認めている。
父親はファンになっちまってるし、母親と妹は俺の彼女にどうかって聞いてくる。
まあ、小出は可愛いし、最近は胸とか尻とか大きくなって色っぽいけど・・・
性格はいいし、思いやりがあるし・・・
でも、でもだ。普通、彼女になんか勧めないぞ!
本物の女子じゃないんだから。
葵みたいなタイプを彼女にしたいって言ったら、反対するのが普通の家族の反応だよなぁ。
冷静に考えて普通の女子と付き合いなさいなんて言うのが一般的なパターンだよ。
何はともあれ、小出は俺にとって大事な演劇仲間だ。
仲良くしていきたい。
うちの家族に好かれるのはいいことかもしれない。
前向きに考えよう!
これで、万一、俺と小出が付き合い始めても問題ないし・・・
ん?何考えてるんだ?俺!
うわっ、これ以上考えると、いろいろやばい!
考えるのやめ。
さ、寝よう!
家族は二人の交際に前向きです。
まあ、翔だけ悩んでる感じかな?




