132 大学生の演劇祭
ついにダブルデート?
いや、意外に真面目に演劇の勉強をする4人です。
葵です。
今日は、菅原くんのお姉さん、菅原舞香さんが出演する大学生の演劇祭を観に行く日です。
都内のある大学で午前10時から5時まで開催です。
4つの大学が約1時間づつの劇を行います。
私たちはさすがに10時からはキツイということで、午後から観ることにしました。
舞香さんが出演するのも午後でしたから、問題なしです。
集合はみんなの自宅からほぼ等距離にあるターミナル駅での集合となりました。
私は、動きやすさと涼しさを優先して、下はやや短めのワイドパンツ、上はゆったりとしたブラウスというかっこにしました。天気が良くて、かなりの気温上昇も予想されてたんです。
待ち合わせ時間ピッタリに着くと、もうあとの3人は待ってました。
板谷君、友利君の180センチコンビは目立ちます。
二人とも、いかにも高校生っていう爽やかな感じです。
おおっ、新川さん可愛い。ミニスカートだ。足きれいっ。
「新川さん、すっごくおしゃれ!可愛いよ!」
「そ、そうですか?制服もミニですけど、私服のミニはちょっと恥ずかしいですね。」
「でも、可愛いよ。足きれいだしっ。男の子二人もそう思ってると思うよ。」
「そ、そうかな?」
「おおっ、いいんじゃないかな?」と板谷君。
「うん、可愛いと思う。」と友利君。
「本当にそう思うの?」と友利君を追求する新川さん。日頃、かみ合わない二人だから、疑ってる。
「本当だよ。疑うのかよ。」
「本当なら、いいけど・・・」
恥ずかしそうに照れる新川さんはいつになく可愛い。
服装、相当悩んだんだろうな。だって、初めて男子校の生徒に私服姿見せるんだもんね。
「小出も、いつもながらセンスいいと思うぞ。」板谷君が、私の耳にちょっと囁く。
板谷君、そういう事言うとドキドキしちゃうじゃない。
困るなあー。
その後、ダブルデートと言う感じではなく、板谷君、友利君が並んで歩き、私と新川さんが並んで歩くという感じで、会場に向かいます。
友利さんと新川さんが並ぶと変な緊張感が湧くので、私と板谷君で、そうなるようにしちゃいました。
さて、会場に着くと、早速、菅原くんのお姉さんを見つけました。
お姉さんの顔については、スマホで写真を送ってもらってたので、すぐわかったんです。
まだ、劇のメイクをする前だったので、大丈夫でした。
背が高くて、舞台映えしそうな方です。
「あのー、小出です。菅原君のお姉さんの舞香さんですよね?初めまして。いつも菅原君にお世話になっています。」
声をかけると、お姉さん、すごく驚いてました。
「ええっ?あなたが小出さん?うそっ?完全に普通の女の子じゃない?しかも可愛いっ!
おどろいた!!
確か治療してるんでしょ?
現代医学のすごさね!
へーっ、すごいなー。わざわざ来てくれてありがとう!
大学生の演劇、楽しんでね。」
「あっ、俺、板谷っていいます。菅原君と仲良くさせてもらってます。」
「あらあら、イケメン!
噂は聴いてるよ。
小出さんとホントにお似合いね。普通に仲いいカップルに見える!」
「いや、俺たち、友達ですから。まあ、仲いいですけど。」
板谷君はうまくお姉さんの冷やかしをかわします。うまいなー。
「後輩の友利です。」「同じく後輩の新川です。」
「うわーっ、噂の1年生ね。あなたたちも美男美女でお似合いねー。
付き合ったら、小出さん、板谷君以上に素敵なカップルになりそう。
付き合っちゃいなさいよ。」
「えっ?そんなこと言われても困ります。俺たちライバルですから。」
「そうです。競争相手です。そんな関係じゃありません。」
「ふふふ、青春ねー。
あっ、私もまだ青春だった。
私なんか、大学に入って、彼氏が3回変わったのよ。
あなたたちみたいな純粋な気持ちに戻りたい!」
うわっ、舞香さん、さりげなくカミングアウトしてる。
なんか自由な人だなー。
「とにかく楽しんでって。
席は決まってないから、空いている席に適当にね。
せっかくの機会だから、大学生のノウハウを見つけて行ってね。」
「はい!」私たちはいっせいに返事をします。
大学生の演劇は驚きの連続でした。
まず、セリフが長かったりします。
衣装、小道具、メイク、大道具も凝っています。
そして、高校生では取り上げないようなテーマを取り上げたりしています。
舞香さんの大学の劇はストーカーを扱った劇で、舞香さんはストーカーに狙われる女性の役。
いくら、警察に訴えても、事件が起きないと動かない警察の実態を皮肉ったような内容でした。
最初は好人物に見えた男性がだんだん狂気のストーカーになっていく演技はすごい。
舞香さんは、ストーカーにおびえるか弱い女子大生だったんですが、突然覚醒して、ストーカーと戦う強い女性になっていきます。守られる女性ではなく、自分で自分を守る新時代の女性としての生きざまを劇の中で表現します。
うん、強い女性はこうでないとダメだって、観客を魅了します。
他の大学も社会問題を捉えたようなテーマの劇で、いろいろ考える機会を与えてくれました。
帰りの電車の中では、4人で演劇について熱く語り合うことになっちゃいました。
板谷君が語ります。
「やっぱ、劇って、人の心を動かすことが大事なんだ。
セリフ一つで、目の動きや声の出し方で、観客を異世界に連れて行くというマジックが必要だ。
全国大会の準備で足りないものって何だろう?って思ったけど、何かわかった気がする。」
私も、続きます。
「そうだね。私も演技で、人の心に残るようなことをしてみたい。
気持ちをいかに込めるかって大事かもね。
でも、説教臭くならないように、ナチュラルにやらないと。」
「そうですね。舞香さんのトコロじゃない大学の劇ではちょっと説教臭いようなところがありました。
伝えたいものがあるのはいいとして、それを押し付けるような感じになっちゃうと、観客は引くかもしれませんね。」
友利君が私の意見に色を付けてくれます。
「うん、何かを伝えることって大事ですね。それも押し付ける感じじゃなくて。
観客をいつのまにか劇の世界に引っ張り込むような、そんな演技がしたいですね。」
新川さんも、興奮冷めやらない感じです。
最後に板谷君が締めてくれます。
「よし、俺たち男子校も全国大会で、観客の心をわしづかみにするぞ。
新川、女子校も地区大会で、突っ走ってくれ。」
「はい、私1年生ですけど、男子校に負けないように、女子校の劇をステップアップさせていきます。
任せてください。」
「俺も1年だけど、新川には負けないようにがんばる。」
新川さんと友利君が目を合わせて、笑顔になります。
よかった。
今日は、この二人、最後はなんかいい感じ。
仲良くなってくれるといいな。
もう、板谷君と葵は他人がみれば、お似合いのカップルに見えるようです。




