魔物の招待
幸灯を失いたくないもう、誰かが居なくなるのはたくさんだ!夕陽に向かって走る。
ただ走り続ける。
もう、随分と走り回っていた。
が、体力は何とか保ちそうだ。
部活の厳しい練習も、時には役に立つ。
この街には珍しくもない雪が舞い始めた。
溶け残り積もった雪が一面を覆っている。
その上にひらり…ひらり…夕陽が雪を真っ赤に染めていた…真っ赤な雪は、幸灯と出逢ったあの時のようで…その光景が、幸灯との再会を約束しているようで…ただ走り続けた。
「おい、お前」
不意に声を掛けられた。
低く抑えた声走っていた俺に、聞こえるほどの声量とは思えないのだが、何故かはっきりと聞こえた。俺は足を止めて、振り返った。
「お前から、あの女の臭いがする」
そこには、金髪の男が目を細めて俺を見ていた。
年は俺と同じか?少し下だろうか?男と言うには少々幼い全体的に線が細いのも幼く見せる要因だろう。
「女…って…幸…灯の事…か?」
情けないが、息が切れていた。
坦々と走る分には良いが、話すとなると別なようだ。
「ユキヒと言うのか?あの女。その剣の持ち主だ」
俺から視線を外し、俺が右手から下げた、布にくるまれた剣を見やる。しかし、横柄な口を利く奴だな
「だったら…何だって言うんだ」
左手の甲で顎に流れた汗を拭い、睨みつけた。
それを聞いて、男がニヤリと笑った。
「そうだな…。ならば此方へ来い」
踵を返し男が歩き出す。
素直に従うのは癪だが、付いて行くしか無い…か。
*男は、自分は魔物だと名乗った。
そして、俺が付いて来てるか確かめるように、何度も首だけ振り向きながら、魔物の話をした。
害意を持たない生物だと強く主張しながら…何百年も無抵抗を通してきた事迷惑など掛けず、ひっそりと棲んでいる事現に、人間に紛れて無数に生活している事今も人間に迫害され、虐殺され続けている事
「人間って、俺は魔物の存在なんて知らない。信じられないしな」
思わず反論した。“人間”なんて一括りにされたって、知った事じゃない。
「人間の本質なんて、どれも変わらないよ」
魔物が、悲しそうに呟いた。
何だか物悲しい、そんな雰囲気だった。
感慨を込めて放たれた言葉に、何も言う事は出来なかった。
いつの間にか辺りは暗くなり、前方に、やけに大きく、そして丸い月が、ぽっかりと浮かんでいた。
人気の無い路地に入り、更にその先…
忘れ去られたように何も無い、寂れた広場が在った。
「此処だ」
男が広場の奥の方を指差した。男の指先を辿る…
「っ!?」
其処に在るモノを見て、衝撃を受けた。
其処に在ったのは…半ば雪に埋もれた幸灯だった…
読んで頂き、ありがとう御座います。タイトルが…苦しい(苦笑




