空虚の学校
朝になった。
幸灯の姿はなかった…。
やっぱり…。
と言う虚無感に襲われる。
昨夜の幸灯の言葉から、何となくそんな気はしていた。
心にモヤモヤが残っているが、なんて事はない。
見知らぬ少女を二晩泊めただけだ。
それに、初めから現実感なんか無かった。
これからも、平凡な日常を歩いて行くだけなんだ…。
そう自分に言い聞かせ、今日も学校へ行った…。
*学校には来たものの、何だかやる気が出ない…。
ボンヤリと受ける授業は、中身を伴わず…、駆けるような早さで過ぎていく…。
鐘の音が、やかましい音を立て、四時限目終了を報せる。
あっと言う間だったな…。本当にあっと言う間…。
「真希ちゃんどうした?」
窓の外を何となく眺めていた俺に、新井 美貴が話し掛けてきた。
「“ちゃん”を付けるな。みき」
「お前こそ、みきって読むな、ヨシタカって呼べよ」
冗談を言い合う元気は残っているらしい。
「早く学食行こうぜ。席が無くなっちまう」
いつもの調子でヨシタカが誘う。
確かに、早く学食に行かなければ席が無くなるのだが…
「どうした…って、何がだ?」
「何でもねぇよ。取り敢えず、元気出せってこった」
ヨシタカはそう答えて教室を出ていった。
驚いた。端から見ても落ち込んでたのか…?
「ま、待てよヨシタカ」
俺はヨシタカについて学食に向かった。
学食に着くと、やはりと言うか…生徒で溢れていた。
「お前がぼうっとしてるからだぞ?」
「わぁるかったな」
美貴の意地悪に、苦笑で返す。
「Aランチ残ってるかなぁ?」
「どうだろうな…俺はBだから関係ねぇ」
他愛の無い冗談を言い合いながら、席を確保し
「肉が少ねぇ!」
「味付け濃くないか?」
昼食をとる。
さっきまで暗くなっていたのが嘘のように、笑う事が出来ていた。
これだから、“友達”ってのは有り難い。
「あ!そう言えば、知ってるか?」
「何が?」
ヨシタカが何かを思い出したように(実際そうなのだろう)声を上げた。
「猟奇殺人だよ」
「あ…ああ」
何となくドキッとしたが、曖昧に頷いた。
厭な汗が流れてくる。
知ってるよ…幸灯が居なくなった原因だ…
多分。
勝手な憶測でしか無いのだが、俺には漠然とした確信があった。
幸灯は、この事件に関係がある。
まぁ、出逢った状況を思えば、当然の考えだと思う。
「この街には珍しいよな。って…何処に行っても珍しいか」
「ああ…そうだな…」
俺は生返事を返した。
幸灯の言葉を思い出す。
私のせいだ…
そう聞こえた。
どう言う意味だ?
雪の中、血塗れで剣を提げた幸灯
私…人を殺したの…
そう言って意識を失った幸灯
何なんだ?一体…
開けっ広げで、よく笑う…
そのクセ、実態が掴めない…
時折見せる、寂しそうな顔…
触れてしまえば消えて無くなりそうな儚さ…
くるくる変わる瞳の神秘さ…
幸灯…
何で…こんなに気になるんだよ……
「真希ぃ?聞こえてっか?」
「え!?」
現実に急に引き戻され、思わず声を上げてしまった。
「あ…」
ヨシタカの言葉で、自分一人の世界に落ちていたらしい事に気付いた。
「本当、大丈夫か?今日の真希、変だぜ?」
「ああ、悪い」
「悪かねぇけどよ…」
そう言うと、暫く沈黙が流れた。
「ふぅ…」
ヨシタカが溜め息を一つ吐くと、そっと口を開いた。
「お前の事だ。悩み事でも在るんだろ」
「え…と…」
ヨシタカが真顔で俺を真っ直ぐ見、図星を突いてくる。
返答に困った。
「一人で抱え込むなよ?」
ニヤリと笑い、更にそう言う。
正直、全てを話したかった。
ヨシタカになら、幸灯の事を話しても大丈夫だろう。
少なくとも、警察沙汰などの大事にはしないハズだ。
俺はヨシタカを信頼している。
でも、誰かに話してしまったら…
何故だか、幸灯には二度と会えない気がして…
やっぱり…話せない…
「ゴメン!ヨシタカ」
そう言って俺は突然立ち上がった。
「急用だ!今日サボるわ!」
幸灯を探そう。
何処に居るのか見当も着かない。
だけど…
「了解。兎に角、応援してるぜ!」
背中でヨシタカの声が響いた。
優しさが痛かった…
今更更新しました…。いやぁ〜すっかり春ですねぇ〜日本にもまだ雪が降ってるので、許して下さい…orz




