月夜の遭遇
俺が真希を見つけたのは、いい加減体力の限界って時だった。
真希の家には鍵が掛かってないわ、中に入ったら蛻の殻だわ、妙に血液臭いわ…。
流石に焦ったが、真希なら大丈夫だと信じて“それっぽい場所”を探し回った。
見つけた時、やけにデカい満月の下、異形の相手に、綺麗なフォームの跳び蹴りを決めていた。
参ったねぇ。背中から蝙蝠の翼、魔物かよ。
そんな相手に間髪入れずに後ろ蹴り。吹っ飛ばしやがった。
「スゴい…」
すぐ近く。
足下の辺りから女の子の声がした。
声の元を見やると、そこには美少女。
ははぁ〜ん、なるほどね。
「アレが佐山 真希だ。普段はパッとしないが、目的がハッキリするとモンスターもぶっ飛ばす」
妙に誇らしい気持ちで、少女に語り掛けた。
真希に見入っていたらしい少女が、俺を見上げた。
『何この人』って視線を向けられた気もするが、ここは無視だ。
「真希の…友達?」少女が俺に訊ねる。
呼び捨てする仲ですか。あーそうですか。
と言う内心は晒さず
「親友ってヤツかな?」
なるべくニヒルに、口元だけで笑った。
「せいっ!!」
真希の気合いが響いた。
真希に目を戻す。
倒れた魔物の顔を、踵で踏み付けていた。
「え、エゲツねぇ…」
あそこまでやるかね?
俺に気付かない処を見ると、相当厄介な相手なんだろうが。
「友達なら、真希を助けてあげて!」
魔物を圧倒してる真希を、助ける?
「何言ってんだ」
と言おうとしたがやめた。
真希の足首を掴んで、魔物が起き上がったからだ。
そのままブン投げる。
う、嘘だろ?
真希は壁に直撃してしまった。
ま、魔物ねぇ?納得した。
「お願い!真希を助けてあげて」
少女が再び俺に頼む。
俺は真希の方を見ながら、それに答えた。
「何で真希は闘ってる?理由によっちゃあ、手出しは出来ない」
真希個人の闘いなら、手助けしたら怒るしな。
「私のせいなの。私が、あの魔物を怒らせたから…」
この子が退魔士か。
「何で君が闘わない?」
少女の方を見やり、疑問を口にした。
俺の見る限り、少女は動ける。
「ダメなの…。剣を持つのが怖いの!!」
少女が思い切り叫んだ。
「ヨシタカ!?」
少女の叫びに目を向けた真希が、俺に気付いたようだ。
「増えたか、人間!」
ついでに魔物まで…
しかも魔物の奴、こっちに歩いて来やがった。
「その女はな、人間を殺したのさ。手違いだったようだがな」
「もう許してっ!」
少女が両手で耳を塞ぎ、絶叫した。
あまりに痛切な叫びだ。
「許せんな!俺達魔物は簡単に殺しておいて!人間一人で喚き散らす!貴様だけは赦さん!」
魔物の奴も、負けず劣らずの大絶叫。
ウルサいな。
その間に、魔物が少女の前に立った。
「ごめんなさい」
力無くうな垂れた少女の髪を、魔物の奴が掴んだ。
そして顔を上向かせる。
「許して…下…さい」
泣きながら、心の底から哀願してる。
俺にはそう見えた。
「貴様を殺すのは最後だ。貴様の周囲の人間から、絶滅させてやる!」
「おい」
あんまり関わりたくないんだがなぁ。
状況もいまいち把握できてないし。
でも、やり過ぎだよなぁ?
俺は魔物の肩をポンッと叩いた。
それに気付いた魔物は、当然振り向く訳で…
「俺から殺しやがれ!」
魔物の喉元に巻き付くように、俺の腕をぶつけ、そのまま振り抜いた。
渾身のショートレンジ・ラリアット!
不意打ちだったが、女の子を泣かしちゃいけねぇよな。
魔物の体が勢いを付けて倒れ、地面に後頭部が激突した。
俺はそれを確認し、真希の傍に移動する。
「俺も標的みたいだからさ、一緒に闘ろうぜ!」
手を差し出し、真希を助け起こす。
真希は起き上がると、唇の片方だけ上げて笑い
「ああ」
とだけ言った。
魔物がユラリと立ち上がった。
真希が足を肩幅に開き前後させ、拳を握って構えた。
俺は自然体。
特に構えなんて無いしなぁ。
「望み通り、まず貴様から殺してやる」
魔物が俺を睨みつける。
鞄を投げ捨てながら
「殺ってみな」
歯を見せて笑ってやった。
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次からバトル開始です!




