95 おほけなく 憂き世の民に おほふかな わが立つ杣に 墨染の袖
おほけなく 憂き世の民に おほふかな わが立つ杣に 墨染の袖
慈円 (平安時代末期から鎌倉時代初期の天台宗の僧、歌人)|前大僧正慈円
若者訳
いやいや、私なんかが大きく出るのもアレですけど……
この世の中、しんどいこと多すぎません?
もう、みんなまとめて私の袖で包んで、守ってあげたいんですよね。
……え?
お坊さんのくせに大口叩くなって?
いや、言うだけじゃなくて、救う気はガチなんで。
袖は地味でも、志はデカいんです。
—— 慈円、比叡山より愛を込めて♡
現代語訳
身のほど知らずな願いかもしれないが、このつらく苦しい世の中を生きる人々を、私の墨染めの袖で包み、守ってあげたいものだ。
比叡山に住んで修行する、この私の僧衣の袖で。
作者は、比叡山で修行した天台宗の僧侶。
この歌は、比叡山を開いた伝教大師・最澄の歌にある「わが立つ杣」という表現を受け継いでいる。
「杣」とは木材を伐り出す山のことだが、ここでは比叡山を指す。
作者は、最澄以来の仏教の伝統を踏まえながら、苦しむ世の人々を仏の教えによって救いたいという願いを詠んだ。
「墨染の袖」は僧侶の衣の袖を表し、人々を包み、守ろうとする慈悲の心を象徴。
また、「墨染」には「住み初め(山に住み始める)」という意味も重ねられていると解釈される。
「おほけなく」と自分の願いをへりくだりながらも、世の人々を救おうとする強い決意が表れている。
社会が大きく揺れ動いた時代に、僧侶として人々の苦しみに向き合おうとした慈円の志を伝える一首。




