★おまけ★とある姫君の話
「まあ、伝説の『王家の至宝』をまとった姫君が⁉︎ とうとう学園にいらっしゃるの⁉︎」
「しっ、ミラキアさま、お静かになさって!」
侍女のスーザンが口を塞ごうと飛びかかって来たのを、床の上で一回転して間一髪でかわした。
「いけないわ、わたくしとしたことが、つい興奮してしまったわ……」
何事もなかったように立ち上がり、ドレスの埃をスーザンに払わせながら、わたくしは胸を押さえて、ハアハアしたい気持ちをぎゅぎゅううっと押し殺す。
これでも王族の端くれ、どんな時でも感情の制御を完璧に行い、ロイヤルなスマイルを浮かべて上品に振舞うことができるのだ。
というか、そんなわたくしをここまで興奮させる『王家の至宝』、侮りがたし!
話は戻って。
わたくしの名は、ミラキア・フレイ・エルスタン。エルスタン国の第三王女である。わたしの上には4人の王子王女がいて、1番上の兄が1番の美形で1番のへんた……個性的な、この国の次期国王のケインお兄さまだ。見た目も麗しく、カリスマ性もあり、頭もいいし剣も得意な、非の打ち所のない王子なんだけど、人間離れした美しさに生まれついたのがいけなかったのか、感性が少々常人とは違い、このお兄さまはどうも人間の女性よりもリスが好きらしいのよね。
今は、ゼールデンという国の学園に留学しているのだが、国王夫妻である両親は、もしかすると他国で王妃候補となる女性をみつけてくるのではないかと、一縷の望みを抱いている。
ま、無理だと思うけどね。
毛色の変わったリスを連れて帰るんじゃないかしらね。
も一度話は戻って。
ケインお兄さまの下には、三つ子の兄姉が(姉がふたりね)いて、わさわさしているせいか、5人目のわたくしは放置さ……自由な環境でのびのびと育てられた。わたくしの見た目はごく普通なのよ。ふわふわした明るい茶色の髪に金と焦げ茶色のメッシュが入り、焦げ茶の瞳がくりっとしていて、ケインお兄さまには「ああ、可愛い、すごくリスっぽいよ! ミラキアはこの国1番の可愛い女の子だね! リスの国のお姫さまだね!」と絶賛されるけど……兄さま、残念過ぎましてよ……。
だいたいね、プラチナブロンドにアイスブルーの瞳をした、まるで妖精のような美貌を持つお兄さまに誉められてましてもね! 嬉しいけどね! 少し虚しさを感じてしまうのよね!
そうそう、『王家の至宝』の話だったわね。
このエルスタン国の王女で、たまーに生まれるらしいのよ、その『王家の至宝』っていうお姫さまが。素晴らしく輝く金髪を持ち、その瞳は青いんだけど金色の光がキラキラっと光っているらしいの。お父さまの叔母さまがそうだったらしいんだけど、駆け落ちしちゃったんですって。駆け落ちだなんて、素敵じゃない?
でね、この『王家の至宝』っていうお姫さまは、見た目が美しいだけじゃなくて、代々とにかく優秀というかパワフルというか、走り出したら誰にも止められない存在なんですって。だから、駆け落ちしても連れ戻そうなんて誰も思わないし、放っておいたらものすごいお金持ちになっちゃってるし、大丈夫かなーって思って油断していたら、その孫のお姫さま(まあ、庶民だけどね、エルスタン王家にしてみたらお姫さまなわけよ)が孤児になっていたらしいの。
それを知ったエルスタン王家は、そのお姫さま、アナベルさまを伯爵家に保護して、そして王立学園に通わせることを決めたんですって。非公式な保護だけどね。
そうしたら、アナベル姫に学園で会えるわね!
楽しみだわ、伝説になるくらいにじゃじゃ馬……活動的だという、美しい『王家の至宝』にお会いできるなんて。
わたくしは、中等部に通っているのよ。これはこっそり、高等部に忍び込むしかないわね。
ああ、早くアナベル姫にお会いしたいわ。そして、わたくしを妹分にしていただくの。
「エルスタン王家のじゃじゃ馬と名高いミラキアさまと、お話が合いそうですものね」
スーザン、うるさいわよ!
わたくしたちは『活動的な姫』なだけよ!




