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R.I.P.末期ギャン ―異世界転生―  作者: 黒瀬雷牙
第三章 アダマンティア大陸 編

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第九十六話 あれから半年

 王都バルミナムの戦いから半年。

 季節はすっかり冬へと移り変わっていた。


 俺とイベルタは平和な日々を送っていた。


 冒険者ギルドで依頼を受け、報酬を受け取る。

 そしてカジノへ向かう。


 勝てば豪遊、負ければまた依頼を受ける。

 そんな生活だ。


 もちろん遊んでいただけではない。


 アケミの元で地獄のような特訓もしていた。

 いや、あれは特訓じゃない。拷問だ。


「まだ立てるな?」


「無理です」


「立て」


「はい」


 そんな日々だった。気付けば俺のマイステータスカードに表記されるLevelは、17になっていた。


 その成果か、俺は黒の鳴動をある程度使えるようになった。だが、体への負担は大きい。連発など到底できない。それでも、一日に数度なら扱えるようになった。


 一方のイベルタもさらに強くなった。火属性魔法の扱いはさらに上達し、嵐龍の牙に炎を纏わせられるようになった。龍鱗の弓も完全に手に馴染んだらしく、矢の速度も精度も以前とは比べ物にならなくなっていた。


 そしてイベルタの胸元では、一つのペンダントが静かに揺れていた。


 純白の宝石。


 かつてユラがドロップした白い石を加工したものだ。


「似合ってるな、それ」


 俺が言う。


「ありがとうございます」


 イベルタは少しだけ微笑んだ。


 コルディはというと、騎士団へ戻った。


 現在はライネルの下で活動している。どうやら大規模な盗賊団との戦いが続いているらしく、忙しく飛び回っているため、最近はほとんど顔を見ていない。


 少し寂しい気もするが、本人は元気だろう。


 そんなある日のことだった。


 冒険者ギルドで昼飯を食っていると、一人の騎士が現れた。


 見覚えのある鎧。王都バルミナムの騎士だった。


「ギャン殿。イベルタ殿」


 騎士は深く頭を下げる。


「王陛下がお呼びです」


「断れないのか?」


「断れません」


「だよなぁ……嫌な予感しかしねぇな」


「私も同感ですね」


 こうして俺達は王都へ向かうことになった。


 数日後、王都から派遣された豪華な馬車に乗り込み、俺達はエーテルディアを後にした。


 冬の風が吹く街道を進む。


 道中、俺達は見覚えのある村の近くを通った。


「あれは……」


 俺は窓の外を見る。

 イベルタも気付いたらしい。


「ユッキーさんの村ですね」


 以前よりも少し賑やかに見えた。


 煙突からは白い煙が立ち昇り、畑では村人達が働いている。子供達が走り回り、犬が吠え、どこにでもある平和な村の風景がそこにはあった。


 ユッキーの姿は見えない。

 だが、きっとどこかにいるのだろう。


 畑を耕しているのかもしれない。

 家で昼寝をしているのかもしれない。

 あるいは村人達と飯でも食ってるかもしれない。


「元気にしてるといいですね」


 イベルタが小さく呟く。


「あいつなら大丈夫だろ」


 俺は笑った。


 根拠なんてない。だが、何となくそう思った。


 俺達が戦っている間も。

 コルディが騎士として頑張っている間も。

 ユッキーはユッキーなりに生きている。


 それでいい。それが少しだけ嬉しかった。


 馬車は止まらない。ゆっくりと村を通り過ぎていく。


 やがてその姿も見えなくなった。

 またいつか会うこともあるだろう。

 その時は、あいつに奢ってやろう。


 俺はそう決めた。


 やがて、バルミナムに到着した俺達は、王城の玉座の間へ案内された。


 豪華な赤い絨毯、高い天井。

 そして玉座に座る男。


 オーウェン=バルミナム王。


「久しいな、異界の賭博師よ」


「どうも」


 俺は適当に返事をした。王様相手にどうかと思うが、今さらだ。


 王は苦笑した。


「相変わらずだな」


 その左右には見知った顔もいる。

 クラウド、そしてアリシア。


「久しぶりですね」


 アリシアが軽く頭を下げた。

 元気そうで何よりだ。


 王はゆっくり立ち上がった。


「単刀直入に言おう」


 空気が変わる。


「助けてほしい国がある」


「国?」


「いや……正確には大陸だ」


 王は地図を広げた。そこには見知らぬ巨大な大陸が描かれていた。


「アダマンティア大陸」


 その名を聞いた瞬間、クラウドの表情が僅かに険しくなった。


「ドワーフ達が暮らす鉱山の大陸だ」


 王は続ける。


「現在、その大陸で異変が起きている」


 俺とイベルタは顔を見合わせた。

 嫌な予感がさらに強くなる。


 王は静かに告げた。


「魔王軍四天王の一人が動いている」


 玉座の間が静まり返る。


「名は、トオル」


 その瞬間、背筋を冷たいものが走った。

 日本人の名前だった。


 また転生者だ。


 ケンジ。


 ユラ。


 王都を地獄に変えた連中。

 その同類。いや、もしかしたらそれ以上。


 王は真っ直ぐ俺を見た。


「異界の賭博師ギャン」


「……なんだよ」


「アダマンティア大陸を救ってくれ」


 嫌な予感しかしなかった。

 そして残念ながら、俺の嫌な予感は大抵当たる。

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