表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
R.I.P.末期ギャン ―異世界転生―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 王都バルミナム 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
97/105

第九十五話 ただいま、エーテルディア

 長い旅の果てに。


 俺達はようやくエーテルディアへ帰ってきた。


 街の入口から見える景色は、出発した時とは大きく変わっていた。崩れていた建物は修復され、人々の顔には活気が戻っている。


 そして何より、街の中央で輝く巨大な護石。


 ケンジによって破壊されたエーテルディアの護石は、完全に復旧していた。


「帰ってきたな」


 俺が呟く。


「ええ」


 イベルタが微笑む。


「長かったわね」


 コルディも肩を竦めた。

 その時だった。


「ん?」


 聞き覚えのある声。


「……ギャン!?イベルタ!!コルディ!!」


 大声を上げながら駆け寄ってきたのは一人の女性だった。


 派手な服装、堂々とした立ち振る舞い。

 エーテルディア裏社会の頂点。

 そして俺と同じ転生者。


 アケミだった。


「おいおい!生きてたか!」


「勝手に殺すな」


 アケミが騒いでいると、今度は別の声が飛んできた。


「戻ったのか」


 振り返ると、そこにはライネルがいた。

 エーテルディア騎士団長。そして英雄レオナルドの息子。

 その隣にはミネルヴァ。

 さらに少し離れた場所にはロキまでいる。


「なんだ、全員集合じゃん」


 コルディが笑う。

 少し前なら考えられなかった光景だった。


 裏社会。

 騎士団。

 情報屋。


 本来なら対立するはずの連中が同じ場所にいる。

 だが今は違う。エーテルディアを復興させる。

 その目的のために手を取り合っていた。


「それで?」


 アケミが真顔になる。


「王都で何があった?」


 周囲も静まり返った。

 俺は全員を見渡す。


 そして口を開く。


「ケンジを倒した」


 沈黙。誰も言葉を発しなかった。


「そうか……」


 最初に呟いたのはライネルだった。


 俺は続ける。


「王都は守れた……だが、犠牲も出た」


 ライネルの表情が強張った。

 嫌な予感を察したのだろう。


「レオナルドは死んだ」


 沈黙。誰も動かなかった。

 ライネルだけが目を閉じる。


 拳を握り締める。


 だが泣かなかった。騎士団長だからではない。

 きっと息子だからだ。覚悟していたのだろう。


「最後まで英雄だった」


 俺は言った。


「王都を守るために戦った」


 ライネルは静かに頷いた。


「そうか」


 短い言葉だった。

 だがその一言に全てが込められていた。


 そして、俺はイベルタを見る。

 イベルタが一歩前へ出た。


「父さんも死にました」


 ミネルヴァが息を呑む。


「シュレイド=ローキンスは王都を守り抜いて戦死しました」


 姉妹の間に沈黙が落ちる。

 やがてミネルヴァは目を伏せた。


「……そう」


 震える声だった。


「父さんらしい最期ね」


 イベルタも小さく笑う。


「はい」


 それ以上の言葉はなかった。


 必要なかった。


 シュレイドは最後まで騎士だった。


 それだけで十分だった。


 街の中央で護石が静かに輝いている。


 ケンジは死んだ。ユラもいない。

 レオナルドも、シュレイドも。


 多くの命が失われた。


 それでも、彼らが守ろうとした世界は残った。

 人々は笑い、街は復興し、明日へ進んでいる。


 俺は空を見上げた。

 青空だった。


 どこまでも高く、どこまでも澄んだ空だった。

 

 こうして、王都バルミナムを巡る戦いは幕を閉じた。


ーーー 第二章 王都バルミナム編 完 ーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ