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R.I.P.末期ギャン ―異世界転生―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 王都バルミナム 編

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第九十三話 受け継がれた想いと、力

 王都バルミナムを出発してから数日。


 街道を進む俺達は、森の中の細い山道を歩いていた。


「平和だな」


 ユッキーが伸びをする。


「そうでもない」


 コルディが険しい顔で周囲を見渡した。


「嫌な気配がする」


 その直後だった。


「囲めッ!!」


 怒号が響く。木々の陰から次々と武装した男達が飛び出した。


「盗賊か!」


 俺は剣を抜く。だが、相手の動きを見た瞬間、コルディの表情が変わった。


「まずい!」


「知ってる奴らか!?」


「あいつだ!」


 コルディが前方を指差す。そこには黒い外套を羽織った男が立っていた。


 細身の体、鋭い目。

 そして両手には短剣。


「アイツは名うての盗賊、ギルティスだ!」


 男はニヤリと笑った。


「へぇ、俺を知ってる奴がいるとはな」


 嫌な笑みだった。その後ろには二十人以上の盗賊達。しかも統率が取れている。


 ただの山賊ではない。


「気をつけろ!」


 コルディが叫ぶ。


「こいつら強い!」


 次の瞬間、盗賊達が一斉に襲い掛かってきた。


 戦いは予想以上に厳しかった。


「チッ!」


 コルディの黒鞭が盗賊を吹き飛ばす。

 だが、その隙を別の盗賊が埋める。

 ユッキーの鋼鉄ヨーヨーも、何人にも命中している。


 それでも数が多い。


「キリがありません!」


「分かってる!」


 俺は剣で盗賊を斬り伏せる。


 だが次が来る。

 また次が来る。


 まるで波だ。


 しかも連携が良い。

 こいつら、本当に盗賊か?


 その頃、少し離れた場所ではイベルタとギルティスが激突していた。


「はぁっ!」


 嵐龍の牙。凄まじい速度の斬撃。

 だがギルティスも異常だった。


 短剣一本で捌き、受け流す。


「面白いな、お嬢ちゃん」


「黙りなさい!」


 互角。いや、あのイベルタが僅かに押されている。


 その様子を見ていた俺は舌打ちした。


 まずい、このままじゃジリ貧だ。


 その時だった。


 ふと、脳裏に一人の男が浮かんだ。


 血塗れの姿。

 最後の笑み。


 そして――


「……ケンジ」


 無意識に呟く。

 俺は左手を見る。



 使える。



 そんな確信があった。

 俺は左手を盗賊達へ向けた。


「ギャン!?」


 ユッキーが叫ぶ。


 俺は息を吸う。

 そして叫んだ。


「黒の鳴動!!」


 世界が震えた。


 轟音、地面が砕ける。

 黒い衝撃が前方へ奔流となって駆け抜けた。


「なっ!?」


「ぎゃああああ!!」


 盗賊達が吹き飛ぶ。


 木々が折れる。

 地面が抉れる。


 ケンジが放っていた破滅そのものには遠く及ばない。


 威力は十分の一以下。

 範囲も半分以下。


 それでも、盗賊団を崩壊させるには十分だった。


「す、すげぇ……」


 ユッキーが呆然と呟く。


「あぁ……」


 俺も驚いていた。

 反動も凄い、膝をつき、立つことも叶わない。


 だが不思議と恐怖はない。

 あの力はもう、俺の中にある。


 一方その頃、イベルタとギルティスの勝負も決着を迎えようとしていた。


「終わりだ」


 ギルティスが踏み込む。

 短剣が閃いた。

 完璧な一撃。


 イベルタの脇腹を深々と抉るはずだった。


 その刹那、イベルタの胸元で揺れていた白い石が光る。


「!?」


 ギルティスの短剣が、半分だけすり抜けた。

 まるで幻を斬ったかのように。


 本来なら致命傷、だが傷は浅い。


「なに――」


 ギルティスが目を見開く。

 イベルタは見逃さなかった。


 閃光のような一撃。

 ギルティスの胴を切り裂いた。


「ぐっ……!」


 盗賊は膝をつく。勝負ありだった。


 数分後、盗賊団は完全に制圧された。

 縛り上げられた盗賊達。


 倒れたギルティス。


 静寂が戻る。


 ユッキーが安堵の息を吐いた。


「終わったぁ……」


「疲れたわね」


 コルディも肩を回している。


 俺は少し離れた場所で立つイベルタを見た。

 彼女は胸元の白い石を見つめていた。


 ユラが残した石。

 あの戦いの後に手元へ残ったもの。


「……助けたの?」


 イベルタが小さく呟く。


 返事はない。

 あるはずもない。


 だが、風が吹いた。


 どこか懐かしい風だった。

 イベルタは少しだけ笑う。


「まったく」


 呆れたように。そして少しだけ優しく。


「最後まで勝手な人ですね」


 白い石は静かに輝いていた。

 まるで遠くから見守るように。

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