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R.I.P.末期ギャン ―異世界転生―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 王都バルミナム 編

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第七十三話 騎士マリベルと王都観光!俺たち、何しに来たんだっけ

 ドンドンドン!!


「起きてください!! 朝です!!」


 騎士団宿舎の一室に、爆音が響いた。


「うおッ!?」


「敵襲か!?」


 俺とユッキーは同時に飛び起きた。

 まだ頭が重い。昨日は結局、深夜まで情報整理していたせいだ。


 再び扉が叩かれる。


「開けますよ!!」


 普通に入ってきた。


「失礼します!!」


 デカかった。

 まず声がデカい。

 次に体がデカい。

 さらに存在感もデカい。


 そして。


「…………」


 おp……二つのメロンに視線が吸い寄せられる。


 いや仕方ないだろ、鎧の上からでも分かる。

 これはとんでもない。


 ユッキーが小声で呟いた。


「デカ……」


 女性騎士はニカッと笑った。


「私はマリベル!!アリシア隊長の部下です!!」


 声がデカい。

 耳が痛い。


「本日より!!お二人の監視役を任されました!!よろしくお願いします!!」


 敬礼。メロンが揺れる。


「…………」


 再び視線が吸い寄せられ、ユッキーが真顔になる。


「すげぇ」


 マリベルは豪快に笑う。


「若いですねぇ!! 元気なのは良いことです!!」


 見た目は二十代後半くらいだろうか。下手すれば三十近いかもしれない。少なくとも、十代のアリシアの部下という感じではない。


 むしろ逆だ。


「……アリシアの部下?」


 俺が思わず聞き返すと、マリベルは胸を張った。


「はい!!隊長は若いですが、あの方は別格ですから!!」


 即答だった。迷いが一切ない。


「隊長、怖ぇもんな」


 俺が呟くと、


「えぇ、怖いですね!」


 本人も認めた。


「隊長に睨まれると胃が痛くなります!」


「分かる」

「分かる」


 俺とユッキーは深く頷いた。


 なんだろう。この人、話しやすい。

 アリシアと比べると圧が全然違う。


 もちろん騎士として強いのは分かる。

 だが、安心感がある。


「隊長は本日、王城で会議ですので!本日は私が担当します!!」


「マジか」


 俺とユッキーは顔を見合わせた。


 ……ちょっと安心した。あの氷みたいな騎士と四六時中一緒は、正直かなり疲れる。


「では!!朝食へ向かいましょう!!」


 マリベルは元気よく振り返る。

 その瞬間、鎧越しでも分かる圧力が揺れた。

 ユッキーが視線を逸らしながら呟く。


「すげぇ…」


「だからお前黙れって」


「?」


 俺は小さく息を吐いた。少なくとも今日一日は、少し気楽に過ごせそうだった。


 騎士団宿舎の食堂は、朝から妙に静かだった。


 木製の長テーブル。

 焼きたてのパン。

 湯気の立つスープ。


 いかにも健康的な朝食である。


「おぉ……」


 俺は少し感心した。

 牢屋との差が激しい。

 硬いパン生活は何だったんだ。


「騎士は身体が資本ですから!!」


 マリベルが豪快に笑う。


「いただきます!!」


 食べ始めた。


「待て待て待て」


 俺は思わずツッコんだ。


「量どうなってんだよ」


 マリベルの前には、山盛りだった。


 パン。

 肉。

 卵。

 スープ。


 全部デカい。


 俺たちの三倍近い量がある。


 ユッキーも引いていた。


「朝からそんな食うのか……?」


 マリベルは当然のように頷く。


「街を守るにはエネルギーが必要ですから!!」


 ガハハと笑いながら肉を頬張る。


 説得力がすごい。

 というか食う速度もすごい。


「強ぇ奴ってやっぱ食うんだな……」


 マリベルの皿はどんどん空になっていく。見てるだけで胃もたれしそうだった。


「では!! 本日は王都をご案内します!!」


「案内?」


 食後、宿舎前で俺が聞き返すと、マリベルは元気よく頷いた。


「監視だけでは退屈でしょう!!」


「まぁ確かに……」


「王都には良い場所が沢山ありますから!!」


 その結果。


「ここが南市場です!!」


「おぉー」


「この串焼き美味ぇ」


「でしょう!!」


 完全に観光だった。気付けば俺たちは市場を歩き、露店を見て、飯を食い、景色を眺めていた。


 ユッキーなんか途中から普通に楽しんでいる。


「すげぇな王都」


「人多すぎて酔うけどな」


「こちらは職人街です!!」


「へぇ〜」


 マリベルの案内は妙に上手かった。

 店主とも仲が良い。子供達にも慕われている。


 街の騎士って感じだった。


「お、騎士様だ!」


「マリベルさーん!」


 めちゃくちゃ人気ある。子供達に囲まれ、頭を撫でながら笑う姿は、昨日のアリシアとは真逆だった。


「すげぇ愛されてんな」


「隊長は怖がられますからね!!」


「否定しないんだ」


「でも尊敬はされていますよ!!」


 そこは即答だった。

 なんだかんだ部下として慕ってるんだろう。


 その後も。


 武器屋。

 広場。

 甘味屋。

 噴水。


 俺たち、何しに来たんだっけ?

 夕方頃には、普通に土産まで見ていた。


「これイベルタに似合いそうだな」


「コルディはこういうの秒で壊しそう」


「分かる」


 もはや旅だった。

 そして日が沈み始めた頃。


「では!!本日の任務は終了です!!」


 マリベルが敬礼する。


「お疲れ様でした!!」


「おう、ありがとな」


「楽しかったぜ」


 マリベルは嬉しそうに笑った。


「それは良かったです!!」


 そのまま去っていく。

 最後まで声がデカかった。


 宿舎の部屋、扉が閉まる。


 沈黙。


「…………」


 俺とユッキーは顔を見合わせた。


「……いや」


 ユッキーが真顔で言う。


「楽しかったな」


「あぁ、楽しかったな」


 数秒後。


「いやいやダメだろ俺たち!!」


 同時に叫んだ。

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