第七十一話 仲間達だけ釈放されたのだが、監視役が最悪すぎる
私の名前はイベルタ。
現在、王都バルミナム地下牢に収監中である。
「はぁ……」
私は小さくため息を吐いた。
地下牢と言っても、王都の牢は妙に綺麗だ。
湿気こそあるが、不衛生というほどではない。
……だからといって快適ではないが。
「納得いかないんだけど!!」
隣でコルディが鉄格子を蹴飛ばした。
ガァン!!
「うるさいわよ」
「だっておかしいでしょ!?なんでギャン達だけ釈放なのよ!!」
数分前。
クラウド=ローキンスがここへ来た。
そして淡々と告げたのだ。
ギャンとユッキーの釈放。
そして、王国への協力要請。
「まぁ……二人が解放されたのは良かったわ」
私は壁にもたれながら呟く。
少なくとも、処刑や拷問の類ではなかった。
それだけで十分安心できる。
「良くないよ!!私達まだ牢屋なんだけど!?」
「コルディは危険人物認定されてるから仕方ないわね」
「納得いかない!!」
再び鉄格子を揺らす。
元気ね、本当に。
「イベルタ姉ちゃんだってローキンス家の問題児とか言われてたじゃない!」
「まぁ、実際問題だもの」
私は苦笑した。クラウド兄さんの立場も分からなくはない。
私は元々、ローキンス家の人間。しかも今は半ば出奔状態。
王国側からすれば、簡単に野放しに出来る存在ではない。
「……でも」
コルディが少しだけ真面目な顔になる。
「ギャン達だけ外って、ちょっと心配じゃない?」
「心配よ」
私は即答した。
ギャンさんは妙なところで無茶をする。
ユッキーも止める側に見えて、割と一緒に突っ込む。
しかも今の王都は危険だ。
ユラ。
そしてケンジ。
あの二人が動けば、王都そのものが戦場になる。
「まぁでも、クラウド兄さんの話聞く限り監視付きみたいだよ……アリシアの」
その瞬間、コルディの顔が引き攣った。
「……うわぁ」
アリシア=ローキンス。
私の妹にして、私の知る人の中で一番の天才。
あの子は強い。
本当に強い。
アリシアは利き腕を潰された状態だったのに、それでも私は正面から完封された。
あれはもう、才能とか努力とか、そういう次元の騎士じゃない。
「……ギャン、絶対イラつかせてるわね」
「間違いないわ」
「ユッキーも巻き込まれてる」
「でしょうね」
少しだけ笑ってしまった。
容易に想像できる。
ギャンさんが軽口を叩き、アリシアが冷たい目で睨み、ユッキーが巻き添えで疲弊する光景。
そしてコルディは、ふと真顔になった。
「……あれ? もしかして牢屋の方がマシじゃない?」
私は少し考えた。
「……否定できないわね」
地下牢は静かだった。
遠くで騎士達の足音が響く。
王都全体が張り詰めている。
嵐の前。
そんな空気だった。
私は目を閉じ、小さく息を吐いた。
「無茶しないでよ、ギャンさん」
あの人は、こういう時ほど危険な方へ歩いていくのだから。




