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R.I.P.末期ギャン ―死んで借金が消えた俺は、異世界でも賭け続ける―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 王都バルミナム 編

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第七十話 なんなんだこの空間、高級料理なのに拷問みたいになってる

 王城を出た瞬間、俺は大きく伸びをした。


「っはぁ〜……やっと外か」


「空気重すぎだろ、あそこ」


 ユッキーも露骨にげんなりしている。


 だが。


「無駄口は慎め」


 後ろから冷たい声。


 アリシア=ローキンス。


 現在、俺たちの監視役兼護衛。

 そして、クソ真面目女騎士。


「はいはい」


「返事が軽い」


「重く返した方がいいか?」


「出来れば黙っていてください」


 辛辣。


 俺はユッキーと顔を見合わせた。


 ……楽しくねぇ。


 そりゃそうだ。


 こいつはエーテルディアで、コルディを処刑しかけた女だ。しかも、利き腕を潰された状態で絶好調だったイベルタを真正面から完封した化け物。


 強い。マジで強い。


 シュレイドとは別方向で、騎士として完成されてる感じがする。


 コルディと同い年くらいで、だ。

 そんな奴が後ろを歩いてる。

 気楽な旅なんか出来るわけがない。


「なぁアリシア」


「必要な事以外喋らないでください」


「まだ何も言ってねぇ」


「言う前に止めました」


「理不尽」


 ユッキーが小声で呟く。


「コルディなら五分で喧嘩してる」


「イベルタでもキレてるな」


「お二人とも、黙って歩けますか?」


 冷た、氷かこいつ。


 王都バルミナムの街並みは相変わらず凄かった。


 石造りの巨大建築。

 高級そうな店。

 鎧姿の騎士達。


 本来なら観光気分でも味わえそうな場所だ。


 だが。


「……全然楽しくねぇ」


「監視付き旅行だからな」


 しかも無言圧迫系監視。

 精神が疲れる。


 そのまま数時間。


 昼前。


「腹減った」


 俺は立ち止まった。

 ユッキーも即座に頷く。


「限界」


「騒ぐな」


 アリシアが眉を寄せる。


「飯」


「子供ですか貴方達は」


「腹減った」


「減りました」


「止まらないでください。この場で斬ってもいいのですよ?」


 だが俺たちは動かない。


「メシ食うまで歩かん」


「俺も」


 ユッキーはその場にしゃがみ込んだ。

 アリシアのこめかみに青筋。


「……はぁ」


 深いため息。


「分かりました」


「お、やった」


「ですが妙な真似はしないでください」


 そうして連れて行かれたのは、王都中心部。

 明らかに高級街だった。


「うわ」


「場違い感すげぇ」


 巨大なガラス窓。噴水。

 入口に立つ制服姿の店員。


 どう見ても上流階級用だ。店員がこちらを見た瞬間、一瞬だけ表情が固まった。


 そりゃそうだ。俺とユッキー、どう見てもドレスコード違反である。


「アリシア様」


 店員が即座に頭を下げる。


「個室を」


「……かしこまりました」


 その間も、店員の視線は俺たちに向いていた。


 完全に、「なんでこんなの連れてきた?」

 って顔である。


 分かる。

 俺もそう思う。


 案内されたのは、やたら広い個室だった。


 ユッキーが小声で言う。


「個室なの、俺達を人前に出したくないからだろ」


「絶対そう」


「聞こえています」


 アリシアが冷たく言う。


 図星らしい。


 席に座ると、次々と料理が運ばれてきた。


「……なんだこれ」


 白い皿に、なんか葉っぱとソースがちょこんと乗ってる。ユッキーも困惑していた。


「料理?」


「多分」


 別の皿。


 なんか透明。


 さらに次。


 肉っぽいけど小さい。


「量少なくね?」


「品数で勝負するタイプでは」


「必要な事以外喋るなと言ったはずですが」


 圧。

 怖い。

 俺とユッキーは静かに食べ始めた。


 味は美味い。

 めちゃくちゃ美味い。


 だが、落ち着かねぇ。


 真正面。


 アリシアがずっとこっち見てる。


 騎士みたいに背筋伸ばして。


 無言で。


 怖い。


「……」


「……」


 ユッキーと目が合う。

 こいつも完全に食べた気してない顔だった。


 なんなんだこの空間、高級料理なのに拷問みたいになってる。


「おかわりは?」


 アリシアが聞く。


「いらないです」


「結構です」


 即答だった。


 アリシアは少しだけ眉をひそめる。


「口に合いませんでしたか?」


「いや美味い」


「めちゃくちゃ美味い」


「では何故そんな死んだ顔を?」


 俺は真顔で答えた。


「胃が休まらねぇ」


 ユッキーも頷く。


「圧が強い」


 アリシアは数秒黙り込み、


「……意味が分かりません」


 本気で理解してなさそうだった。


 俺は悟る。


 この女。


 強い。

 真面目。

 美人。


 だが多分、人と飯食うの致命的に向いてねぇ。


 店を出た瞬間、俺とユッキーは同時に大きく息を吐いた。


「っはぁぁぁぁ……」


「生き返った……」


 アリシアが怪訝そうな顔をする。


「そこまでですか?」


「お前、あの空気で飯食って平気なの?」


「?」


「ダメだこりゃ」


 本気で理解していない顔だった。王都の通りは昼時ということもあり、人通りが多い。


 貴族らしい連中。

 商人。

 騎士。


 だが以前より、明らかに武装した人間が増えていた。ユラ襲来の影響だろう。


「で?」


 アリシアが腕を組む。


「これからどう動くのですか」


「どうって?」


「ケンジ捜索です」


 真面目。


 クソ真面目。


 俺は頭を掻いた。


「正直、無策で歩き回るのは効率悪ぃ」


「……何?」


 アリシアが眉を寄せる。


「王都は広いんだぞ?」


 俺は周囲を見る。


「そんな場所で、いるかも分からない奴を探すとか、気合いだけの捜索じゃねぇか」


 ユッキーも頷いた。


「砂漠で金貨探すようなもん」


「では、どうすると?」


 アリシアが問う。

 俺は少し笑った。


「簡単だ」


「?」


「ケンジがいそうな場所を探す」


 アリシアが黙る。


「……具体的には?」


「あいつも俺と同じ、()()()()()()だ」


 王都バルミナム。

 巨大な城壁都市。


 そのどこかに、地震の怪物が潜んでいる。


 そして奴は、俺と同じ転生者だ。

 行きそうな場所なんざ、ある程度読める。


 俺は笑った。


「さぁて」


 そして、一歩前へ出る。


「化け物が好きそうな場所、探しに行こうぜ」

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