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R.I.P.末期ギャン ―死んで借金が消えた俺は、異世界でも賭け続ける―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 王都バルミナム 編

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第六十八話 牢屋に入れられていた俺、ようやく王国に話を信じられる

 俺はギャン。


 牢屋ってのは、もっと臭くてジメジメしてるもんだと思ってた。


 だが王都バルミナムの地下牢は妙に綺麗だった。

 石壁は冷たいが、汚れは少ない。

 無駄に金かかってる感じがして腹立つ。


「……暇だな」


 鉄格子にもたれながら呟く。


 隣ではユッキーが壁に背を預け、ぼんやり天井を見ていた。


「寝てんのか?」


「寝てねぇ、暇」


「だなぁ」


 俺たちの武器は全部没収済みだ。


 サンダーグラディウス。

 銀の鎧。


 どっちも騎士団に持っていかれた。


 ユッキーの鋼鉄ヨーヨーも同じだ。


「俺のヨーヨー返してほしい」


「愛着あるんだなお前」


「鍛冶屋のオヤジの形見だからよ……」


 慣れた武器がないってのは、地味に落ち着かねぇ。

 だが、そんな俺の比じゃ無さそうだな……


「イベルタ達どうしてるかな」


 ユッキーがぽつりと呟く。


「別棟だろ」


「女用監獄らしい」


 コルディはたぶん文句言いまくってる。

 イベルタは頭痛そうな顔してそうだ。


 少しだけ笑った、その時だった。


 バタバタと足音が響く。


 騎士たちが慌ただしく地下を走っていく。


「……なんかあったな」


「あぁ」


 空気が変わっていた。


 数分後。


 地下牢の前で足音が止まる。


 現れたのは、銀灰色の髪をした男。


 クラウド=ローキンス。


「……よぉ」


 俺は軽く手を上げた。

 クラウドは無言でこちらを見る。


 相変わらず冷たい目。

 だが前より少しだけ、空気が違った。


「何かあったか?」


 俺が聞くと、クラウドは短く答えた。


「ベヒーモスが出た」


「は?」


 ベヒーモスだと?元いた世界のゲームでも、クソ強ぇ化け物扱いだったぞ……


「王都正門付近に出現。レオナルド総長が討伐した」


「マジかよ……」


 ユッキーも少し驚いた顔をする。


「被害は?」


「死者多数」


 空気が重くなる。


「さらに、ユラも確認された」


 その言葉で、地下牢の空気が変わった。


「……来たんだな」


 ユッキーが低く呟く。


「あぁ」


 クラウドは続ける。


「死霊術を使用。死亡した騎士を操り、追加被害を出した」


「クソ野郎だな」


 俺は舌打ちした。

 ユッキーも拳を握りしめている。


 記憶に新しい、ユッキーの村での惨劇。


 あの女ならやる。

 むしろ嬉々としてやる。


「レオナルド総長の報告を受け、陛下は警戒態勢を最高段階へ移行した」


 クラウドの視線が俺たちへ向く。


「そして、お前たちの話についても再検討が行われた」


 鉄格子へ歩み寄る。


「新たな四天王、地震能力者ケンジ」


 低い声。


「王都を狙っているというお前たちの話」


 ガチャリ、と鍵が差し込まれる。


「完全に妄言とは言い切れなくなった」


 牢が開く。


「異界の賭博師ギャン、そしてユッキー」


 クラウドは静かに言った。


「王命により、お前たち二人を釈放する」


 ユッキーが目を細める。


「……二人だけか?」


「あぁ」


 クラウドの声に迷いはない。


「イベルタとコルディは引き続き拘束する」


「なんでだよ」


「イベルタはローキンス家の問題だ」


 淡々とした声。


「コルディは危険人物指定が解除されていない」


「まぁコルディは分からんでもねぇけど」


「納得してんじゃねぇよ」


 ユッキーが呆れた顔をする。

 クラウドは俺たちを見る。


「勘違いするな」


「?」


「信用したわけじゃない」


 冷たい視線。


「だが、現状お前たちの情報は貴重だ」


「素直じゃねぇな」


「お前にだけは言われたくない」


 即答だった。

 だが、その奥に焦りが見える。

 王国側も理解したんだろう。


 今回の敵は、ただの魔族じゃない。

 王国そのものを崩しかねない怪物だ。


「武器は?」


 俺が聞く。


「返還はまだ許可されていない」


「はぁ?」


「サンダーグラディウス及び銀鎧は我々の管理下にある」


「勝手に人の装備管理してんじゃねぇよ、クソが」


 ユッキーも聞く。


「俺のヨーヨーは?」


「同様だ」


「……マジかよ」


 珍しく露骨に嫌そうな顔をした。


 クラウドは踵を返す。


「来い。陛下がお前たちと改めて話したがっている」


 俺は牢の外へ出る。久々の自由。

 だが、空気は最悪だった。


 地下牢の上からでも分かる。

 王都全体が張り詰めている。

 戦争前夜みたいな空気だ。


「……ケンジはまだ動いてねぇんだろ?」


 歩きながら俺が聞く。

 クラウドは少しだけ間を置いた。


「現時点では確認されていない」


「ってことは」


「ユラだけで、ここまで騒ぎになった」


 ユッキーが小さく息を吐く。

 俺は笑った。


「最悪じゃねぇか」


 そして俺たちは、再び王城の奥へ向かって歩き出した。

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