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R.I.P.末期ギャン ―死んで借金が消えた俺は、異世界でも賭け続ける―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 王都バルミナム 編

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第六十話 王都バルミナム到着一時間、無事犯罪者になりました

 王都バルミナムは、でかかった。

 門をくぐった瞬間、空気が違う。


 人の数。

 建物の高さ。

 視線の多さ。


「……久々に来たけど」


 コルディが素直に漏らす。


「めっちゃ都会! エーテルディア以上!!」


「油断するな」


 俺は短く言う。


「ここから先が、本番だ」


 その時だった。


「止まれ」


 低い声。気づいた時には、囲まれていた。

 騎士団。白銀の鎧、統一された動き。隙がない。


「武器を捨てろ」


「……早ぇな」


 思わず笑う。


「バレてる前提かよ」


「どうしますか、ギャンさん」


 イベルタが小さく問う。


「……いい」


 剣を下ろす。


「ここまで来て、コソコソしても意味ねぇ」


「は?」


 コルディが目を丸くする。


「いいの!?」


「逃げる理由がねぇ」


 むしろ都合がいい。


「王に会える」


 ユッキーが、少しだけ口角を上げた。


「なるほど」


「全員、拘束する」


 騎士の声。縄が巻かれ、武器も取り上げられる。


「抵抗しないのか」


 騎士が訝しげに言う。


「しねぇよ」


 俺は肩をすくめる。


「案内してくれ」


 そのまま、俺たちは連行された。


 城は、さらにでかかった。


 白い石造り。

 無駄のない造形。

 威圧感しかない。


「……場違い感すご」


 コルディが小声で呟く。


「静かに」


 イベルタが制する。長い廊下を進み、巨大な扉の前で止まる。


「開けろ」


 扉が、開いた。


 広間。


 天井が高い。

 無駄に広い。


 そして中央。


 玉座。そこに座っていた男。


 オーウォン=バルミナム。


 王都バルミナムに君臨する、サンライズ大陸の王。

 年老いている。だが、ただの老人じゃない。


 視線だけで分かる。

 こいつは、空の上の存在だ。


「……ほう」


 低い声が響く。


「これが、例の者たちか」


 俺たちは玉座の前に引き出される。

 そして、空気が変わる。


 左右に立っている連中。

 ただ者じゃない。


 いや、違う。


 ()()()だ。


 まず一人。


 黒い鎧の男。全身から殺気が滲んでいる。

 目が合った瞬間、本能が警鐘を鳴らす。


 ――勝てない。


 イベルタが、わずかに息を飲んだ。


 ローキンス家当主・殲鬼シュレイド。


 王国最強の騎士。


 その隣。


 金の髪を持つ大柄な男。


 堂々とした立ち姿。まるで獅子そのもの。


 金獅子レオナルド。


 ライネルの親父、もう1人の王国最強。


 そして、その後ろ。


 若く整った顔。だが、目が冷たい。

 イベルタに似ている。


「あれが……クラウドか」


 イベルタの兄。


 そして――


「……久しぶりね」


 声がした。


 女。


 白い装束。凛とした佇まい。

 美しい金の髪を束ねている。


 整いすぎた顔。


 その目は、完全に感情を殺している。


 コルディの肩が、ぴくりと揺れた。


「……アリシア」


 アリシア=ローキンス。


 秩序の象徴。


 そして、イベルタの始末を目論み、コルディを処刑しようとした女。


「問題児が揃っているわね」


 淡々と言う。

 場の空気が、さらに冷える。


「……で?」


 俺は口を開いた。


「わざわざ呼び出して、なんの用だ」


 騎士がざわつく。


「無礼だぞ!」


「王の御前だ!」


「うるせぇな」


 俺は一蹴する。


「こっちは時間ねぇんだよ」


 シュレイドの視線が、わずかに鋭くなる。

 だが、引かない。

 ここで引いたら終わりだ。


「……面白い」


 王が口を開いた。


「続けよ」


「単刀直入に言う」


 俺は前を見据える。


「ケンジ」


 その名前を出した瞬間。

 空気が、変わった。


「四天王の一人だ」


 全員の視線が俺に集まる。


「地震の能力者。奴1人でエーテルディアは崩壊した」


 ロキの言葉が脳裏をよぎる。


「次に狙うのは、ここだ」


 王都バルミナム。

 広間が静まり返る。


「……根拠は」


 レオナルドが低く問う。


「勘だ」


 即答。騎士たちがざわつく。


「ふざけるな!」

「そんなもの――」


「だが間違いねぇ」


 遮る。静かに言い切る。


「嫌な予感だけは、外れねぇんだ」


「だとしても」


 今度はクラウドが口を開いた。


「何故、そのケンジ本人がまだ現れていない?」


 冷静な声。


「王都を狙うなら、既に来ていてもおかしくないはずだ」


 確かにそうだ。普通なら。


「……仲間集めだろ」


 俺は答える。


「仲間?」


「あぁ」


 ユッキーを見る。


「ユラが言ってた」


 あの女の声を思い出す。


『ケンジ様のために、あなたは使える』


「使えるってな」


 その時、騎士団がざわついた。


「ユラ……だと!?」

血月の夜(けつげつのよる)がいるのか…!?」

「やはり生きていたのか」


 騎士たちの反応を見る限り、血月の夜――それが、あいつの通り名らしい。


「戦争でも始めるつもりか」


 レオナルドが低く呟く。

 俺は肩をすくめた。


「つまり、あいつは戦力を集めてる」


「馬鹿げている」


 アリシアが冷たく言う。


「根拠が曖昧すぎる」


「じゃあ無視するか?」


 俺は笑う。


「地震能力者が暴れてんのに?」


「……」


 空気が止まる。

 俺は王を見上げた。


「守る側なんだろ?」


 挑発でもある。

 だが、それ以上に――


「動かねぇなら、俺が勝手にやる」


 言い切った。広間の空気が張り詰める。


 次の瞬間。全身に鳥肌が立つ。


 殺気。


 シュレイドだった。


「王の前で、その態度」


 低く、冷たい声。


「首を落とされたいか」


「やれるもんならやってみろよ」


 俺は笑った。

 逃げる気はない。

 ここまで来た。


 沈黙。誰も動かない。

 重い空気の中、王が静かに目を閉じた。


 そして。


「……シュレイド」


「は」


「ひとまず、牢へ入れておけ」


 コルディが「えぇっ!?」と声を上げる。


「ちょ、話聞いてた!?」


「当然だ」


 クラウドが冷たく言う。


「だからこそ、危険人物として拘束する」


 シュレイドがこちらへ歩いてくる。


「逃げられるとは思っていない」


 圧。近づくだけで空気が重い。

 だが俺は、笑った。


「……別にいい」


「ギャンさん?」


 ユッキーが小さく見る。


「どうせ、また呼ばれる」


 俺は王を見る。


「アンタらも分かってんだろ」


 ケンジが来る。

 その可能性を、完全には切れていない。

 王は何も答えなかった。


「連れて行け」


 騎士たちが動く。

 縄を引かれながら、俺は笑う。


 王都到着初日。

 俺達は無事犯罪者となった。

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