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R.I.P.末期ギャン ―死んで借金が消えた俺は、異世界でも賭け続ける―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 王都バルミナム 編

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第五十九話 瓦礫の上で、アタシは立つ

 最後の一撃で、魔物の頭蓋が砕けた。

 巨体が、ぐらりと揺れて。


 そのまま、瓦礫の上に崩れ落ちる。

 血が飛び散り、魔物は消滅をはじめる。


 息が、少しだけ上がる。


「……はぁ」


 肩で息をするほどじゃない。

 でも、楽でもない。


 アタシの名前はアケミ。

 アタシは、瓦礫の上に立っていた。


 街は、まだ死にかけてる。


 煙の匂い。

 焼けた木の匂い。

 血の残り香。


 地震野朗に護石を壊されてから、騎士団と一緒に魔物を潰しながら復興してる。


 Level 45。マイステータスカードに刻まれているレベルは、いつのまにか、アタシの年齢を追い越してた。


 ……笑えないね。


 ただでさえ崩壊しかかっていたエーテルディアは、連日の魔物の襲撃で、街は息をする暇もない。


「……ったく」


 大型モンスターを討伐したアタシは、小さく舌打ちする。


「派手にやってくれたじゃん」


 足元には、崩れた建物。

 その隙間から、かすかに光が漏れている。


「そっち、持ち上げるよ!」


 声を張る。騎士が二人、すぐに反応した。


「はい!」


「今行きます!」


 瓦礫に手をかけ、力を込める。


「……よっと」


 持ち上げる。その下から小さな手が見えた。


「大丈夫、大丈夫」


 優しく声をかける。


「もう平気だから」


 引きずり出す。

 泣きじゃくる子供。

 すぐに、後ろの治療班に預ける。


「頼む」


「はい!」


 走っていく背中を見送る。


 ――止まれない。


 ここにいる連中は、全員そうだ。


「アケミさん」


 後ろから声。振り返ると、ロキがいた。


「護石の復元、進んでいます」


「どれくらい?」


「七割、といったところです」


「遅いね」


「これでも最速です」


 即答。相変わらず、感情が読めない顔。


 でも。


「……寝てないでしょ」


「あなたもでしょう」


「アタシはいいの」


 肩をすくめる。


「慣れてるから」


「……」


 ロキは何も言わない。

 ただ、少しだけ視線を外した。


 その時。


「アケミ殿!」


 低く通る声。振り返ると、ライネルがこちらに歩いてきていた。鎧は傷だらけ、それでも姿勢は崩れてない。


「護石の基盤、再接続が完了した」


「へぇ、やるじゃん」


「これより、再起動を行う」


「失敗したら?」


「その時は――」


 わずかに、間。


「この街は終わりだ」


「……だよね」


 軽く笑う。冗談じゃない。

 でも、誰も笑わない。 


「じゃ、やるしかないでしょ」


 アタシは腕を組む。


「さっさとやってよ、騎士団長」


「任せろ」


 ライネルが頷く。


 街の中心、砕けた護石の残骸。

 その周囲に、騎士たちが配置につく。


 ロキが、ゆっくりと前に出た。


「魔力経路、接続」


 低く呟く。空気が、変わる。

 見えない流れが、集まり始める。 


「……来るよ」


 アタシは小さく呟く。


 誰も、動かない。

 息を潜めてる。


 失敗したら終わり。


 それが全員分かってる。


 次の瞬間。


 ――ゴォン。


 重い音。護石が、淡く光り始める。


「出力、安定」


「維持しろ!」


 ライネルの号令。


 光が、広がる。

 ゆっくりと。

 だが確実に。


 街全体を、包み込むように。


 そして――


 ふっと、空気が軽くなる。


「……成功、ですね」


 ロキが呟く。 


「はぁ……」


 アタシは、大きく息を吐いた。


「なんとか、なったか」


 完全じゃない。

 でも、これで守れる。

 少なくとも、これ以上は壊させない。


 周囲から、安堵の声が漏れる。


 座り込む奴。

 泣き出す奴。

 その場で倒れる奴。


「……終わりじゃないよ」


 アタシは呟く。


「ここからだからね」


 ライネルが頷く。


「復興を開始する」


 その声は、まだ強い。


 少しだけ、静けさが戻る。

 アタシは、空を見上げた。


「……そろそろか」


「何がですか」


 ロキが隣に来る。


「ギャンたち」


 遠く。王都バルミナムの方向。


「もう着く頃でしょ」


「……でしょうね」


 ロキも、同じ方向を見る。


「止められると思いますか」


「知らない」


 即答。


「でも、やるでしょ。あいつらなら」


 あの無茶苦茶な連中。

 でも、だからこそ。


「任せたんだし」


 ロキは、わずかに目を細める。


「……ええ」


 ライネルが遠くで指示を飛ばしている。

 騎士たちは、再び動き出す。

 守る戦いは、まだ終わらない。


「アタシたちはアタシたちで――」


 瓦礫を踏み越える。


「やることやろっか」


 そして、視線をもう一度だけ遠くへ。

 王都の方角。


「死ぬなよ、ギャン」


 小さく、呟く。

 その声は、誰にも届かない。

 だが確かに、繋がっていた。

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