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R.I.P.末期ギャン ―異世界転生―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 王都バルミナム 編

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第五十一話 賞金稼ぎの誤算、やっぱりお前は強すぎる!

 アルカレンス渓谷を出た俺たちは、王都を目指していた。


 街道は使わねぇ。


 あんなもん、追われてる側が通る道じゃない。わかりやすく捕まってくださいって言ってるようなもんだ。


 だから俺たちは森の奥、獣道に入った。


「……ほんとにこっちで合ってるのか?」


 枝を払いながら進む。道なんてほぼ無い。踏み跡がある気がするレベルだ。


「合ってます。街道より安全です」


 前を行くイベルタが、迷いなく言う。


「まぁ、騎士団は来づらいだろうな」


 コルディが後ろで軽く笑う。


「その代わり」


 言いかけた瞬間だった。


 ――ブンッ。


「……は?」


 視界の端で、何かが振られた。


 次の瞬間、衝撃。


「――がッ!!?」


 身体が、浮いた。何が起きたか理解する前に、俺は木を何本もへし折りながら吹き飛ばされていた。


 背中が、地面に叩きつけられる。


「……っ……!!」


 息が、出ない。肺が潰れたみてぇだ。


「ギャンさん!!」


 遠くでイベルタの声。霞む視界の中で、そいつは見えた。


 デカい。いや、デカすぎる。肩に鉄球を担いだ、筋肉の塊みてぇな男。


「おいおい、もう壊れたか?」


 低い声で笑う。


「つまんねぇな、ロブー」


 その隣。細身の男が、つまらなそうに言った。

 空気が、冷える。


「もうちょい遊ばせろよ」


 そいつの足元から、霜が広がっていく。


「名の知れた賞金首がいるって聞いたんだ。期待してたのに」


 イベルタの前に立つ二人。


「ラザとロブー……!」


 イベルタの声が、わずかに低くなる。


「へぇ、知ってんじゃん」


 ラザが笑う。


「なら話は早い。金借りのイベルタ、大人しく捕まってもらおうか」


「断ります」


 即答。


「そりゃ残念」


 ラザが指を鳴らす。

 瞬間、空気が凍った。


「っ!なんかヤバいかも!」


 コルディが動く。一直線にラザへ、黒鞭がしなる。


「遅い」


 パキン。


 音がした。


「……は?」


 コルディの声が、固まる。

 黒鞭ごと、腕が凍っていた。


「ざーんねーん」


 ラザが笑う。


「チッ……!」


 コルディが舌打ちする。だが動けない。完全に凍結されている。


「で、お前は」


 ロブーが、俺の方を見る。


「まだ生きてんのか。ザコみたいだがしぶといな」


 足音が近づく。ヤバい、マジでヤバい。身体が動かねぇ。


 さっきの一撃……骨いってんじゃねぇのかこれ。


 銀の鎧がなきゃ……間違いなく即死だった。


 ロブーが鉄球を持ち上げる。


「トドメだ」


「やめてください」


 イベルタの声。ロブーの動きが止まる。


「ん?」


 イベルタが、小さくため息をついた。


「ギャンさんもコルディも……この程度の族にやられるなんて、情けないですね」


 ラザのこめかみに青筋が浮かぶ。


「……今なんつった?」


「聞こえませんでしたか?」


 イベルタは、淡々と言う。


「この程度です」


「殺す」


 ラザの声が、低く沈む。


「ロブー、合わせろ」


「おう」


 次の瞬間、二人が同時に動いた。


 凍結の波と、鉄球の軌道。

 完全なコンビネーション。


 逃げ場はない――はずだった。


「遅いです」


 イベルタの姿が、消える。


「何!?」


 ラザの背後。イベルタはすでに回り込んでいた。

 手には、短剣。鈍く光る刃。


 業物・嵐龍の牙による斬撃。


 即座にラザは反応するも、頬が激しく裂けた。


「チッ!」


 血を撒き散らしながら距離を取るラザ。


「ロブー!!」


「わかってる!!」


 鉄球が唸る。

 だが、爆発。


「なっ!?」


 ロブーの足元で、爆風が弾けた。


「矢……!?」


「特製です」


 イベルタが、次の矢を番える。いつの間にか、弓に持ち替えていた。


 再び放たれる。


「数で補えます」


 ドドドドドッ!!


 轟音。連続爆発。地面が抉れ、視界が煙に包まれる。


「クソがッ!!」


 ロブーの怒号。


「舐めんなァ!!」


 煙を突き破って、鉄球が飛ぶ。


「読めてます」


 イベルタは、もうそこにいない。

 横、さらに横。動きが違う。


「相変わらず……すげぇな」


 俺は、かろうじて呟いた。視界はボヤけてるが、それでもわかる。あいつ、一人で押してやがる。


「はぁ……はぁ……!」


 ラザが息を荒げる。


「なんだコイツ……!」


「あの雑魚どもとは…レベルがちげぇ……!」


「言ったでしょう」


 イベルタが、静かに言う。


「あなたたちは、この程度だと」


 その目は、冷たい。完全に、仕留める目だ。


(……やべぇな)


 俺は、少しだけ笑った。


(助けられてばっかじゃ、カッコつかねぇだろ……)


 まだ動かねぇ身体に、力を込める。

 骨が軋む。痛みで視界が弾ける。


(立てよ)


 ここで寝てたら、マジで終わりだ。

 イベルタ一人に任せるなんて、冗談じゃねぇ。


「……まだ、終わってねぇぞ」


 俺は、歯を食いしばって言った。 

 足に力を入れた瞬間、全身が悲鳴を上げた。


「……っ、クソ……」


 骨、やってるな。たぶん何本かいってる。


 それでも、関係ねぇ。視界の先、イベルタが一人で二人を相手にしている。


 ラザとロブー。

 どっちも強い。


 なのに、押してる。


(……あいつ、やべぇな)


 だが、それに甘えて寝てるほど、俺は落ちぶれちゃいねぇ。


 俺はラザに向かおうとした。


「……いや、違う」


 本能が、止めた。あいつは今、イベルタに任せるべきだ。


「コルディだ」


 俺は方向を変え、一直線に駆ける。


「ギャン……!?」


 凍りついたままのコルディが、目だけで驚く。腕ごと、黒鞭ごと、完全に氷漬け。


「動くなよ」


 俺は剣を構える。


 サンダーグラディウス。


 雷を帯びた刃が、バチバチと音を立てる。


「それ……ヤバくない!?」


「大丈夫だ」


 短く吐く。


「お前のそれ、普通の武器じゃ切れねぇんだろ?」


「……そうだけど」


「なら、遠慮いらねぇな」


 踏み込む。全力で、振り抜いた。


「――ッッ!!」


 雷鳴。刃が、氷に叩き込まれる。


 ――バキィィン!!


 凍結が、砕け散った。


「がっ……はっ!」


 コルディが一気に息を吐く。まだ完全じゃねぇ。だが動ける。


「借り一つだね、ギャン……!」


「あとで倍で返せ」


 その瞬間だった。


「ロブー!!」


 ラザの叫び。イベルタに意識が向きすぎてる。

 完全に、隙だらけ。


「今だ、行け!!」


 コルディの黒鞭が、しなる。


 バシュッ!!


 ラザの身体に絡みつく。


「なっ!?」


「捕まえたぜ」


 氷は砕けたが、黒鞭そのものは無事。むしろ、拘束には十分すぎる。


「クソがッ!!離せ!!」


「嫌だね」


 コルディが笑う。


「これ、そう簡単に外れないんだわ」


 俺は、踏み込む。


 全身の痛み?知るか。

 今ここで決めなきゃ、全部終わる。


「てめぇ……!!」


 ラザの目が、こっちを向く。


 遅ぇよ。


「終わりだ」


 サンダーグラディウスを、振りかぶる。


 雷が収束する。そして――


「ッラァァァ!!」


 全力で、叩き切った。


 ――ドガァァァン!!


 轟音。雷と共に、ラザの身体が吹き飛ぶ。

 地面を抉り、木々をなぎ倒しながら転がっていく。


 動かねぇ。


「……はぁ、はぁ……」


 決まった。完全勝利!


 残り一人。


 そっちはイベルタが、相手をしている。


 鉄球が唸る。振るうたびに、空気が爆ぜる。

 直撃すれば終わり。だが。


「遅い」


 イベルタは、もうそこにいない。消えたかのような速度。横、背後、上。


 完全に翻弄している。


「チョロチョロとォ!!」


 ロブーが吠える。だが、当たらない。かすりもしない。


「力任せすぎです」


 イベルタが、静かに言う。その手には、短剣。


 嵐龍の牙。


「当たらなければ、意味がありません」


 一瞬。ロブーの動きが、大振りになった。

 その隙に、イベルタが踏み込む。


「終わりです」


 見えなかった。次の瞬間、ロブーの背後に立っていた。


 静寂、そして。


「……が、は……?」


 ロブーの身体が、崩れる。

 遅れて、血が噴き出した。

 鉄球が、地面に落ちる。


 ドスン、と鈍い音。

 完全に、決着だった。


「……」


 イベルタが、ゆっくりと振り返る。


「無事ですか?」


 その一言。何事もなかったみてぇに言いやがる。


「……無事に見えるかよ」


 俺は笑う。


「ボロボロだ」


「ですね」


 イベルタも、わずかに息を吐いた。それでも、余裕は崩れてねぇ。


「ですが、生きています」


「まぁね……」


 コルディが肩を回す。風が、森を抜ける。さっきまでの殺気が、嘘みてぇに消えていた。


「……助かった」


 俺は、素直に言った。


「一人じゃ無理だった」


「当然です」


 イベルタは即答する。


「最初から、そのつもりで動いてください」


「へいへい……」


 だが、悪くねぇ。こういうのも。


 俺は、空を見上げる。


(……まだ、終わってねぇ)


 王都まで、道は遠い。


「行くぞ」


 俺は、前を向いた。


「次は、負けねぇ」


 森の奥へ。俺たちは、再び歩き出した。

※今回の前半終了パターン


 まだ動かねぇ身体に、力を込める。

 骨が軋む。痛みで視界が弾ける。


(立てよ)


 ここで寝てたら、マジで終わりだ。

 イベルタ一人に任せるなんて、冗談じゃねぇ。


「……まだ、終わってねぇぞ」


 俺は、歯を食いしばって言った。 

 足に力を入れた瞬間、全身が悲鳴を上げた。


「……っ、クソ……」


 骨、やってるな。たぶん何本かいってる。


 それでも、関係ねぇ。視界の先、イベルタが一人で二人を相手にしている。


 ラザとロブー。

 どっちも強い。


 なのに、押してる。


(……あいつ、やべぇな)


 だが、それに甘えて寝てるほど、俺は落ちぶれちゃいねぇ。


「うおおおおおお!!」


 喉が裂けるくらい叫びながら、一直線に突っ込む。


 狙いはラザ。


 今ならやれる。


 そう、思った。


「……は?」


 次の瞬間。


 視界が、凍った。

 空気が、じゃねぇ。

 思考が、止まった。


「遅ぇよ」


 ラザの声が、すぐ横で聞こえた。

 いつの間にか、距離が詰められている。


(――しまっ)


 判断が、遅れた。イベルタに意識が向いてる。

 そう思い込んだ時点で、負けてた。


「馬鹿が」


 音がした。


 腕だ。俺の剣ごと、腕が凍りついていた。


「がっ……!?」


 動かねぇ。サンダーグラディウスも、振れない。


「その程度で来るとかよ」


 ラザが、笑う。冷たい目で。


「期待外れだな」


 指が、鳴る。凍結が、全身に広がった。


「ッ……!!」


 息が、止まる。


 肺が、凍る。

 血が、凍る。

 思考が、凍る。


(……やべぇ)


 マジで、やべぇ。


 身体の感覚が、消えていく。

 なのに、意識だけはやけにクリアだった。


(……ああ、これ)


 終わりだ。理解した瞬間。


「トドメだ」


 ロブーの声。

 鉄球が、視界いっぱいに広がる。


 避けられない。

 動けない。

 防げない。


(……クソ)


 もっと、やれたはずだった。


 判断、ミスった。


 イベルタに任せるべきだった。

 なのに、突っ込んだ。

 カッコつけて。


(……ダセぇな、俺)


 最後に、そんなことを思った。


 意識が、弾ける。何も、感じない。

 音も、光も、全部消えた。


 沈黙。


 森の中。砕けた氷と、潰れた地面の中心に。

 もう、動かない身体があった。


 R.I.P

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