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R.I.P.末期ギャン ―異世界転生―  作者: 黒瀬雷牙
第三章 アダマンティア大陸 編

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第百一話 三大英雄の大魔導師は、この大陸でも語り継がれていた

 食事を終えた俺達は、ガルドに案内されながら王都ドゥルガンを歩いていた。


「せっかくだ!」


 ガルドが胸を張る。


「俺がこの街を案内してやる!」


「助かる」


 土地勘などあるはずもない。

 案内してくれる相手がいるのはありがたかった。


 鍛冶屋が立ち並ぶ職人街。

 巨大な鉱石市場。

 石造りの住宅街。


 どこを歩いても、ドワーフ達は活気に満ちていた。


 昨日は重苦しく感じた街も、昼間はまるで別の顔を見せている。


「ここなんかお気に入りだ!」


 ガルドに連れられ、俺達は長い石階段を登っていく。


 やがて視界が開けた。


「おお……」


 思わず声が漏れる。


 そこは王都全体を見渡せる展望台だった。


 石造りの街並み。

 立ち上る鍛冶場の煙。

 遠くには山々が連なり、その麓には無数の鉱山が口を開けている。


「綺麗ですね……」


 イベルタが感嘆の声を漏らした。


 その時だった。


「ギャンさん」


 隣にいたサトコが、遠くを指差す。


「あれ……」


 俺も視線を向ける。

 街から少し離れた場所に、巨大な円形の建造物が見えた。崩れかけてはいるが、その形には見覚えがあった。


「……コロッセオ、だよな?」


 俺が呟く。サトコも静かに頷いた。


「多分」


 ガルドは少しだけ表情を曇らせた。


「あれはブレイブリィだ」


「ブレイブリィ?」


「ああ」


 ガルドは腕を組み、遠くの建物を見つめる。


「昔、ドワーフの戦士達は、あそこで戦わされていた」


「試合か?」


「いや」


 ガルドは首を横に振る。


「殺し合いだ」


 その一言で空気が変わる。


「場合によっちゃ、魔獣と戦わされた戦士もいたらしい」


「そんなことをして、何になる?」


 ガルドは鼻で笑う。


「金だ」


 短い答えだった。


「貴族や商人どもが賭けのネタにしてやがった」


 その言葉に、俺は何も返せなかった。ガルドはしばらく黙っていたが、やがてぽつりと続ける。


「俺のじいちゃんも、あそこで死んだ」


 誰も言葉を発しない。ガルドはしばらくブレイブリィを見つめたまま、小さく笑った。だが、その笑みはどこか寂しかった。


 重い空気を振り払うように、イベルタが口を開いた。


「そういえばガルドさん」


「ん?」


「この大陸にも冒険者ギルドはあるのですか?」


 ガルドはきょとんとした後、豪快に笑った。


「もちろんだ、この街にもあるぞ!行ってみるか?」


「ぜひ」


 俺達はそのまま街を歩き、やがて大きな石造りの建物の前へ到着した。


 入口には見慣れた紋章。


「冒険者ギルドか」


 中へ入る。依頼書がびっしり貼られた掲示板。

 受付嬢、奥には酒場を兼ねた食堂、依頼を終えたらしい冒険者達が昼間から酒を飲んで騒いでいる。


 俺は思わず笑った。


「ガルディア大陸で見てきた冒険者ギルドとほとんど同じだな」


「そうですね」


 イベルタも安心したように頷く。


「少し心配していましたが……」


「ん?」


「通貨です」


 受付の料金表を見ながら言う。


「どうやら、この大陸でもゴールドが使えるようですね」


「そういや、違う通貨の大陸なんてあるのか?」


「あるそうですよ」


 イベルタは頷く。


「私の父がルミナス様から聞いたそうです。エルフはゴールドを使わない、と」


「へぇ」


 世界は広い。同じ異世界でも文化は様々らしい。


 するとガルドが懐かしそうに呟いた。


「ルミナス・クロロアーナか……」


 俺は振り向く。


「知ってるのか?」


「当たり前だ」


 ガルドは腕を組んだ。


「お前らのいるガルディア大陸の三大英雄の一人、エルフの大魔導師だろ?この大陸でも英雄として語り継がれている」


「え?」


 俺とイベルタは同時に声を上げた。


「そうなのか?」


「ああ」


 ガルドは静かに頷く。


「ルミナス様は何をされたのですか?」


 イベルタが尋ねる。ガルドは少し笑った。


「さっき見ただろ?ブレイブリィだ」


 あの巨大な円形闘技場。


「あそこでは昔、戦士同士を殺し合わせていた。魔獣とも戦わせていた。全部、賭けの見世物だった」


 ガルドはゆっくり続ける。


「だが、それを終わらせたのがルミナス・クロロアーナだ。彼女は言ったそうだ」


 ――命を賭けなくても、人は熱狂できる。


 ガルドは少し笑う。


「そして、安全で簡素な力比べと、賭けの形を提案したらしい。その競技が今も残っている」


 俺は首を傾げた。


「何なんだ?」


 ガルドはにやりと笑う。


「腕相撲だ」


「……は?」


 あまりにも予想外だった。


「いやいや」


 俺は思わず吹き出す。


「そんなので盛り上がるのか?」


 ガルドは自信満々に胸を張った。


「盛り上がるぞ、ドワーフを舐めるな」


 その目は、本気だった。

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