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R.I.P.末期ギャン ―異世界転生―  作者: 黒瀬雷牙
第三章 アダマンティア大陸 編

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第百話 ドワーフ達はこんなものを日常的に食べているらしい

 訓練を終えた俺達は、ガルドに連れられて王都ドゥルガンの街へ出た。


「まずは飯だ!」


 ガルドは腹を叩きながら豪快に笑う。


「腹が減っては何もできねぇ!」


「それには賛成だ」


 朝から何も食べていないし、二日酔いも少し落ち着いてきたところだ。


 石畳の大通りを歩く。


 道行くドワーフ達は皆忙しそうだった。


 鎚を担ぐ者、荷車を引く者、鉱石を積んだ馬車。


 鍛冶屋からは絶え間なく金属を打つ音が響いてくる。王都というより、巨大な工房だ。


「活気がありますね」


 イベルタが周囲を見回す。


「昨日は暗く見えましたが……」


「仕事中だからな!」


 ガルドが笑う。


「酒飲んでる時以外は、みんな働き者なんだ!」


「飲んでる時以外は、か」


 なんともドワーフらしい。しばらく歩くと、ガルドが一軒の店の前で立ち止まった。


「ここだ!」


 木製の看板。店内からは笑い声と肉の焼ける香ばしい匂いが漂ってくる。


 どうやら大衆食堂らしい。


 俺は思わず笑う。


「いいな」


 昨日バルミナムで泊まった高級ホテルの豪華な食事も悪くはなかった。


 だが、俺はこういう店の方が性に合っている。賑やかで、気取っていなくて、酒臭くて。


 それくらいが落ち着く。


「おう、親父!」


 ガルドが店へ入るなり大声を張り上げた。


「いつもの!四人前!」


「おう!」


 店の奥から威勢のいい返事が飛んでくる。

 注文は一瞬で終わった。


「あの……」


 イベルタがおずおずと口を開く。


「私達、この大陸の通貨を持っていません。所持金はゴールドだけですが……使えるのでしょうか?」


 少し心配そうな表情だった。


 ガルドは豪快に笑う。


「がははは!」


 腹を抱えるほど笑った後、親指で自分を指した。


「心配すんな!今日は俺の奢りだ!」


「え?」


「昨日は散々楽しませてもらったからな!」


 酒豪のサトコを思い出したのか、店の客達まで笑い始める。


「あの姉ちゃんは化け物だったな!」


「樽ごと飲むかと思ったぜ!」


「また連れて来いよ!」


 サトコは首を傾げる。


「そんなに飲んでない」


「十分飲んでる」


 俺とイベルタの声が揃った。

 ガルドはさらに笑う。


「遠慮なんかするな!俺達ドワーフは、一度仲間と認めた相手には腹いっぱい食わせる!」


「……ありがとな」


 俺がそう言うと、ガルドは照れ臭そうに鼻を鳴らした。


「礼なんざ、食ってから言え!」


 やがて、厨房の奥から香ばしい匂いと共に料理が運ばれてきた。


 山のように盛られた骨付き肉。分厚く切られた肉塊からは肉汁が溢れ、香辛料の香りが食欲を刺激する。


 実に豪快だった。


「これが……」


 俺は思わず呟く。


「ドワーフの飯か」


 肉は柔らかく、噛むたびに肉汁が溢れる。

 香辛料も効いていて、思わず飯が進む味だった。


「うまっ!」


 俺は骨付き肉にかぶりつく。


「これはうまいな!」


「ええ、とても美味しいです」


 イベルタも笑顔で頷いた。ドワーフ達はこんなものを日常的に食べているらしい。


 羨ましい限りだ。


 そして十分後。


「ふぅ……」


 俺は腹をさすった。


「もう無理だ」


「私もです……」


 イベルタも両手を合わせる。


「ごちそうさまでした」


 二人とも満腹だった。

 だが、向かいの席では。


「……」


 サトコだけが黙々と食べ続けていた。


 一皿。

 二皿。

 三皿。


 まだ止まらない。

 俺は呆れたように眺める。


「よく入るな」


 するとサトコは肉を頬張ったまま、小さく呟いた。


「私は魔人化しているので、お腹は減りません」


「ん?」


「食べなくても死にません」


 さらっと、とんでもないことを言う。


「だから食事は必要ないです」


 そう言った直後、また骨付き肉にかぶりついた。


「でも」


 サトコが少しだけ表情を柔らかくする。


「こうやって皆さんで食事をするのは、楽しいですね」


 そう言いながら、四皿目を平らげる。

 俺は思わず突っ込んだ。


「お前、その体のどこに入るんだよ……」


「え?」


 サトコは首を傾げる。


「ああ、食べた分は魔力に変わります」


「便利な体だなおい」


 思わず本音が漏れた。イベルタも感心したようにサトコを見る。


「羨ましいですね……」


 ぽつりと呟いた。


「私も魔人化しようかしら」


 するとサトコは首を横に振る。


「残念ながら」


 相変わらず無表情のまま答えた。


「魔人化できるのは、転生者だけみたいです」


「そうなの?」


「はい」


 サトコは静かに頷く。


「イベルタさんは転生者ではないので、なれません」


「残念です……」


 イベルタは本気で肩を落とした。

 俺は苦笑する。


「諦めろ」


「食費が浮くと思ったのですが……」


「そこかよ」


 思わず笑ってしまった。

 ガルドも腹を抱えて笑う。


「がはははは!」


「面白ぇ連中だなお前ら!」


 店中に笑い声が響く。


 気付けば周りのドワーフ達まで釣られて笑っていた。俺達はいつの間にか、この街に溶け込み始めていた。

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