不肖の弟子
「ッ!?」
「カナさん! もう限界です! 降りてください!」
人型兵器の腰にかじり付き、何とか踏ん張っていたカナだが、さすがに相手も痺れを切らしたらしい。
“振り落とせないなら押し潰してしまえ!”とばかりに、近くの柱へ突進し出したのだ。
このままでは、柱と人型兵器に挟まれてしまうだろう。
だから、そうなる前にと、ラックが大きく手を振って合図する。
何があっても自分が受け止めるという意思表示だ。
「……わかへはお!(任せたぞ!)」
ラックの覚悟を信じたカナは、全身の力を抜き、重力に身を任せる。
それに気付いていないのか、それとも勢いが付いて止まれないのか、人型兵器は、そのまま柱に向かっていく。
それを横目に見流して、カナの落下予測地点へと駆けるラック。
そして、今回は頭から飛び込む必要もなく、余裕を持ってカナを抱き止めたのだった。
「お帰りなさい。こうして抱えてみると、カナさんって思った以上に軽いんですね」
「ハッ、スライム相手にビビってた貧弱野郎が言うようになったな。……それはそうと、俺様は麻痺の影響で、まだ動けねぇ。取り敢えず適当な柱に避難すんぞ」
「まぁ、運ぶのは僕なんですけどね……」
そうして、最寄りの柱に身を潜める二人。
しかし、標的を見失ったことで人型兵器が再び柱を破壊して回る。
二人の隠れる柱が折られる度に避難場所を移していくものの、一本、また一本と柱が減っていき、ついに最後の一本となった。
「……やべぇな。まだ麻痺が残ってんぞ。かといって、ここに残ってたら突進を食らうし、表に出てもレーザーで穴を開けられるだけだ。……こりゃあ、詰んじまったか?」
「そんな!? ようやく、ここまで来たのに!」
「悪ぃな、ラック。俺様がドジ踏んじまったせいでよ。さんざん偉そうな事を言っといて、このザマじゃ合わす顔がねぇ」
「そんなことありません! 僕が、ここまで来られたのは、どう考えてもカナさんのお陰じゃないですか! ……だから、僕が証明して見せます! カナさんは何も間違ってなかったって!」
そう言って、カナを残し、一人で人型兵器の元に向かうラック。
その背中には、今までにない程の闘志が宿っていた。
「ちょ、待てよ!」
「カナさんは、そこで見てて下さい! 不肖の弟子が強敵相手に一矢報いる姿を!」
「……馬鹿野郎がっ!」
辛うじて動かせる顔をラックの方に向け、吐き捨てるカナ。
それは無謀な挑戦に身を投じたラックに対する悪態か、それとも動けない己に対する自虐か。
口にしたカナ本人にも、それは分からなかった。




