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幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)  作者: 雪月 桜
第1章 スタートダッシュ:CASEカナ

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ラックの奮闘

「ファイアボール!」


ラックが放った拳大の火の玉が、人型兵器の体勢を僅かに崩す。


その隙に急いで距離を詰め、人型兵器の足の間を通過して、敵の背後に回り込む。


「アクアスプラッシュ!」


そして、移動の間に詠唱を済ませておいた水属性の魔法を放ち、ダメージを与えると共に足元を濡らす。


金属製の床という事も相まって、ツルツルと滑りやすくなったため、人型兵器の動きが目に見えて鈍くなる。


ラックの狙い通り、バランスの制御に苦労している様子だ。


不安定な足場のせいで、こちらに振り向くのが遅れている。


そのチャンスを逃さず、再びラックが人型兵器の足元を駆け抜けた頃、ようやく人型兵器が体の向きを変える。


しかし、そのお陰で、またしてもラックが背後を取ることに成功した。


ラックが一人で戦闘を始めてから、既に何度も繰り返された展開だ。


「はぁ……はぁ……。よし、なんとか僕だけでも凌げてる……。このまま、カナさんが戻るまで時間を稼げれば……」


ちなみに、これまで散々、苦しんできた人型兵器のレーザー攻撃は、今のところ機能していない。


その挙動を観察していたラックが、2つの法則に気付いたのだ。


まず1つ目は、人型兵器の正面にのみ、レーザーが放たれるということ。


そして2つ目は、黄色いレーザーが反射する時、その射線上に人型兵器がいないことだ。


先程のラックの動きは、この2つを踏まえて考えた作戦によるものだった。


敵の背後と人型兵器の足元、2つの安全地帯を行き来して、レーザーを封じるという狙いだ。


その目論見は見事に功を奏し、ラックの命を繋いで来た。


とはいえ――、


「……さすがに、キツく……なってきたかな……」


たった一度のミスで瓦解する、薄氷を踏むような作戦だ。


その緊張感は、ラックの精神力をガリガリと削り、集中を乱していく。


そして、遂に――、


「ウィンドカッター……あっ!?」


長く続いていた均衡が崩れ去る。


MPの残量を把握し損ねたせいで、魔法が発動しなかったのだ。


また、濡れていた床も、すっかり乾いている頃合いだった。


つまり、人型兵器の動きを遮るものは何もない。


「しまっ――」


これまでの鬱憤を晴らすかのような、レーザーの嵐。


その全てがラック一人に向けて殺到する。


直撃すれば間違いなくHPが消し飛ぶだろう。


そうなれば、攻略は失敗。


強制的に街に戻され、伝説の商人の宝には届かない。


ベイドを見返すという目標も叶わないのだ。


「ラックゥゥゥ!」


未だ麻痺が抜けきらないカナが叫ぶ。


そちらをチラリと振り返り、ラックは諦めと共に笑みを浮かべた。


「カナさん……ごめんなさい」


そう呟いて、全てを受け入れるように手を広げ、前を見据える。


それでも、やっぱり怖くて、思わず目を閉じそうになったラック。


しかし――、


「…………えっ?」


ラックは見た。


天から降り注いだ光が、全てのレーザーを呑み込んでいく様を。

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