無謀の代償
「よっ、ほっ、はっ!」
「うわっ!? はわっ!? ほわっ!?」
壁や天井、そして床に反射する黄色いレーザーを次々と躱していくカナとラック。
どちらも回避に集中していて、反撃する余裕がないというのは共通しているが、ラックの場合は、その回避すら覚束ない様子だ。
時に頭を抱えてしゃがみ込み、時に大きく飛び跳ねて、時に石柱の影に滑り込む。
乱反射する黄色いレーザーも、石柱に当たれば霧散するので、際限なく数が増えていくという事はない。
しかし、それでも四方八方から襲い来るレーザーを避け続けるのは至難の技だった。
二人が手にした柱の残骸による防御も、徐々に追い付かなくなっている。
「ちっ、ホント面倒くせぇなぁ! 壁やら床やらが全部、金属になってんのは、このためだったって訳かよ!」
「なるほど! 土だとレーザーを反射できませんからね! 納得です!」
カナの言葉に、ヤケクソ気味なハイテンションで応じるラック。
先程とは違って、もはや落ち込んでいる余裕もないという事だろう。
しかし、戦闘の意欲が途切れないのは助かるが、これはこれで大丈夫か心配になるカナであった。
「こりゃあ、さっさとケリ付けねぇと、ラックの人格が歪みそうだぜ。……しゃあねぇ、そろそろ腹括るかっ!」
「えっ、ちょ、カナさん!?」
これまで回避に専念していたカナが、柱を大きく振り回しながら、人型兵器に突進して行く。
当然、青と黄色、2種類のレーザーが入り乱れて、嵐のようにカナを襲った。
「ハッハァ! オラオラ、どうした!? まだ一発も当たってねぇぞ!」
回転させた石柱で、それらを弾きながら、グイグイと距離を詰めていくカナ。
しかし、近づけば近づくほど敵の反撃も苛烈になり、少しずつペースが落ちていく。
加えて、捌き切れなかったレーザーが肩や腰を掠めて、カナのHPを削っている。
それでも一歩も引かず、前に進み続けたカナは、ついに人型兵器の足元まで辿り着いた。
「っしゃ! ここまで来りゃあ充分だ!」
その手に持った短い柱を投げ捨て、人型兵器の足にしがみつくカナ。
そこから僅かな凹凸に手を掛け、スイスイと登っていく。
しかし、人型兵器がレーザーで迎撃する様子はない。
恐らく、自傷行為を禁止するプログラムが設定されているのだろう。
だから、誤射を恐れてカナに攻撃することが出来ないのだ。
その代わりに、体を揺らしてカナを落とそうと試みるが、ピッタリと張り付くように密着したカナは微動だにしなかった。
「こうなっちまったら、俺様に手出しは出来ねぇだろ? そんじゃあ、まぁ、ゆっくりと―――ぐ、ぁっ!?」
カナが勝利を確信した次の瞬間、その体に稲妻が走った。




