宝の在処
「大ニュース! 大ニュースですよ! カナさん! みのりんさん!」
結局、これといったアイデアが浮かぶ事はなく、オープンカフェを後にした、みのりんとカナ。
そんな二人を商人ギルドで出迎えたラックは、なぜか満面の笑みを浮かべて興奮していた。
「あん? どうしたラック。そんな主人を見つけた子犬みたいなテンションで」
訝しげに応じるカナと、
「あー、その例え、分かりやすくて良いね~。それに可愛くてラックさんに似合ってるし」
無自覚に言葉のナイフを放つ、みのりん。
男にとって、【可愛い】は、褒め言葉にならない事が多いのだ。
「か、可愛いですか……。そうですか。僕は一応、男なんですが……」
少なくとも、ラックにとっては、あまり喜ばしい評価ではなかったようで、一転して落ち込んだ様子になる。
遠回しに‘‘男らしくない’’と言われた気分なのだろう。
心なしか、メガネも曇っているように見える。
「だったら、男らしく、堂々としてりゃあ良いんだよ。たとえ可愛いって褒められようが、胸を張れ。でないと、余計に舐められるぞ?」
シュッ、シュッとシャドーボクシングを披露しつつ、ラックに助言するカナ。
そんな主人のアドバイスに、子犬は感銘を受けたように頷いた。
「そ、そうですよね! カナさんみたいに堂々としてれば、男らしく見えますよね!」
「……おい、そりゃあ俺様が女らしくねぇって、ことか?」
「ひうっ!? す、すみません! そういう訳では!」
まさに、蛇に睨まれた蛙。
体をカチコチに固くして、声を震わせる、その姿は、いかにも不憫で同情を誘うものだ。
しかし、唯一、助け船を出せる立場の、みのりんは一人、呑気に笑うばかり。
「あははははっ。自分のこと俺様とか、言ってるくせに~。それに、女の子らしくて可愛いって褒めたら、それはそれで照れるでしょ?」
「う、うるせー! 俺様はカッコイイとカワイイを両立したパーフェクトヒーローを目指してんだよ! それと褒められるのは、ちょっと、くすぐったいだけで、照れてる訳じゃねー!」
誰が見ても照れていると分かる赤面顔で、説得力のない否定を繰り返すカナ。
そんなカナに、みのりんは、うんうんと頷いて見せる。
「はいはい、分かってる、分かってる♪」
「ぜってぇ分かってねぇ! だって、ニヤニヤしてるし! なんなら、デュエルで白黒つけるか、ああん!?」
「それは、またの機会にね~。それで、ラックさん。大ニュースって、言ってたけど何かあったの?」
荒ぶるカナを後ろから抱きしめ、適当にあやしつつ、ラックに話を促す、みのりん。
そこで、ようやく本題を思い出したのか、ラックがハッとしたリアクションを見せた。
「そ、そうでした! 商人ギルドで長年、謎とされてきた宝の在処が、ついに判明したんです!」
「宝……? って、なんの?」
「伝説の商人の遺産ですよ!」
以前、ラックが語った憧れの人物。
商人として大成功を収めただけでなく、第10階層を制覇して楽園に旅立ったと言われている、名も無き英雄。
そんな彼に繋がる手掛かりが発見されたのだと、ラックは興奮を抑えきれない様子で語った。




