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幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)  作者: 雪月 桜
第1章 スタートダッシュ:CASEネネ

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誰が為に

「ネネさん! すみません、そっち行きました!」


「大丈夫です! アオバちゃん、お願いします!」


「クーッ!」


トーシローの攻撃を掻い潜り、ネネに襲い掛かる黄金虎。


しかし、アオバが小規模な雷を生み出し、その動きを止める。


その隙にトーシローが距離を詰め、ノックバックの効果を持つハンマーのスキルで、黄金虎を突き飛ばし、ネネから引き離した。


「ナイスです、ネネさん、アオバさん!」


「トーシローさんこそ! 前衛の仕事ぶり、バッチリです!」


トーシローがメインで黄金虎と打ち合い、その間にネネが支援魔法の詠唱を済ませてサポート。


そして、アオバは、いざという時の護衛役。


黄金虎の機動力に掛かると、これでも危なっかしい場面が時々ある。


とはいえ基本的に、この布陣は上手く機能していた。


このまま上手くいけば、戦闘開始前にネネが感じた不安は杞憂で終わりそうだ。


「この調子で、最後まで集中を切らさずに行きましょう!」


「はい!」


「クーッ!」


既に戦闘が始まって10分ほど経過している。


1匹のモンスターが相手にしては、それなりに時間が掛かっている方だ。


というのも、主なダメージソースはトーシローの打撃なのだが、攻撃よりもネネに近寄らせない立ち回りに集中しているため、なかなか決定打が出せないのである。


それでも、着実に攻撃を重ねているので、そろそろ終わりが近い筈だった。


「今のうちに……」


トーシローが離れた位置で、黄金虎を相手しているうちに、ネネはパーティーの共有ストレージからMP回復薬を取り出し、服用する。


今回のクエストで、パーティーを組むに当たり、トーシローが提供してくれたものだ。


共有ストレージに入れたアイテムは、パーティーメンバーなら誰でも使用できる。


トーシローに教えられた機能だが、かなり便利だった。


とはいえ、数は多くなかったため、ほとんど消費してしまい、既に残りは1つだけ。


つまり、無駄遣いは出来ない。


「ぐあっ!?」


「トーシローさん!」


そう考えた矢先、トーシローが勢い良く、こちらに吹き飛ばされた。


HPゲージも、今までに無い勢いで、ごっそりと削られている。


慌てて駆け寄り、回復魔法を掛けつつ、口を開く。


「トーシローさん、何があったんてすか!?」


「あははっ……。ネネさん、申し訳ないです。あいつが突然オーラみたいなのを放って、それから急に強くなったもので。ピンチになって覚醒したんですかね?」


「そんな……」


こうして話している間にも、黄金虎が迫ってきたが、アオバが上手く引き付けてくれている。


それにしても、黄金虎に、そんな能力があったとは。


こんなことなら、気まずい事など脇において、みのりんに連絡を取り、黄金虎の情報を聞くべきだった。


そんな後悔がネネの心を締め付けるが、今となっては後の祭りだ。


それよりも、対策を考えなければならない。


「一か八か、アオバちゃんを護衛から外して、二人がかりで立ち向かえば、なんとかなりますか? どっちにしろ、もうすぐ私はMPが尽きますし、そうなれば足手まといですから……」 


「……それでも、厳しいと思います。それに、万が一ネネさんが倒れたら、クエストは失敗になる。その後で、僕があいつを倒しても意味が無いんですよ」


「そう、ですか……」


既に状況は八方塞がり……という訳ではない。


一つだけ逆転の切り札はある。


アオバこと青龍には、1日に1度だけ、MPを消費しないで使える大技(スキル)があるのだ。


今日はまだ1度も使っていないし、今の弱った黄金虎なら一撃で倒せる威力もある筈。


ただし、それは当然、きちんと当てられれば、の話。


ただでさえ高い黄金虎の機動力が、今は更に底上げされている。


この状態で上手く当てられるとは思えない。


かといって、トーシローに1人で引き付けてもらうのも無理がある。


状況を打開する手立てがあるのに、それを活かすことが出来ない。


その事実に、ネネは悔しくて歯噛みする。


おまけに、涙が溢れそうになるが、それだけは何とか堪えていた。


「トーシローさん、すみません。ここまで付き合って貰ったのに……」


「……大丈夫ですよっ。仲間のために頑張るという、ネネさんの熱意は見せて貰いましたから。今なら調薬も、きっと上手く行くはずです!」


「仲間の……ため」


「クーッ! クゥンッ!」


「っ!? アオバちゃん!」


二人が話している間も、アオバは必死に黄金虎を引き付けていた。


その姿は、ネネのために決して諦めないと、ネネにも諦めてほしくないと、そんな強い意思を感じさせる。


そうだ。


仲間がピンチの、こんな状況で役に立ちたくて、ネネは調薬を学ぶと決めたのだ。


『なのに……仲間が、まだ戦ってるのに……私が真っ先に諦めて、どうするんですかっ!?』


ネネは弱気になった自分が恥ずかしくて、情けなくて、心に込み上げる怒りを押さえきれない。


しかし、無意識に握り締めていた拳を、トーシローが両手で、そっと包み込んだ。


「ネネさん。僕はネネさんが、どんな道を選んでも協力します。ネネさんは、どうしたいですか?」


「私……諦めたくない……。諦めたくないです!」


ネネの言葉に、トーシローは、ふわりと微笑む。


「分かりました。任せて下さい。なーに、【終焉の魔帝:ドラグニル】に比べたら、黄金虎なんてスライムみたいなもんですよ! なんなら、足止めと言わず、僕一人で倒しても構わないんですよ?」


ネネの不安を紛らわすように、おどけて見せるトーシロー。


そんな彼に、なぜか、みのりんが重なって見えて、ネネは思わず吹き出した。


「ふふっ、あははははっ。トーシローさん、それは死亡フラグですよ。まるで、みのりんみたいです」 


「死亡フラグが何かは知りませんが、元気になって良かったです! それで、具体的に、どう動きましょう?」


「そうですね……。一つ、思い付いたことが」


ひとしきり笑って、リラックス出来たお陰か、ネネの頭には、とあるプランが浮かんでいた。


それをトーシローに伝え、意見を伺う。


「はい、多少の無茶は生じますけど、やれると思います。僕の役目は責任重大ですね?」


「すみません。トーシローさんしか、頼める人がいなくて」


「構いませんよ。僕にとっても、良い修行になります。では、そろそろ行きましょうか。いつまでもアオバさんに負担を押し付けていられません!」 


「はい! ……あの、トーシローさんっ」


「ん、なんですか?」


「勝ちましょうねっ」


そう言って、ネネは握った拳をそっと突き付ける。


トーシローも、すぐに、その意図を汲んだらしく、笑顔で拳を合わせた。


「もちろんです!」 


こうして、黄金虎との戦闘は、ついに最終局面を迎える。

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