脳筋薬師トーシロー
青龍の名前を全体で【アオ】から【アオバ】に変更しました。
「大丈夫ですって! お婆ちゃんが僕くらいの頃にはスライム感覚でプチプチ倒してたそうですから!」
「それは、絶対に嘘です! いえ、万が一、本当だったとしても、私たちには無理です! 即死します!」
「いえいえ、こういうのは結果よりも挑戦することが大事なんです! なーに、女神様の加護がありますから、HPが切れても街に戻るだけで済みますって!」
「いやいや、せめて、もう少しランクを落とさないと、挑戦にすらなりませんって! 即死だって言ってるじゃないですかぁ!」
ネネは非常識な人間に振り回される宿命でも背負っているのだろうか。
みのりんといい、トーシローといい、あと二人の友人からも、頻繁に無茶ぶりされている。
幸か不幸か、そのお陰で、言うべきことは言わないと、どこまでも事態が悪化すると学んでいるので、ネネは全力でブレーキを努めた。
「うーん、そうですねぇ。まぁ、それにドラグニルの住みかは遠いですし、今回は諦めましょう。では、【森の守護者:黄金虎】なんかは、どうでしょう? 黄金虎なら、この街の近くの森で見つかりますし、強さもドラグニルより、遥かに相手しやすいと思います」
「黄金虎……あのモンスターですか」
忘れるはずもない。
アオバが仲間になる切っ掛けとなったモンスター。
正直、良い思い出とは言いがたいし、危うくアオバを失う所だった。
色々な意味で因縁の相手だ。
「おや、ご存じです?」
「はい、前に襲われたことがあって、その時は、みのりんが一人で倒してくれて……」
「なるほど、では良い機会ですね。リベンジと行きましょう!」
「ところで、戦うのは良いんですけど、なぜ薬師の課題に戦闘を……?」
「強大な敵に立ち向かうことで、自分の願いを、より明確で強固なものにするんです。誰だって、どうでもいい目的のために困難に挑んだりはしないでしょう? 困難に挑み、達成するためのモチベーション。その根底には必ず強い願いがある筈です。敵という、分かりやすい脅威と向き合うことで、自分自身の気持ちとも向き合う。これが、我が家の流儀です!」
「随分と脳筋な薬師の家系ですね……。まぁ、理屈は分かりました。こちらは修行をお願いしてる立場ですし、必要な事に文句は言いません。どうか、よろしくお願いします!」
「こちらこそ! あっ、ちなみに、僕の戦闘職は重戦士、得物はハンマーです! 力こそパワー!」
「やっぱり、脳筋じゃないですかっ! ていうか、重戦士と薬師って求められるステータスが、ぜんぜん違うじゃないですかぁ!」
前衛を務める重戦士に必要なのは攻撃力や防御力、薬師に必要なのは技術力や運命力。
ネネが言うように、求められるステータスがバラけているため、かなり効率が悪い。
ちなみに、ネネの治癒師に必要なのは魔法力に加えて技術力と運命力なので、割りと被っており、ステータスを集中できるため、効率は良い。
「いやぁ、そのせいで、どっちも中途半端な結果しか出せなくて。知識と経験はあるのに、未だに見習い薬師なんですよねぇ」
照れたように笑うトーシローだが、ネネからすれば笑い事ではない。
「なんか猛烈に不安になってきました! みのりんが戻ってきてから行きましょうか?」
「あっ、これはネネさんの課題なので、黄金虎の討伐に参加できるのは僕とネネさんだけです」
「ですよね……。前途多難です……」
パートナーの力量に激しく不安を抱いたネネだが、トーシローの言うように、これは自分自身の課題。
強力な助っ人の力を借りて勝ったところで、何の意味もないのだと思い直し、攻略に向けて意識を切り替える。
その後、お互いのステータスや、スキル、魔法、称号、戦闘スタイルなどの情報を共有し、一時的なパーティーを組んだ二人は、黄金虎が出没する森へ向かった。
何のために薬師になるか、その答えを強く心に問いかけながら。




