表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)  作者: 雪月 桜
第1章 スタートダッシュ:CASEネネ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/80

生きて

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」


「クー……?」


「大丈夫ですっ。必ず、助けますから!」


極度の緊張から、無意識に浅い呼吸を繰り返しつつ、ネネは腕の中で不安げな声をあげる子龍を励ました。


そのまま走りながら、音声入力でメニュー画面を開き、時刻を確認すると、まだ、みのりんと別れてから10分ほどしか経っていない。


とはいえ、体感的には、もう1時間くらいは走っている気分だ。


肉体的な疲労はないものの、精神的な疲労は、どんどん蓄積していく。


そろそろ、どこかで、身を潜めつつ、休息を取りたいところだ。


「あっ、あれは!」


そんな時、ちょうど目立たない小さな洞穴を視線の先に発見する。


念のため、周囲に黄金虎や、他のモンスターが居ないか確認して、ネネは穴の中に足を踏み入れた。


「ふぅ……なんか、ひんやりして涼しいですね。少し湿気も高いみたいです。近くに川でも流れてるんでしょうか……」


「クーッ」


「あっ、待ってください!」


洞窟に入ると、子龍が腕の中から、するりと抜け出し、独りでに奥へ向かってしまう。


ネネは慌てて追いかけつつ、狭い穴の中が妙に明るいことを疑問に思っていた。


「わぁ……綺麗……」


やがて、最奥に辿り着き、子龍を捕まえたところで、その疑問は氷解する。


それまでの細く天井が低い道とは異なり、最奥部は直径5メートルほどの小部屋のようになっていた。


更に、頭上は完全に吹き抜けになっており、キラキラとした陽光が差し込んでいる。


家具の類いは見当たらないが、かつて誰かが、ここで生活していたのかもしれない。


「しばらく、お邪魔させて貰いましょう。……はぁ、みのりん、大丈夫かな」


壁に背を預け、足を伸ばして、ようやく一息ついた。


そうして落ち着きを取り戻すと、咄嗟に囮を引き受けた、みのりんの顔が頭に浮かぶ。


…………みのりんは、いつもそう。


自由奔放で、いつも全力で何かを楽しんで、時には周りも遠慮なく巻き込む。


なのに、いざという時は、常に自分が矢面に立って、誰かを守ろうとするのだ。


自分の身を省みることもなく。


「カッコイイなぁ」


「クー?」


「あなたも、そう思いませんか? みのりんは、いつも皆の中心だったんです。みのりんの周りには、いつも誰かが居て、いつも皆の憧れだった。それは、あんな事があった今も、変わりません」


答えが返ってこないと分かっていながら、いや、だからこそ、心の内を素直に溢すネネ。


そして、みのりんと自分、二人の友人が背負ったものを思い出す。


そして、それでも変わらなかった、みのりんの強さを想う。


そして——、


「私も、あんな風になりたいです。誰かに向かって優しく、笑顔で、力強く、手を差し伸べられるように」


いつか叶えたいと願う、胸に秘めた決意を、口にする。


「クー?」


「今はまだ、泣き虫で、引っ込み思案で、誰かの後を追いかけるばかりの私ですけど。いつか、誰かの隣を歩き、時には手を引けるように。あなたを助けるのは、きっと、その第一歩ですねっ」


「クーッ!」


鳴き声と共に、子龍が頬を擦り寄せる。


きっと意味が通じた訳では、ないのだろう。


ただ、ネネが笑顔を見せたことに反応しただけ。


それでも、なんだか背中を押された気がして、ネネは疲れが吹っ飛ぶのを感じた。


「グルアァァァ!」


「っ!?」


しかし、目の前に迫る脅威は、そんな決意を嘲笑うかのように、足音を響かせた。


今になって、ようやく、ネネは自分の失態に気付く。


ここは、一本道の穴の最奥。


つまり、逃げ場のない袋小路を隠れ家に選んだということに。


「クー……」


「……大丈夫。あなたは逃げられますから」


そう、逃げ場がないのは、ネネ一人。


空を飛べる子龍は、頭上の吹き抜けから外へ出られる。


きっと、そう簡単に追い付かれることはないだろう。


「いいですか? あなたは一人で逃げるんです。私は、もう駄目みたいですから。でも、必ず戻ってきます。だから、どうか、それまで生きて」


願いと共に、ネネは【ライト・ブースト】の呪文を唱える。


それは、ステータスを向上させる支援系の基礎魔法。


さっき、図書館で覚えたばかりの魔法で、効果もあまり高くはない。


それ以前に、モンスターに効くか、どうかも分からなかった。


それでも——、


「……クーッ!」


込めた想いは確かに届いたようだ。


子龍は高らかに声をあげると、腕の中から勢い良く飛び立った。


「生きて」


飛び去る子龍を見送りながら、もう一度だけ、小さく願いを呟いた。


やがて、やって来た黄金虎が、ネネを見て忌々しげに雄叫びを上げる。


「さぁ、たとえ1分でも、1秒でも、あの子が逃げる時間を稼いで見せますっ!」


巨大な獣と相対する恐怖で足が震える。


そんな自分の弱気を振り払うように、ネネは修練場で得た魔導書を開き、力の限り喉を振り絞った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ