【魔導銃の試練】1
「ど、どうしよう……」
訓練開始から約3分後。
修練場の床にがっくりと膝をつき、うなだれている、みのりんの姿があった。
その理由は、騎士人形が強すぎて、全く歯が立たなかったから…………という訳ではない。
むしろ、その逆で、騎士人形が弱すぎたのである。
なにせ、レベル1の駆け出し冒険者でもクリア可能な難易度に設定されている上、みのりんは無駄を極限まで削った極振りステータス構成。
加えて、みのりんには【全身全霊】の称号があり、MPを消費する攻撃の威力が倍になるというアドバンテージがある。
結果、特に何の苦労もなく全ての騎士人形を一撃で倒せてしまい、まともな訓練にならなかったのだ。
「うーん、ここには武器の扱いを勉強するために来たのに、これじゃあ練習にならないよぉ……」
これでは訓練自体は完了しても、修行にはならない。
取り敢えず、卒業の証として武器は手に入るはずなので、それを持って他所で修行しようかと、みのりんが候補地を心に浮かべていると、頭上から声がかかった。
「よくやったな! お前のような筋の良い教え子は久しぶりだ!」
「あ、ありがとうございます」
おそらくは、定型文のお世辞だろう。
そんな風に考えた、みのりんだったが、教官は予想外の言葉を放つ。
「そこで、だ! 追加の訓練に参加する気はないか!? これをクリア出来れば、期待の新人として称えられ、特別なご褒美が与えられるぞ!」
「特別な……ご褒美っ!」
目をキラリンッ! と輝かせて立ち上がる、みのりん。
いや本当は、ようやく本格的に修行が出来ることを喜んでいるだけ……べ、別に、ご褒美になんて期待してないんだからねっ!
……などと、心の中で言い訳を並べる、みのりん。
そのくせ、ご褒美について詳細な情報を求めるように熱い視線を向ける、みのりん。
「どうだ!? 受けるか!?」
しかし、空気を読まない教官は、みのりんの視線が気にならないらしい。
仕方がないので説明は諦め、ご褒美は自分の目で確かめることに。
「はいっ、受けます!」
「意気や良し! お前ならば、この試練も見事クリアできると信じているぞ!」
教官の声と共に、見慣れたウインドウが姿を現す。
ただし、ファンファーレの種類がいつもとは違った。
そしてウインドウには、こんな表示が。
『エクストラ・クエスト【魔導銃の試練】が発生しました!』
「エクストラ……クエスト? あー、なんか図書館で見たような気がする。たしか特別な条件を満たすと挑戦できるクエストだよね」
記憶の隅に引っ掛かった知識を引っ張りだし、先の訓練を簡単に終えたのが切っ掛けだろうと、納得する、みのりん。
そして、次の試練のために少しだけ準備を整えたところで、教官に話し掛け、クエストを開始する。
「それでは、追加訓練、始めっ!」
腹に響く教官の号令と共に、騎士人形が姿を現す。
しかし、先の訓練に出てきた者とは見た目からして異なり、銀色に輝く鎧を纏っていた。
ついでに、粗末な剣は磨き上げられた白銀の剣に変わっており、追加で盾も装備している。
明らかに、先程の騎士人形よりも強化されているようだ。
「だからって、私は負けない! ここで、きっちり修行して、ご褒美も貰って、万全の状態で皆をお出迎えするんだからっ!」
高らかな宣戦布告と共に、まずは様子見がてら消費MP15で一発、発砲する。(全身全霊による消費MP1.5倍込み)
キュィィィン! と、エネルギーが収束するようなSEが響き、放たれた弾丸は真っ直ぐに騎士人形の胸を撃ち抜いた。
「やったね! まずは1体!」
1体目の騎士人形は、その一撃であっけなく倒れ、すかさず2体目の騎士人形が登場する。
しかし、再び消費MP15で発砲するも、残念ながら今度は手に持った盾で弾かれてしまった。
「なら、これで、どう!?」
【韋駄天】の称号により、1.5倍に高められた機動力を駆使して、騎士人形を中心に円を描くように駆け回る。
そうして、動きの遅い騎士人形の背中を捉えた瞬間、みのりんは銃を抜いた。
しかし、1体目の騎士より耐久力が増しているのか、今度は一撃で仕留められない。
「くっ、ダメなの!?」
「狼狽えるな! 一撃で倒せなかった場合は、HPが全回復するだけで、失格になる訳ではない! 諦めずに何度でも挑戦するのだ!」
「……っ! サー、イェッサー!」
教官の助言と叱咤激励に背中を押され、みのりんは再び銃を構える。
ただし、今度は銃に付いたダイヤルを動かし、消費MPを30に変更した。
ちなみに先の訓練で騎士人形を10体、倒したことで、それなりに経験値が入っている。
そして、準備の時に調整を加えた、みのりんのステータスが、これだ。
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Name:みのりん
Level:5
Job:冒険者
HP 10/10
MP 410/410
攻撃力 1
耐久力 1
技術力 1
機動力 73
魔法力 1
運命力 1
☆獲得スキル
【不意射ち】【空中ジャンプ】
☆獲得称号
【奈落の住人】【韋駄天】【全身全霊】【蛮勇】
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レベル1の時に極振りしていた機動力の数値は、そのままに、レベルアップで得たステータスポイントを全てMPに割り振っている。
相変わらず、吹けば飛ぶような紙装甲だが、これにより高速移動しながらの射撃が可能になった。
加えて、【空中ジャンプ】を併用することで、三次元的な動きも組み込める。
みのりんが求めていたテンポの良い戦闘の実現に、また一歩、近づいているのだ。
「無駄弾を減らすために、一瞬の隙を狙って……撃つ!」
不規則な動きで、再び騎士人形の背後を取った、みのりんは先程の倍のMPを込めた弾丸を、ゼロ距離で撃ち込んだ。
さすがに、この威力は耐えられなかったのか、騎士人形はガタンッ! と音を立てて崩れ落ち、すぐに粒子となって消えていく。
「次は……っ!?」
それをのんびり見送る暇もなく、今度は3体の騎士人形が同時に姿を現した。
しかも、その内の1体は、これまでと違う武器を構えている。
——弓。
言うまでもなく、遠距離から攻撃できる武器である。
「——くっ!」
みのりんは、すぐさま弓兵の射線から逃れ、他の2体を盾にするような位置取りで逃げ回る。
しかし、前衛の2体は後ろに目でも付いているのか、弓兵の射線を確保するように完璧な連携を見せてきた。
森のモンスターを相手に鬼ごっこして培った、逃げ足と回避の心得がなければ、あっという間に、やられていただろう。
それでも、飛んでくる矢と騎士の追撃を避けるのが精一杯で、このままでは埒が明かない。
そこで、みのりんは出来れば温存したかった切り札を一度だけ切った。
「【空中ジャンプ】!」
これから出てくる騎士の耐久力が不明で、MPに限りが有る以上、移動にコストを掛けるのは出来るだけ避けたいところ。
しかし、現状を打破するためには必要と判断して、みのりんは宙を舞い、宙を蹴って、2体の騎士を飛び越えた。
そして、次の矢を取り出していた弓兵の胸元に銃を突き付け、躊躇いなく引き金を引く。
「よしっ!」
どうやら今度は耐久力の上昇は無いようで、弓兵は一発のエネルギー弾で事切れた。
そして、残る2体も、一発ずつの弾丸で倒しきった、みのりん。
試練は、なんとか折り返し地点を通り過ぎた。




