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龍鱗と暗黒騎士  作者: シライ トモリ
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辺境の地への準備

 マールを出る時に同じ方向に向かう荷馬車に頼み乗せてもらう事が出来たため今はのんびりガタゴトと揺られている。

 次の街への道中に盗賊が出るらしく、ひとりでは危険と踏んで徒歩での移動は避けることにしたのだ。


 あの盗賊の一味じゃなきゃいいけど。あいつらのアジトが何処にあるかは知らないが出来ればもう出逢いたくない。まだまだ厄介なやついそうだし。

 まあ今回はひとりじゃないのでそこまで怖くはないが。


 そう、今この荷馬車には冒険者ギルドで依頼を受けたBランクの冒険者パーティが乗っている。

 パーティのリーダーのニールさんはとても気さくな人で色々と教えてもらうことが出来た。


 この辺りに生息している魔物は俺のような初心者でもなんとか出来るが、辺境伯の地に近づくほど危険度が高くなるそうだ。

 徒歩で移動するならニールさん達のようなBランクの冒険者パーティと装備やアイテムを揃えて向かわないと命を落とす事もあるらしい。


 特に注意が必要なのが魔狼で、知能の高いボスが群れを統率していて気が付いた時には囲いこまれていて襲いかかって来られるなんて事もあるとか。


 ボスの特徴は他の魔狼より体が大きく、ひと目でわかるそうだ。そして威嚇と風属性のウインドスラッシュというスキルを持っているのだが、これが厄介で、威嚇で動けなくなっているところにウインドスラッシュを放ってくる。

 ウインドスラッシュは装備を切り裂くほどの威力があるので要注意とのことだ。


 こわっ。魔力感知したら絶対に避けて通ろう。


 ニールさん達に冒険者の話を聞いていると特に強敵に会うことなく次の街、イアスに無事到着できた。荷馬車のおじさんとニールさんたちとはここでお別れになる。


 この街で装備品を一式購入して、明日次の街へ向かう予定だ。お財布にはまだ余裕があるからね。ぐふふふふ。おや、また周囲の人々が変な目でこちらを見ている。ちきしょうっ、呪いめっ!


 武器店と防具店に行くためにエディからもらった仮面は外していたが着けることにしよう。


 カランカラン


「いらっしゃい」


 目的の店を見つけて入ると店主が出てきた。一瞬驚いたような表情をしたのは見逃さなかったぞ。……まあわからなくもないが、とりあえず今は許す。


 この店は武器と防具の両方を取り扱っているようなのでここで一式揃えられそうだ。


「カドムへ行きたいので装備品を一式買いたいのですが」


 カドムとはヴァルツ伯爵領にある街の名前だ。態々街の名前を出したのは辺境伯領に近づく程危険な魔物が多いというのもあるし、その先にある始祖の森への備えでもある。さすがに侵入禁止の森へ行くとは言えないからね。


 そして、この街で装備品を揃える理由はカドムに向かう道中にここほどの大きな街はなく、装備品を揃えるならこの街で済ませた方がいいとニールさん達から聞いていたからだ。


「ふむ、マントは良い物を持っているようだからそれ以外でいいか。剣も買い替えるかい?」


「今使っているこの剣ではだめでしょうか? 魔石を埋め込んだばかりなので……」


 別にケチりたい訳では無い。魔石を埋め込んだ剣を使うのを楽しみにしていたのだが実はまだ一度も使用していないのだよ。でも、身の安全のためには……という葛藤もあっての言葉がつい漏れた。


「そうだな、ヴァルツ伯爵領周辺の魔物相手では正直厳しいだろうな。魔石は別途作業料はかかるが付け替えることも可能だよ」


「ありがたいです。では装備品一式見繕って下さい」


 装備品と剣を何種類か装着して俺に合う物を選んで貰っただけあって重さも動きやすさも問題無い。金額は結構張ったが支払える範囲内ですんだ。


 装備品の微調整や魔石の付け替えも明日までに済ませてもらえる事になったので今日はもう宿をとって早く寝ることにしよう。


 翌朝、早くに目が覚めたので開店時間に昨日の店を訪ねた。


「おはようございます」


「いらっしゃい。防具も剣も出来てるよ」


 装備品を受け取り身に着けてみる。うん、昨日よりもしっくりくる。剣も握りやすいし、重過ぎず軽すぎずで振りやすい。


「着けてみた具合はどうだい?」


「すごく動きやすいです! ありがとうございました」


 俺の様子を見た店主は満足そうに頷いたあと厳しい顔をして注意を促す。


「だが、装備を一新したからと気を緩めないようにな。特に、ヴァルツ伯爵領へ向かうのならば決して油断はしてはいけないよ」


「はい、気を引き締めて向かいます」


「うむ。しかし、その仮面といい、ペンダントに指輪、マント、と君の装備品には特殊な物が多いね。それらを狙う輩もいるから気を付けるんだよ」


 え? 疑うわけじゃないけどこれ顔を隠すための仮面ってだけではないの?


「この仮面は友人に貰った物なのですが、特殊な物とは知りませんでした。次に会う時にきちんとお礼をしたいので、どういったものなのか教えてもらえませんか?」


「状態異常解除の魔法が付与された仮面だね。それとここに埋め込まれている魔石は状態異常による体へのダメージを和らげる効果があるようだな。上級魔法の付与されたアイテムはどこにでも売っているわけでもないし、かなり高価な品であることには違いないよ」


 ははは、なかなかのレアアイテムじゃないか。なんだろう汗が止まらない。時間はかかるけどなるべく早くエディに会いにラクス国へ行かないといけないな。


 驚きの情報を教えてもらった店主に礼を言い店を出た。そのまま街も出て近くの草原で剣とアンクレットに埋め込んだ魔石を使う練習をすることにした。ヴァルツ伯爵領に向かうために早く使いこなせるようにしておきたいのだ。


 剣に埋め込まれた魔石に魔力を注ぎ剣を振る。


 ふわっとかすかに霧のようなものが噴き出した。しばらく練習すると剣先数十センチにだが濃い霧が出せるようになった。


 よしよし、次はアンクレットだ。同じようにアンクレットの魔石に魔力を注ぎ地面を蹴る。


 ふぎゃっ!


 うまくバランスを取れなくて顔から地面にダイブしてしまった。なかなか難しい。数時間かけてバランスをとれるようになってきたのでこのまま街道を走って次の街へ向かうとしよう。


 普通に走るより多少早くは走れるようになったが時々地面にダイブしたので街に着いた頃には新品の防具もうっすら汚れてしまっていたのだった。




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