異変の広がり
ギルドを出て宿に向かって歩いているとシュレイアさんがやって来た。
なかなか戻ってこないので探しに出たら、外から街に帰って来た少年の様子がおかしかったという噂を耳にしたので心配していたらしい。
「やはりアラン君のことだったのか。僕が東の草原をすすめたばかりにこんなことになってしまってすまなかった。しかし呪いとは厄介な目にあったね。解除が遅れると冒険者を続けるのが難しくなる事もあるらしいんだ」
変異種のことはまだみんな知らない事でシュレイアさんが気にすることは無いので、ギルドで聞いた話を伝えた。
「呪いの件は運が悪かった、という事で気にしないで下さい。ヴィクターさんに見つけてもらえて呪いは解除して貰えましたので大丈夫です。ところでシュレイアさんにもうひとつお願いしたいことがあるのですが……」
状態異常について考えた。もしかしてかかった状況によって魔力には変化は表れないのかもしれない。
手っ取り早く試せそうなのは自然界に生えている草や木から受ける毒や、蜂や蛇のような魔物から攻撃で受ける毒と魔法で受ける毒あたりか。
そこでこの辺で試せそうなところは無いかギルドで訪ねてみたのだが、当然のように街の外での実験は反対された。そりゃそうだよな、呪いを受けたばかりなんだ。しかも呪いをどこで何から受けたのかもまだ判明していない。
けれど、意外なところで実験ができることになった。ギルドの施設内にはいろいろな種類の素材が保管されていてその中に植物や魔物の毒もあったのだ。
冒険者の解毒用に様々な毒が研究されていて、毒の種類ごとに解毒剤もセットで保管されているらしい。
俺は旅を続けるうえで毒について詳しく知っておきたいと頼み込んで後日実験を行わせてもらう許可を得た。
結果、魔法で受けた毒も、直接触れて受けた毒も魔力の色に変化は表れなかった。
実験を終えて受付に行くと俺のギルドカードが出来ていた。これがギルドカードか。首から掛ける認識票みたいなタイプだ。
ギルドカードには基本情報として冒険者の名前とランクが記入され、その他に職業やパーティ名なども記入できる。ランクはFから始まって最高がS。俺は名前とランクのFのみの表示だ。
ギルドではステータスを見ることも出来る。ギルド以外では神殿や王宮でも見れるが王宮は誰でもというわけではない。
あとはスキル取得でも見れる。ただしスキルで見れるのは自分のステータスのみで他人のステータスは見れない。せっかくだから見ておこうかな。
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アラン 人族 男 7才
冒険者 Fランク
HP 50/50
MP ***/***
魔法
―
スキル
鑑定Lv8
見習い召喚士Lv1
クリスタル爆弾Lv5
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うん、ちょっと理解できないところがある。
HPはまあまあだと思う。MPはエラーなのかな。魔法はまだ取得できていないから表示はない。
スキルについては持っているとは知らなかった。
鑑定のLv8って魔力の色を見るあれだよね。他に鑑定らしき事はしたことないから。Lvを上げれば状態異常も見えるようになるのかもしれないな。他にも何か見れるか後で試してみよう。
で、魔法が未取得なのに見習い召喚士とはどういうことかな。スキルにあることから召喚士は職業や魔法とも別なのかな。
そして最後の物騒なスキルもあれだよね。魔力が溜まると作ってたからたしかに結構な量を作ってた気はする。クリスタルを爆弾にするのは俺くらいだと思うから固有スキルなのかもしれないな。
いろいろともやもやするけどステータスは個人情報として扱われているから無闇に人に聞けないし。グラード団長なら信頼できるから王宮で先に鑑定してもらっておけばよかったよ。
ステータスを見てホールに戻ると気になる話を耳にした。先日聞いた魔物の変異種の話だったが、ここ数日でさらに何体か発見されたらしい。
そして辺境の伯爵領の街道では同じ魔物での被害が出ていて荷馬車の護衛や討伐の依頼が出たようだ。
どれどれ、とモノクルで被害の出ている辺境伯の領地の方角を調べると俺の目的地の周辺だった。
辺境伯だもんな、あり得る方角だよ。これはいよいよシュレイアさんに頼んだ魔石が必要になりそうだ。
宿に戻りシュレイアさんの部屋を訪ねると依頼した魔石が出来ていたとの事だった。
道中の危険度が増し始めたので出発を早めることにし、エディにも伝えに行くと急な別れにさみしそうだったが、呪いの事も正直に伝えるととても心配してくれた。
なのでせっかく友達になったのだからと連絡用の魔道具をプレゼントした。渾身のクリスタル爆弾はさすがに危険すぎるので渡せなかったのが残念だ。
翌朝早くに出発をしようと宿を出るとエディが待っていた。エディ達も変異種の話を聞き、仕入れも終わったので出立することにし、その前に俺の見送りをしてくれるとの事だった。お互いの無事を願い握手をして別れの言葉を交わす。
「じゃあ、またね」
「うん、またね。必ず僕の国にも来てね」
さよならは言わないぜ。また会おうと約束をするとエディはそうだ、と言って鞄から紙袋を取り出した。
「これを持って行って。きっと役に立つと思うから」
「ありがとう。開けてもいいかな」
エディはニコリと微笑んで頷いた。受け取った紙袋の中を覗くと仮面が入っていた。
えっと、俺これ着けるの?
正直かっこいい物ではなかった。だがエディを見るとはにかんだ笑顔でこちらを見ている。
うん、わかった。きっと一生懸命選んでくれたに違いない。俺はさっそく仮面を着けて改めてお礼を言い街をあとにした。
だれだ、俺を見て指をさして叫んでいるのは。これはエディが俺の為に選んでくれた宝物なんだぞ。
それに早起きは三文の徳と言うんだぜ。早く起きたおかげで君はこの仮面を拝めたんだ、よかっただろ?
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「アラン気に入ってくれたかな」
「エドワード様がご友人の為に一生懸命選んだものですから、きっと気に入ってくれたことでしょう」
「そっか、そうだとうれしいな。僕はこっちを着けて帰るよ」
エディはアランに贈る仮面を選ぶ際にどちらにするか迷った仮面の一つを自分用にすることにしていた。初めての友達とおそろいの物を持てることがうれしかったのだろうと、従者は微笑ましく思った。




