パーティ
「そっちへ行ったぞ!」
「あわわわわわ」
ドカン! と音を立てて頭上から降ってきた火の玉が地面で爆ぜる。
おいおい、めちゃくちゃだな。っと、そんなことを思っていると今度は横から飛んでくる。
だが、俺に当たる前に防御魔法が発動して防いでくれる。
「こいつ本っ当に素早いな! おい、アラン、ちゃんと引き付けておいてくれよ!」
無茶言うなよ、こいつをぎりぎりまで引き付けるのは難しいんだぞ。せめてそのでたらめな魔法とタイミングが合えば仕留められそうなんだが……。
ドシャシャシャ! 危なっ、今度は氷柱か。
「あわわわわわ」
ずっと「あわわわわわ」と言いながら俺の隣を走っているミケが防御魔法で飛んでくる魔法から守ってくれているが、危険なので離れたところで待機していてもらった方が俺としても安心なんだが。
ゴシャッ
ブヒヒヒヒーーッ!
おっと命中したようだな。ようやく倒れてくれた猪のような魔物、ボアに止めを刺すために剣を振りおろすと同時に俺のすぐ横から氷柱が飛んできてボアを串刺しにし、肝が冷えた。
俺まで死ぬかと思ったぞ。
「あわわわわ、ハルーーーーッ!」
「よし、討伐成功だな」
凍りつく俺と怒っているミケをよそにハルはニヒヒと笑っている。
だめだ。たった三日で連携が組めるとは思ってはいなかったがこいつはだめだ。でたらめすぎる。
______
話は三日前にさかのぼる。アルゴという街のギルドに寄った時に依頼を受けたのだ。依頼内容は村の近くに出没するボアの討伐。度々村が襲撃されて困っているという事だった。
ボアは動きが速いのでパーティを組んでの討伐推奨で、たまたま同じ依頼を受けようとしていたハルとミケとパーティを組んだのだ。
二人は幼馴染で冒険者ランクはD。冒険者になって三年目だと言っていた。ハルは攻撃魔法を得意としていて、ミケは防御魔法を得意としている。
だがミケが防御するのは主にでたらめに打ち出されるハルからの攻撃魔法の被害に遭いそうな対象物だとはその時は知らなかった。今回の対象物が俺だったわけだ。「君のことは必ず守ります」と言っていたが“魔物から”とは確かに言ってなかったな。
ボアは夜になると村に出没すると言うので、初日は様子を見るために村に泊まり込んだ。なるほど、畑を荒らしたり家畜小屋の壁に突撃したりと被害は大きかった。
翌日、ボアを誘い込むように柵に細工をし落とし穴を掘ったのだが、鼻が利くらしくみごとに避けられてしまった。だが警戒して引き返してくれたので被害は出なかった。
そして三日目の今夜、懲りもせずにボアはやって来た。苦戦したがなんとか討伐できてよかった。これで村の被害は収まる筈だ。俺たちは村長に報告に行くことにした。
「このたびは討伐ありがとうございました。ここひと月ほどボアによる被害が続き私どもも抵抗をしてみたのですが敵わなくてギルドに依頼を出したのです。こうも早く討伐してもらえるとは思ってもいませんでした。本当にありがとうございました」
たしかに厄介な相手だった。村人では撃退できなかったのはしかたなかったのだろう。
冒険者の登録をしてからこなしてきた依頼は薬草の収集だったり草原や森に居る魔物の素材集めだったので、こうして誰かのための依頼は初めてだった。
パーティを組んだのも初めてで討伐には苦戦したけれどこうして感謝されると受けてよかったと思う。
「うむ、では依頼を達成したので俺達は帰るとしよう。村長も安心してゆっくり休んでくれ」
「ハルが失礼な態度ですみません、では私たちはこれで失礼いたします」
ハルの尊大な態度の詫びをミケがフォローして退室の挨拶をする。このふたりはいつもこんな感じなのだろう事がうかがえ、ミケも苦労しているんだろうなと思う。
このまま街に戻りギルドで討伐の報告をしたらふたりともお別れだ。疲れた。早く休みたい。
「これから街に帰られるのですか? お疲れでしょうから今晩も村でお休みください。お部屋の用意はできています」
村長の厚意はありがたいのだが、あの討伐の様子を村人に見られていたかと思うと顔を合わせないうちに帰りたい。はたから見たら俺はボアに追い掛け回されていただけにしか見えなかっただろう。
「そうか、それなら休ませてもらうのはどうだ?」
あああぁぁぁ。ハルさーん帰るんだったよねぇ。
「アランもそれでいい? 正直私は疲れちゃったので村長さんのご厚意に甘えてお休みさせてもらえたら嬉しいです」
ミケ、疲れたよね。女の子に無理はさせられないよ。ここでの俺の選択は一つしかない。
「そっか、ふたりもそれでいいなら俺もそうさせてもらいたいかな」
と、いうわけで今晩はこのまま村に泊まることになり、ハルと俺が相部屋で、ミケはひとりの部屋を用意してもらった。
寝る前に確認しておきたいことがあり、ハルに最後の魔法は俺を狙っただろうと聞いたらその通りだと答えられた。
その方がボアに当てられる気がしたんだとさ。ま、結果それで成功したわけだがな。なんだか釈然としない。
翌朝朝食をごちそうになり、街へ戻ったのだが出立時にハルは村の子供たちから大人気だった。あのでたらめの魔法がとてもかっこよかったらしい。
だがいいかい、危ないので君たちは魔法をあんな風にぶっ放してはいけないよ。特に仲間にむけては絶対に放ってはいけない、絶対にな!
街に戻りギルドに報告して今回の報酬をもらったので、ここでハルとミケとはお別れだ。
「アラン、またどこかで会ったら一緒にパーティ組もうぜ」
「私もまた一緒にパーティ組みたいです。勿論ハルの魔法からは守るから安心してね」
「……あぁ、魔法で俺を狙わないでくれるならな」
「つれないなぁ、アハハハハハ」
正直ごめんだ。と思っているのが伝わったみたいだ。意外な事にハルは勘がいいらしい。
「アラン、ギルドに登録していればどこからでも連絡は取れるから何かあったらいつでも連絡してね。たった三日だったけれど、楽しかったよ」
「ハル、ミケありがとう。またな」
さて、次の街へ向かうとしますか。ハルもミケも元気でな。
アランは振り向くことなく行ってしまった。一緒にパーティ組んだのはたった三日だったけれど少しさみしい。こんなこと今までパーティ組んだ他の冒険者達には思ったことなかったし、ハルも少しさみしそう。
「なあミケ、俺、アランとは相性がいいと思うんだよ」
「そうだね、今まで組んだパーティの人達とは全然違ったね……。また会えるといいね」
「おう! さて、俺達も次の依頼でも受けに行くか。アイツの手がかりも見つかるかもしれないからな」
「そうだね、じゃんじゃん依頼受けようね! そしたらいつかまた会えるよ」
「おう!」




