↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍鱗と暗黒騎士  作者: シライ トモリ
21/46

箱の中身

 盗賊を拘束して安全地帯に戻ると使いの魔物はまだいた。


「ありがとう。このマントのおかげで助かったよ」


『主に伝えておこう』


「是非ともお願いします。それで、今回の試練の結果は?」


『うむ。少々詰めが甘いがよしとする』


 手厳しいな。かなりギリギリだったんだが……。


『此度のことで自分の力量を知ったであろうがそれでも今旅に出るのか?』


「自分の力不足はよく分かったよ。でも今しかないんだ」


 先ほどの盗賊との戦いで公爵家から持ち出したアイテムはすでに大量に使ってしまった。でも、今引き返したらもうチャンスはないかもしれない。


 なんだかんだで公爵家の嫡男だからね。家出防止用に監視が付けられるだろう。


『最後にひとつ忠告をしておくが、お前の持つその箱は術式の解除が出来ぬ今は開けぬことだ。もし敵わぬ相手に遭遇した時には使うも良いが同時にお前にも牙をむく。使う時は逃げることだ』


 わかっていたよ? 危険な物だとは。だが何だその物騒な忠告は。


「その時はこの箱は捨てるってこと?」


『頃合いを見て戻り回収するがよい。それ以外では手放してはならない』


「大事な物なんだな。そんな奴に出くわさないように願っておくよ」


『うむ。では結界を解くぞ』


 えっ、もう? せめて森から出るまで待って……はもらえないんですね。


 澄んでいた空気が淀み、森にたくさんの魔物の気配が戻ってきた。俺は改めて覚悟を決めて使いの魔物に別れの挨拶をした。


「じゃあ行って来るよ」


 ……って居ないし。


 森には魔物が戻って来たけれどあの賢い犬もいることだしライルは大丈夫だな、きっと。


 それにそろそろ騎士団が到着するだろう。俺は見つからないうちに森を出ないとな。


 まずはあの厄病ウサギの魔物の気配を探り回避しながら騎士団が居そうにない出口を目指していたのだが、出口が見えたところで俺を待ち構えている者が居た。


「なんでお前が……」


「決まっているだろう! お前にこの腕と指の礼をしに来てやったんだよ」


 グルルルルッ


 拘束して木に括ってきたはずの盗賊が3匹の魔狼を引き連れて現われた。しかも様子が先ほどまでと違う。こいつ薬か魔法使いやがったな。


 所謂バーサク状態だ。筋肉が盛り上がり傷口が開いて出血しているのに痛みを感じていないように見える。


 使いの魔物を少し恨む。だから森を出るまで待って欲しかったんだよ! そうすれば今頃は騎士団がしっかり捕縛していてくれただろうに。この盗賊の拘束を解いたのは結界が解けて戻って来たそこの魔狼だろうからな。


 詰んだ。


 バーサク状態の盗賊と3匹の魔狼相手に敵うはずがない。


 ―― もし敵わぬ相手に遭遇した時には……


 ああ、もうその時が来たようですよ。

 俺はそっと懐から箱を取り出した。


「ずいぶんと良いお宝を持っているようだな。それで命乞いをするつもりか?」


 そうだろう、そうだろう。この箱は見た目から高価そうだからな。


「お目が高い」


「開けて中身を見せろ」


 いいのか? 知らないぞ?


 俺は箱を開け盗賊に差し出すようにして地面に置いてすぐさま逃走した。


 後ろから魔狼に俺を追うように指示する声が聞こえたがとにかく必死で走った。後方で魔狼の咆哮が聞こえるが振り返らない。


 だが魔狼の足に敵うはずもなく追いつかれる。口を開けて喰いつこうとして来た魔狼のお口の中に予備で魔力を込めておいたクリスタルを投げ込み回避し、一匹倒すことに成功する。


 続けて飛びついて来た魔狼は剣で迎え撃つ。追ってきたのは二匹だったようで助かった。一匹倒したのでもう一匹に苦戦することもない。


 二匹目の魔狼を倒したところで、遠くでおぞましい咆哮と盗賊の叫び声が聞こえて得体の知れない恐怖を感じた。


 間もなくして三匹目の魔狼が箱を咥えて現れた。


 おい、それ何で持って来たんだ!? そいつはやばい代物なんだよ!


 何かがこちらに向かってくる気配がする。


 ―― お前にも牙をむく。使う時は逃げることだ


 やばい、やばい、やばい! ここに居てはいけない!!


 逃げようとする俺の左腕を魔狼の鋭い爪が抉り激痛が走る。こいつを放っておくのも厄介だ。

 なんとか剣を構え魔狼に切りかかる。魔狼は箱を咥えているので前足の攻撃に注意すればいいだけだ。


 しかし、左腕の傷が深く剣を振るう力が弱まったのもありなかなか倒しきれない。魔狼が木を蹴り勢いをつけて飛び掛かって来たとき、開いたまま咥えられていた箱の中から一枚の大きな鱗が落ちた。


 ゾクリとする。鱗は浄化前の魔石と同じ禍々しいモヤに覆われていて、そしてそのモヤは俺が逃げてきた方向に伸びている。


 まさかとは思うけれど、あれが何かを呼び寄せている?


 その考えが正しいというようにモヤの伸びた先から咆哮が聞こえる。だが、そこに人の声も混ざって聞えた。きっと盗賊を追って騎士団が駆けつけたんだ。


 その声の中から耳を疑う言葉が聞こえて思考が止まりそうになる。


 “ファイアドラゴン”


 けれど今はこの魔狼を倒さなければいけないと意識を戻し、魔狼に剣を突き刺した。ようやく仕留めたようだ。だがよろけた魔狼の足元には鱗が落ちている。あっ、と思った時には踏みつぶされていたのだが、鱗が割れるとモヤが消えたのだった。


 俺が魔狼を倒すのと同時に騎士団の方もファイアドラゴンを倒したようで歓声が上がっていた。討伐隊が組まれるクラスの中型ドラゴンをこの短時間で倒しただなんて王宮騎士団は流石だとしか言えない。


 このあと騎士団は今倒したドラゴンが向かっていたこちらにやって来る可能性もあるためここから立ち去ったほうがよさそうだ。


 俺は箱と割れた鱗を回収して急いでその場を離れた。


 しかし家を出て1日も経たないうちからかなり疲弊した。まあ、今回のは使いの魔物からの試練だったのだから、今後はそうそうここまでの相手とは遭遇しないと思うが。


 結局マンガの中のアルバートと同じく盗賊に遭遇してしまったわけだけれど、あちらもあの魔物からの試練だったのかな。アルバートはどこで箱の中身の事に気が付いたのだろう? 王宮で見つけた時にはもう知っていたようだったけど。


 盗賊と遭遇したのは物語どおりなのだろうか。わずかだけれど未来を変える方向に向かっていると思えていたのに、物語の修正力が働いているとかはなしでお願いします。


 この旅で記憶を失うという事態だけはなんとしても避けてやるんだからな!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。