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龍鱗と暗黒騎士  作者: シライ トモリ
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決着

残酷な描写があります。

 魔道具からの魔法攻撃を耐えながらクリスタルに魔力を予定の8割くらい注ぐことは出来たが、そろそろ向こうの魔道具も残り少なくなってきたようだ。


 再び鉈での直接攻撃を繰り出される前にせめてもう少し注ぎ込みたい。


「ふん、この程度は痛くもないか。なら威力をあげてあげないとなぁっ!」


 痛えよ! 親切ぶって威力上げてんじゃねえ!!


 予想通り魔道具が少なくなってきたんだろう。時間稼ぎにしてもこうも食らいっぱなしだと反撃に出れなくなる。


 マントを掴んでいる左手もクリスタルを握る右手ももう力が入らないし、全方向から魔法を撃ち込まれて全身痛くてたまらない。


 左右の木の上に魔力が膨らんでいくのがわかった。これやばいな。


 一旦クリスタルをしまい回復用の薬草を取り出しかじると全身に力が戻ってくる。この薬草は苦さが半端ない代わりに中級クラスの回復液と同等の効果がある。


 クリスタルを取り出し魔力を注ぎながら攻撃をぎりぎりで回避しては受けたようによろけて逃げ回る。人の動きと違って一定の方向にのみ飛んでくるので慣れてくれば避けやすい。


「おっと、さすがに今度は効いてるようだな。だが、魔法もそろそろ飽きて来ただろう?」


 きたか。こっちも用意はいいぜ。


 目くばせをして盗賊が切りかかって来るタイミングで呼ぶ。


「来いっ!」


「威勢がいいっ……グアアッ、ハァッ!」


 俺が呼んだのは犬だよ。夜の森の視界が悪い中、背後から近寄る黒い犬は見えにくいよなあ?


 しかも俺の相棒は良いところを噛みついてくれた。俺は勢いのついたまま向かってくる盗賊に突進して、噛みついていた犬が振りほどかれた腕にナイフを突き刺した。


 正確には犬は振りほどかれるふりをして、そのタイミングでそこにナイフに見せかけたクリスタルを突き刺した。俺の力だけでは盗賊の装備の上からクリスタルを突き刺すなんてできなかったから相棒はいい働きをしてくれた。


 出会って数時間なのに目くばせだけで俺の心意を読み取ってくれるとはさすがだぜ相棒! 短時間でずいぶん成長したようにも見えたけどおかげで装備を大きく食い破ってもらえたんだから助かったよ。


「正当防衛だ」


「この程度の傷で俺が怯むと思ったのか?」


 この男にとっては腕を犬に噛みつかれたり小さなナイフが刺さった程度は大したダメージではないようだ。


 だが、腕に刺さったナイフに見せかけたクリスタルを抜こうとしたので忠告しておいてやろう。クリスタルには亀裂が走り始めている。


「触らない方がいいんじゃないかな?」


 俺が忠告するのと男がクリスタルを握るのと同時のタイミングでクリスタルが弾けた。


 俺は魔力量が多いからクリスタルや魔石に注ぎ続けると破裂させてしまう。


 グラード団長は危機に陥った時は、それを利用して簡易爆弾を作り使用する事を許可すると言っていた。


 今がその時だった。


 クリスタルが弾けて利き腕とクリスタルに触れた指を吹き飛ばされた男は歯を食いしばり怒りの表情でこちらを睨みつけていたが、クリスタルをもう一つ見せると観念したのか大人しくなり「好きにしろ」とだけつぶやいた。


 盗賊の止血をして縄で木に縛り付け、犬に見張るように言いつけライルの元へ向かった。


 ライルだってまだ俺と大して変わらない子供だ。出来ることならば最終手段であるあれは見せたくなかった。予想以上の威力だったのだ。


「怖い思いをさせてごめん」


「いや、謝らなくていいよ。本当はあいつらについて行って頭を捕まえて盗賊団を壊滅させたかったんだ。でも、俺は誰よりもあいつを許せないからこうして捕まえられただけでも今はいい」


「騎士団が来てもあいつは何も話さないだろう。ごめん」


「いいんだって、あいつもかなり強いんだから捕まえられただけで被害が抑えられるはずだよ。父さんの仇を捕まえられたんだ、それだけでもいいんだ」


 ライルだって本当は我慢しているはずだ。自分に言い聞かせているんだろう。


「それに、」


 グルルルル、ワン! ワン!


 なんだ!?


 突然犬が吠えだしたので、意識を周囲に集中させると"ガチャリ"、と魔道具が発動する音がした。


「死ねぇ!!!」


 あいつ! まだ余力を残していたのか!


 とんでもない威力の炎が向かって来る!! しかも単発ではなく放射され続けるタイプのようだ。こんなの耐えきれるかわからない。


 だが今はそんな心配をしている場合ではないとライルを庇おうとしたが逆に庇うように俺の前に立たれた。


「だめだ! 下がるんだ!」


「大丈夫だよ。俺には効かない」


「今度は俺が守る番だ」と、ライルは俺のほうを振り向きニヤリと笑った。


 盗賊は炎に包まれている俺たちを見て大声で笑っている。だが俺はこのとてつもない威力の炎に焼かれていない事を不思議に思って放心していた。


「俺の家系は防御魔法に特化しているんだ。魔法を学んでいない子供でも自然と発動する。だから子供の時から扱い方を親から学ぶんだ。しっかり練習をすればこうして自分以外も守ることができるようになる」


 なるほど。だから助けに行った時も見た目の割に軽傷だったわけか。


「そして、俺がはめている指輪は特殊な補助魔法が付与されていて、魔法の威力を高め、魔力消費はかなり抑えてくれる。だから安心して。あっちの魔道具の魔法が尽きるまでちゃんと耐えられるからね」


「あ、ああ。分かった」


 凄い一族が居たものだ。


「この指輪を盗賊の頭との取引に使おうと思っていたんだ。俺達が無事だと知ったらあいつは悔しがるだろうな」


「あいつはその指輪のことを知ってたのか?」


「特別な魔法が込められた指輪で、アジトに連れて行ってくれたらあいつらの頭にくれてやってもいいって言ってついて来たからな。この指輪の効果についてはこの後知るだろう」


「そんな特殊な指輪を取り引きに持って行ったら確実に奪われるぞ」


「大丈夫だよ。これは俺たちの家系の契約した者にしか使えないんだ。あのペンダントもね」


 そうなのか、ならたとえ奪われても取り返せるな。ライルの防御魔法は特殊だからな。王宮魔法師団にだって入団出来るだろうし、エリオットのパーティーにだって入れるだろう。いや、むしろ入って下さいとお願いしたい。


 ライルは力を理解しているし悪用はしないだろう。由緒正しい一族だと感じた。


 あれ? 防御魔法に特化した一族なのになんでライルの父親は殺されてしまったんだ?


「でも、俺の家系のことも指輪とペンダントの事も本当は話してはいけないって言われてた。悪い奴に利用されると悪いからなんだって。だから父さんは母さんと俺を守って……」


 顔に出てたかな、辛い事を話させてしまった。


「ライルの家系の事は伏せたままにして、その指輪は俺に奪われた事にして隠して持っておくんだ」


「一族の事は話すつもりはないけど、指輪の事はあいつら以外にはシラを切ればいいんじゃない?」


「ついて来るための交渉に使ったんだろう? 何らかの手段でその指輪の特殊効果が盗賊や他人に知られたら危ない。俺なら旅人だしあいつら以外に見られていないから探しようがないだろう」


 魔法攻撃が止んだあと、無事な俺達を見て驚き睨み付けている盗賊を気絶させ、俺は騎士団を呼びに行くからライルにはここで盗賊たちを見張るようにと頼む。


 相棒の犬にはライルが無事街に帰れるように付き添ってくれと頼み、気絶させたことで取り返したペンダントをライルに渡すと魔物の待つ安全地帯に戻るために別れを告げた。


 連絡用の魔道具を飛ばしたから直ぐに騎士団が駆け付けてくれるだろう。




 

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