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龍鱗と暗黒騎士  作者: シライ トモリ
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出会い

 魔物からもらったマントを羽織り、森の中の気配を探る。魔物の気配はない。でも、人の気配を複数人感じる。

 まずは人の気配のある方へ向かうことにした。


 あんなに感じていた魔物の気配が一切ないと言うのは不思議だ。森の中は静まり返っていて風の音も聞えない。聞こえるのは足元の草と落ち葉を踏む自分の足音、そしてだんだん聞こえてくる人の話し声。


 少し距離をおいて覗き見る。焚火を囲む三人の男達と、男達から少し離れた場所に蹲る子供と黒い犬が見えた。気付かれないぎりぎりの距離を移動しながら辺りを探ったが他には誰もいないようだ。


 男たちは人攫いと言うよりは盗賊のように見える。数年前から村々を襲う盗賊がいて襲われた村には生存者がいなく、かなりの被害が出ているが、手口もアジトもわからなくて駐屯地に騎士を増員して警戒を強めていると聞いている。


 まさかあいつらが?


 人が立ち入らなくなって魔物の増えたナイアドの森に居る時点でそこそこに強いのだろう。


 だが、盗賊のアジトはここではないようだ。先週まで騎士団と魔法師団が調査をしていたのだから、ここに来たのはそれ以降となるし、人数も少ない。


 少しづつ距離を縮めて近づいて気が付いたのだが、蹲っている子供は手を後ろで縛られている。そしてその子も寄り添っている犬も傷ついて弱っているようだ。どうにかして助け出さないといけない。


 相手は三人、魔道具で煙幕を張って子供と犬を助け出したいところだが怪我の具合がわからない。立ち上がれるのだろうか。


 そして三人とはいえ男達の強さがわからないので下手に動くのは危険だ。


 仕掛ける前に煙幕を張った際の視界の悪い中で見えにくい位置に罠を張っていく。煙幕は騎士団の遠征訓練で使ったことがあるので視界の悪さがどのくらいの物かは知っている。


 煙幕は明るい昼間でも一メートル先も見えない濃さだ。夜の森の中は暗闇だしそこに煙幕を焚けば簡単に見つけることは出来ない。こちらは退路は確保しているのであるていどの距離は稼げるだろう。


 男達は酒をかなり飲んでいる。できれば一人二人眠ってくれたらいいのだけれどとタイミングを計っていると、男達の不快な会話が聞こえてきた。



『しかし、あのガキはいちいち腹が立つな。用が済んだらさっさと殺しちまおうぜ』


『あいつ、あの村の男に似てないか? 麻袋ひとつだけよこして帰ってくれって命乞いした男がいただろ?』


『ああ、お前が殺してそのペンダントを奪った男か?』


 やはり盗賊だったか、酷いことを……。


『……今なんて言ったぁ!!』


 蹲っていた子供が立ち上がり殺気を放って叫んだ。

 グルルルッ! と犬は牙を剥き唸り声をあげ盗賊たちを睨みつけている。


『うるせえ! そんなに死にてえなら今すぐ殺してやるよ!!』


 盗賊が鉈を持って立ち上がった。


 だめだ! 手を縛られ怪我をしているのだ、男の言葉通り殺されてしまうだけだ!


 もう隠れている場合じゃない。だが出来るだけ落ち着いて行動しないと失敗してしまう。

 俺は一息おいてできるだけ感情を抑えて声を発した。


「そこまでだ」


 そして盗賊と子供が気を取られた隙に煙幕の出る魔道具を投げて、子供の元へ駆け寄り縄を切り言い聞かせるように声を掛ける。


「落ち着いて、聞いて。僕の名前はアルバート。あの男たちの仲間ではない。ひとまずここから離れるよ。あの男達を一人ずつ引き離すんだ」


「この煙の中を?」


「うん、僕について来て。罠を仕掛けてあるから離れないで」


 きみもね、と犬にも声を掛けると理解したのかワン! と返事をした。


 男たちは焚火の中から木を引き抜き松明のようにしながら俺達を探して追って来る。


 わざと音を立てながら逃げて罠へと誘導して三人が罠に近づいたタイミングで罠用の魔道具を発動させる。


 ポチッとな。


「「「うおー!! なんだこれー」」」


 狭いところへ誘き寄せ、ゲームや漫画とかで見た事のある巨大な鉄球をお見舞してやった。


 何も無いところから突然物体を出現させられる。魔道具って便利だなー。


 盗賊たちは――上手いこと散り散りに逃げたようだな。しめしめ。


「うあっ!」「うぐっ」「ぐあっ」


 ドサドサと音がしてうめき声が聞こえる。罠はひとつではないのだよ。


 鉄球から逃げた先々に草を結んだ罠や、木と木の間の低い位置に張ったロープを仕掛けておいた。見事に掛かってくれたようで、罠の張りがいがあったよ。


 ありがとう。


 ポチッ


 草の罠に足を取られて倒れた先は落とし穴になっている。引っ掛かった方の足首をそのまま罠の草で縛りあげ、直ぐには逃げられない仕掛けだ。もし罠に引っ掛からなくてもその先に進めば落とし穴に落ちる。


 落とし穴にも魔道具が仕掛けられていて、かかった者のサイズに合わせた檻が現れ捉えられる。


 騎士団の遠征訓練に連れて行ってもらった時の罠を仕掛ける実施訓練が役に立った。

 魔法や魔力を使わずに仕掛けられる魔道具なので俺にでも扱える。


 どうやら三人のうち二人は罠にかかったがもう一人は避けられたようだ。向こうも様子をうかがっているだろうからこちらも物音はあまり立てたくない。


 まだ罠やセンサーは仕掛けてあるので相手の代替の位置はわかる。このまま距離を取って逃げ切るか、この子と犬を避難させてから俺だけ盗賊の元へ向かうか。


 だが一対一とはいえ煙幕を抜けられたら勝てる気はしない。


 とりあえず一度安全なところまで逃げよう。


 ポチッ


 ちなみに今回使った魔道具は軍の物ではなく我が家の物だ。領地に危険なエリアがあるので入手できる。

 とはいえ、きちんと管理されていて勝手に持ち出してはいけないので一応置手紙はしてきた。紛失したと騒ぎになると悪いからね。





 ――修行に行く道中必要なのでお借りします。  

      アルバート――






 

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