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龍鱗と暗黒騎士  作者: シライ トモリ
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夜の森

 久しぶりにナイアドの森に足を踏み入れる。初めての夜の森は暗闇の中から夜行性の魔物の唸り声や鳴き声が響き、魔除けの香を焚いていても恐ろしさは昼間の比ではない。


 月明かりも届かない暗闇の中、夜ってやっぱりゴースト系の魔物とか出るのかな? と、自らフラグを立てながら進む。


 おばけなんてないさ~フフフフンフフンフフ~


 声を出して見つかるのは避けたいので心の中で歌う。怖くなんてないよ?


 前世の俺は子供の頃お化けは暗いところにしか現れないと思っていた。だから夜暗くなってからの塾の帰り道は、自転車のライトが照らす前方は安全だが後方は暗くて危険と思い懐中電灯を後ろ向きに点けて大声で歌を歌いながら帰っていたっけ。


 あの頃より年下だが成長したな、俺。※前世で成人していたことは都合によっては忘れる仕様です。


 ナイアドの森はあの魔物が出現してからのこの二年、一般人の立ち入りが禁止にされている。


 騎士団や魔法師団が定期的に調査に来るが、最近では先週調査をしたばかりなので、今日明日くらいは鉢合わせることはないと決行日を今夜に決めたのだ。


 人が立ち入らなくなって魔物が増えているらしいので慎重に進んでいると、前方に魔物が一匹いるのを見つけた。


 あれは、ウサギに似た魔物でファントムラビットだ。名前のとおりで幻影で惑わせてくる。聴覚が鋭くて遠くに居ても見つかってしまうので要注意。


 もしみつけたら音を立てないようにじっとして立ち去るのを待つのだ。見かけは可愛いのに攻撃的で、足も速い。


 こちらを見ていると思っていたら幻影で、本体は足元に来ていて蹴りを入れられる。なんてこともざらにある。ダメージは大したことないのだがしつこく付きまとってくるのでうっとおしくて嫌われている。


 ペシペシッ


 そんなことを考えていたら見つかってしまったようだ。うっとおしいけど見た目は可愛いうさぎだから剣を向けにくい。下手に切り付けて血の臭いで他の魔物を呼ぶのも面倒だ。よし、このまま進もう。


 記憶が曖昧とはいえ結構な時間探しているがなかなか安全地帯に着けない。そんなに奥まった場所ではないはずだが、まさかこのファントムラビット景色も惑わせられるのか?


 なんとなく蹴りで進行方向を逸らされている気もするし……。


 ここだ!


 蹴りが強いところで逆らって進んだ。そして目が合った。


 ……。


 カラカラカラカラ


 蛇の魔物、サーペントが尻尾を震わせて音を発しながら俺に威嚇している。


 大丈夫、騎士団の訓練で郊外で実際に魔物と戦った時だってある。サーペントは学園で騎士を目指す訓練生や駆け出しの冒険者でも倒せる魔物だ。


 剣を構えて足を踏み出そうとするが何か違和感がある。ちらりと左足を見るとファントムラビットがしがみついていた。


 俺を囮にして真っ先に逃げ出しそうな奴なのに何でここにいるんだ?


 ファントムラビットがしっかりとしがみついていて振りほどけないのでしかたなく魔道具を使うことにした。

 威嚇効果のある魔道具で、相手に向けて猛獣の唸り声や咆哮を発することが出来る。


 グオオオオォォォーーーッ


 腹に響くそれは恐ろしい咆哮にサーペントは驚いて怯み、戦意喪失して逃げて行った。うまくいってくれたのでこれで先へ進める。


 敵が居なくなるとファントムラビットは再び足を蹴り始める。まったくもってうっとおしい。


 その後も何体かの魔物と遭遇しては足にしがみつくファントムラビットのせいで威嚇の魔道具を使う羽目になったが、安全地帯に近づき魔物と遭遇しなくなるとファントムラビットも去って行った。



 とりあえず目的地には着いた。あの魔物は出て来てくれるだろうか?


 まずは、あの日と同じように花畑の真ん中に座る。そして魔石を取り出して今度はこちらから呼びかけてみる。


「居るんだろう? 出て来てくれないか」


 気配に神経を集中させて待っていると一瞬にして森の様子が変わった。騒がしかった魔物の気配が森の中から消え静まり返ると花畑の向こうにあの黒い魔物が現れた。


「来てくれてありがとう。俺の名前はアルバート・カーティス。聞きたいことがあるんだけど言葉は通じている?」


『我はある御方の使いとしてここに来ている。問いは何だ』


 良かった、言葉が通じるだけじゃなく話すことも出来る魔物だった。やはり知性を持っているんだな。このレベルの魔物が仕える存在が何者か気になるところだがそれは後回しだ。


「まずはこの魔石の表面の術式とこの箱に書かれている術式について教えて欲しい。」


『双方は同じ種の術式である』


「この種の術式はどこに行ったら学べるものなんだ?」


『それはお前がこの先に出会う者に教えを乞うがよい』


 王宮魔法師団でさえ解析できないこの術式を知る人物がいるのか。賢者とかそんな存在なのだろうか。


「俺はこの国のドラゴンの生息域の近くにある村に行きたいんだが行き方を知っていたら教えて欲しい」


『始祖の森の中にある村のことか?』


「……森の中にある村なのでそこかもしれない。地図にも載っていなくて場所も村の名前もわからないんだ。」


『ではこれを持って行くがよい。お前の行きたいところへ導くだろう』


 魔物は何かアイテムを渡してくれるようだ。だが前回のように投げつけられても困るので立ち上がり魔物の元に行きそれを受け取った。


『お前は我の試しに応えてきたが、最後にもう一つ試させてもらう』


 え、試って何のことだ?


 だが……、と言うと魔物は白いマントを渡してきた。旅に出るにしては装備が貧弱すぎだと言う事だろうか? 確かにその点は不安だったのでお礼を言ってありがたくいただいておくことにした。


 しかし、惜しい事をした。ゲームで魔物を倒すとアイテムを入手できることがあったが、どこに隠し持っているのか気になっていたのだ。考え事をしていて目の前に居ながらせっかくのチャンスを見逃してしまった。


 とりあえず、いろいろと聞きたいことは聞けた。このあと何か試されることがあって、クリアできれば目的の村への行き方を教えてもらえるんだな。


 始祖の森とか言ってたけど、地図にはそんな名前の森はない。まあ、行けば何かわかるだろう。


 まずはこの後のことに集中するとしよう。




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