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龍鱗と暗黒騎士  作者: シライ トモリ
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王宮騎士団の見学

後半は視点が変わります

 俺は今日もまた王宮にいるのだが今回は王宮魔法師団にではなく、王宮騎士団にお邪魔している。先生にお願いしていた見学の許可がもらえたのだ。


 王宮騎士団第一部隊は精鋭部隊で、騎士団内で剣、槍、弓の長けている騎士を集めた部隊だが、武器だけでなく体術もともに長けている。


 普段は訓練をしながら王宮で待機しているが、国内の各地に配属されている騎士団から特に危険と報告を受けた場所への調査や、ギルドで手に負えない魔物や盗賊の討伐に出向く事もある。


 ちなみに王宮に所属している騎士団が王宮騎士団、国内の各地に配属されている騎士団が王国騎士団だ。


 訓練がひと段落したら騎士団の人にあいさつをしてもいいらしいので今は静かに見学をしている。


 おや、ずいぶん小柄な騎士さんがいるようだ。入団できる年齢は何歳からなんだろう。うらやましい。


 俺が小柄な騎士をじっと見ていることに気が付いた先生が、あそこにいるお方が参加しているから今日見学に来たと言った。


 そういえば前にあのお方がいるからって言ってたよな。どんな人物なんだろう。


 訓練を見てるだけでもすごく勉強になる。俺は楽しくて時間なんて全然気にならなかった。

 そうこうしているうちにお昼の休憩時間になったらしい。先生にいろいろ質問していたら誰かがやって来た。


「王宮騎士団第一部隊の隊長をしているラルフ・アスターだ。騎士団に興味があるなら大歓迎ですよ」


「アルバート・カーティスです。本日は見学の許可をいただきありがとうございます。よろしくお願いします」


 アスター隊長は大柄だけれど見た目と違って気さくな人だと先生が言っていた。


 そのままアスター隊長と先生と食堂に行って昼食を食べながら騎士団の生活や訓練の事を教えてもらった。

 武器や防具の手入れから始まり、その後は夕方まで訓練をするのが主な日程で、時々遠征して森や山の中での訓練もあるらしい。ふむふむ。


 午後の訓練が始まる時にあの小柄な騎士がこちらへやって来たのだが、近くで見ると小柄なんてのもではない。俺と同じくらいの身長なのだ。

 先ほどまでは奥の方でやや小柄な騎士に稽古をつけてもらっていたらしくそこまで小さいとはわからなかったのだ。


「やあ、アルバート。君も一緒に訓練に参加しないか?」


 うそだろ、この騎士エリオットだったのか。防具を被っているから顔は見えないけれどどう見ても子供だし、俺の名前知ってるし、声にも聞き覚えがある。


 ちらりと先生を見ると嬉しそうに微笑んでいる。間違いないな。あのお方とはエリオットのことだったんだ。なるほどね、だからエリオットのいる日を選んでの見学だったわけか。


 俺はお言葉に甘えて訓練に混ぜてもらった。まだ基礎しかできていないのでエリオットに教えてもらう。

 ずっと憧れていたエリオットと手合わせをするのは緊張したけれどそれ以上に新しい事を教えてもらえることが楽しかった。


 また一緒に訓練に参加をする約束をして、隊長さんと騎士団のみなさんにあいさつをして見学は終わりだ。


 見学も訓練もすごく楽しかった。訓練の中には日々の鍛練にも組み込ませそうなものもあったのでとてもいい勉強になった。


 貸してもらった練習用の服から着替えた時に体を拭いたけれど、汗臭くないかちょっと気になる。実はこの後魔法師団にお邪魔するのだ。汗をかいた後に体をすっきりできるようないい魔道具はないだろうか。




______


 ということでやってきました、魔法師団団長室。魔法師団のお菓子はまじで美味い。紅茶も美味しいし、この部屋の空気というか何というかわからないけれど、居心地良くて眠くなってきた。


 今この部屋にはカインさんと俺しかいない。グラード団長はとても忙しい人なので不在だった。時間もだいたいの約束で、不在の時はのんびり待っていてほしいと言われている。


 王宮の中のとても偉い人の職務室に関係者でもない人間が居ても良いのか、という心配は読まれ、大丈夫だから絶対に帰らないでね。と念を押されている。


 どうしても手が空きそうにない時は連絡が来ることになっているのでとりあえず今は待つしかないのだ。


 俺の中でのグラード団長は王族並みに遠い存在で、話をするのもすごく緊張していたのだが、最近はそうでもなくなってきている。


 そしてこの部屋もまだ数回しか来ていないのに馴染んできてる感まである。想像とは違って団長、副団長が気さくでいらっしゃるからかな。


 あとはカインさんの人柄かな。マイナスイオンでも出てるのかも。ほんわかしているけれどグラード団長の補佐ってことはやはりすごい人なんだろうな。


 初めての王宮騎士団の見学と訓練に参加したことで緊張と疲れもあったためか恐れ多いことに団長室で眠ってしまった。


 これはあれだ、疲れているところに癒し系のカインさんから美味しい紅茶とお菓子をもらったことでリラックスしてしまったのだ。きっと。




 ――待ちくたびれて眠ってしまったのかな?

 私は団長から指示されている仕事をすることにした。なるべく本人には知られないように、と言われているのでちょうどいい。


 アルバート君のはめている指輪から彼の魔力の記憶を読み取り記録を取る。この指輪は魔法の発動を封じるものなのだけれど、封じ切れずに発動された場合は記録されるようになっている。


 そして魔法の発動を封じ切れなかった時点で彼は魔法師団に引き取られることになる。これはカーティス公爵にも伝えてある事だ。


 この子は未知数だ。我々の前で嘘をついていないことは解っているけれど子供の考えとは思えない事を言ったりする。知識量も多い。カーティス公爵は、彼は勉強熱心で文字を覚えてから空いた時間は公爵家の書庫にこもって難しい本ばかり読んでいると言っていた。


 この間は魔石に書き込まれた術式に隠し文字があるかもしれないと言い出したが、その考えに思い至ったのは我々でも知らない本の知識からだった。

 研究者に向いているのかもしれない。それだけならばこの子は将来有望な少年と言えるだろう。


 だがまだ幼いうちに魔法の片鱗を見せたことは別だ。完全な発動ではなかったけれどあれは確かに魔法だった。

 きっかけは魔力測定の時に団長の誘導で魔法に触れたことではないかと言われている。


 王宮の中庭で発動させたあれは光魔法だったのだろうか。そしてほんの一瞬だったけれど何かを召喚しかけるなんて事までしている。団長が瞬時の判断で召喚を取り消させなかったらその何かが現れていたのかもしれない。


 アルバート君には確かに7属性の適正がある。それでも本で読んだだけで魔法や召喚の発動はできない。

 魔法も召喚も知識と練習が必要だ。そして一番重要なのは使いたい魔法のイメージだ。


 発動するには詠唱とイメージが重要なので初めはそれぞれの属性の魔法を実際に見てそれをイメージする練習から始める。


 まさかこの子は直接見なくても本で得た情報だけで正確にイメージして発動させることができるとでもいうのだろうか。


 魔法を学んでいない子供がわずかでもさらりと発動させるなんて正直脅威だ。発動する魔法の威力などを知らずに放てば事故だって起こりうるのだ。早いうちにきちんと教えなくてはならない。


 団長は魔力の放出の時にイメージされた魔法はとても鮮明な物だったと言っていた。絵本で見ただけとは思えないほど細部までしっかりイメージされていて実際に見たことがあるのではないかと思うほどだったらしい。


 しかしあのような魔法が発動されたことは近年無く、幼い子供がそのような場所に居合わせることも考えにくい。


 何より父親である公爵も非常に驚いていたという。国の規則どおり公爵家でも魔法を習わせていない事は確認済みだ。


 森に現れた魔物はこの子の何かを感じ取った何者かが操って送り込んだのだろうか。


 あの魔物を操るものの存在がないとは思っていない。


 目的は不明だが何者かに監視されていたことがわかり、公爵家では警備を増やしたようだが団長も協力している。まあ団長の場合は純粋にこの子に興味があるからだと思われるが。


 アルバート君は今日は騎士団の訓練の見学に行き、訓練に参加もしてきたと言っていた。なので疲れていたのだろう。けして仕事の為に私が眠らせたわけではない。こうしてすやすや眠っている姿は年相応に見える。


「戻ったよ。アルバート君は居るかい?」


 ちょうどいいタイミングで団長が戻ってきた。今は眠っていると伝えると寝顔を覗き込んでソワソワしている。勘違いされると困るので、魔法師団長としての品位を損ねるような行動は辞めていただきたい。


 魔法の発動は無く、指輪がきちんと機能していると伝えると団長は安心したように頷き、眠るアルバート君の頭を撫でていた。



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