↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/87

第77話 最下層

オーガの咆哮が通路を震わせた。


三体。

鈍色の巨体が階段前に並んでいる。


『オーガか。三体、拍子抜けだな』


上級討伐隊の隊長格が鼻を鳴らした。

余裕の声だ。

上級にとってオーガは一人で相手できるクラスのモンスター。

三体程度、この人数なら敵ではない。


『散開——』


その時、右のオーガが棍棒を柱に叩きつけた。

同時に左のオーガも反対側の壁を殴る。

石壁が砕け、石つぶてが討伐隊を襲う。


石つぶてを除ける三秒の間に、三体目が敵に迫り、前衛の一人を掴んで後方へ投げ飛ばした。


孤立。


投げられた兵士が立ち上がる前に、先ほど壁を砕いた二体のオーガが粉塵の中から飛び出し、孤立した兵士を三体で囲んだ。


三秒で終わった。


『——連携している!』


オーガが連携する。

普通はあり得ない。

オーガは単体で突撃する知能しかないモンスターだ。

二体が目くらましをし、一体が敵を投げて孤立させ、三体で囲んで仕留める。

それは、指揮系統があって初めて成立する戦術だ。


アニの強化。

力を底上げするだけではない。

統率を生み、個体に連携をさせる。

オーガの腕力に連携が乗るとどうなるのか、討伐隊は初めて思い知らされた。


『油断するな!一体ずつ確実に仕留めろ!散開はするな、固まって当たれ!』


隊長格が指示を修正した。さすがに切り替えが速い。


そこからは地力の勝負だった。

連携を理解した討伐隊が密集陣形で一体ずつ仕留めにかかる。


だがオーガの腕力にアニの統率が乗った連携は重く、三体を倒すまでに上級は十名を失った。


残りは上級十五名。ゼルヴェン。リオン達三人。十九名。


十五階層への階段が、開いた。




十九名が、十五階層に降りていく。


十五階層に降りた瞬間、空気が変わった。


通路から広い空間に出た。

天井が高い。

今までの階層とは規模が違う。


だが、それ以上に異様なのは——壁も床も、一面が植物であることだ。


蔦、根、苔。


這い回る緑が石壁を完全に覆い隠していて、岩肌が一切見えない。

床も同じだ。

踏みしめると足元に枯葉の感触があり、よく見れば地面全体が根と蔦に覆われている。

天井からは光苔に混じって蔓が垂れ下がり、薄暗い光の中で緩やかに揺れている。


洞窟の中に、植物が浸食した異様な空間。


『ここが最深部か?』


隊長格が周囲を見回しながら言った。


『ボスの後だ。最下層かもしれん。慎重に進め』


十九名が空間の中央に向かって歩き始めた。


ゼルヴェンが歩きながら、ふと足を止めた。


しゃがみ込んで、床に手を触れている。

根の網目を指でなぞり、引っ張り、感触を確かめている。


立ち上がって、壁に手を当てた。

蔦を掻き分け、その奥を爪で引っ掻いた。


次に天井を見た。


植物は天井までも浸食しているが、床や壁と違い、天井だけは岩肌が露出している。


薄暗い光苔の明かりの中、討伐隊が進んでいくと、空間の先にぽっかりと開口部が現れた。

植物に覆われた壁面に、四角い穴。

そこだけ切り取られたように煌々と光が灯っている。


ゼルヴェンの目が開口部に固定された。


瞬間。


「落とせ」

「はいはい」


床が消えた。

いや、消えたというよりも、ほどけた。


植物だった。


岩を浸食したのではない。

最初から全部、植物だ。


床も、壁も、蔦と根が網のように編まれて形を作っていた。


シルヴァさんが力を抜いた瞬間、その網目が開き、全てが落ちた。


壁面を覆っていた蔦も同時に剥がれ落ちる。

植物に覆われた洞窟に見えていた空間の正体が露わになる。

ここは洞窟ではない。

シルヴァさんの森の上に、植物で作られた偽の階層だ。


十九名の足元から床が消え、その下に広がる深い深い緑——十六階層のシルヴァさんの森が、口を開けて待っていた。


ここが正真正銘の最下層だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
床全体が落とし穴! その発想は無かった!! 力抜いたらだらんと根っこが垂れてしまうのも可愛くて良きかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。